日本の古代の力役制度。地方の役民を強制的に中央に差発し,対価と食料をあたえて造寺や平城京,難波京,平安京など朝廷の土木工事に従事させた。飛鳥浄御原令(689施行)では,中央の土木工事に徴発される力役は無償であった。しかし,大宝令(701制定)で新しく中央の力役として規定された年10日間の歳役(さいえき)は,実際にはすべて代納品である庸(よう)布2丈6尺でおさめることにし,必要な力役は庸の一部を財源として強制的に差発した。これが雇役で,同じ雇傭であっても強制を伴わない和雇(わこ)と区別されている。
造営官司である木工寮などが申請し,農閑期は1回に50日,農繁期は30日まで使役できた。役民は1日につき対価として布2尺6寸程度と食料を支給されたが,往復の食料や道具は自弁であった。役民が逃亡すると,早速に地方から代りが徴発された。強制的な力役である点では,大宝令に規定された無償の歳役と同じである。
執筆者:西山 良平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令制下で,中央での造宮や造寺のため人夫に功直(こうちょく)と食料を与えて使役すること。国郡司を通して強制的に徴発する。令制は10日間の歳役を規定しているが,実際はすべて庸で納め,それを功直と食料にあてる雇役制が大宝令で開始され,平城京・平安京などは雇役で造営された。都に近い畿内の負担が重いが,大造営の際は畿外諸国も番を作って雇役にあたった。功直は銭貨で支給するのが一般的で,律令国家の銭貨発行の必要性も雇役制の採用にあった。他に強制でなく状況に応じて賃金を定める和雇(わこ)の方式も,官司の労働力調達手段として律令制下に広く行われ,正倉院文書からそのようすが知られる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…身体障害者(残疾)や父母の喪中の人に対して徭役を免除するという律令の規定も,実役を免除することに主眼があったと考えられる。なお徭役という言葉は,いわゆる徭役労働一般の意味でも用いられており,古代では,歳役や雑徭のほかに,地方の里から交替に2人ずつ中央に徴発されて雑役に従事する仕丁や,功食は支給されるが官によって強制的に雇傭される雇役(こえき)などがあり,兵士も実際には徭役の一種と観念されていた。広義の徭役労働は,古代だけでなく中世・近世にも存在していたが,古代では賦役(広義の税)のなかで,徭役労働の占める比重が高かったと考えられる。…
※「雇役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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