難治性下痢症(読み)なんちせいげりしょう(英語表記)Intractable diarrhea

六訂版 家庭医学大全科 「難治性下痢症」の解説

難治性下痢症
なんちせいげりしょう
Intractable diarrhea
(子どもの病気)

どんな病気か

 感染などの原因がないにもかかわらず、2~3週間以上長引く下痢を難治性下痢症と呼びます。

原因は何か

 主な原因として、腸管において①炭水化物蛋白質そして脂肪などの栄養素消化ができない、②栄養素の吸収ができない、③水分(水、電解質)の吸収ができない、あるいは水分の分泌が著しく亢進している、④腸蠕動(ちょうぜんどう)が著しく亢進している、などがあります。

 ①に該当するのは、先天的に膵臓(すいぞう)から分泌される消化酵素の一部、またはすべてのはたらきが悪い場合で、たとえば先天性蛋白分解酵素欠損症(たんぱくぶんかいこうそけっそんしょう)があります。

 ②は、腸の粘膜が異常の場合で、食物過敏性腸症などがあります。

 ③は、先天性微絨毛萎縮症(びじゅうもういしゅくしょう)、先天性クロール下痢症、VIPホルモン産生腫瘍、ある種の大腸菌感染性腸炎コレラなどがあります。

 ④は、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)過敏性腸症候群などがあります。

症状の現れ方

 消化酵素の先天的な欠損症や、先天性微絨毛萎縮症では、生後数日以内に下痢が現れます。とくに後者では、尿と区別がつかないほどの水様性の下痢になります。食物過敏性腸症では、アレルギー反応の原因となるタマゴやミルクなどの食物を摂取すると下痢が現れます。また、湿疹喘鳴(ぜんめい)(呼吸時に出るゼーゼー、ヒューヒューなどの音)が現れる場合もあります。

 難治性下痢症の最も重要な症状は、体重増加不良、栄養障害、成長障害などです。吸収障害が続くと低栄養になり、免疫力が低下して重い感染症が起ったり、ビタミン・微量元素などの欠乏による貧血や皮膚炎などの症状が出現します。

検査と診断

 尿のような水様性の下痢ではないか、非常にゆるい下痢便で粘液血液が混じっていないか、口から一切飲食物を与えることを中止しても水様便が多量に出る分泌性下痢を示していないかなど、便の性状を確認します。

 食物過敏性腸症が疑われる場合は、原因食物の検索が重要で、まず疑いのある食品を中止して、下痢が改善するかどうかを確認します。下痢が改善すれば原因食品(抗原)として強く疑い、さらなる検索を進めます。

 確定診断は、小腸生検で粘膜を組織学的に調べ、絨毛(じゅうもう)の萎縮や陰窩(いんか)の過形成、およびリンパ球浸潤(しんじゅん)を確認して行います。これは、体重増加不良を伴う場合は必須の検査です。先天性微絨毛萎縮症も小腸生検で診断します。

 脂肪の消化・吸収不良は、便のなかの脂肪量が多いと強く疑われ、さらなる検査を進めていきます。糖質が吸収できない場合は、便が酸性化することを確認します(クリニテスト)。脂肪やさまざまな糖類を口から与えて(負荷試験)消化・吸収能を調べます。

治療の方法

 根本的な治療は病気により異なりますが、栄養状態が悪い子どもが多く、脱水症の治療を行ったあと、栄養療法を行います。栄養療法としては、あらかじめ消化された状態の蛋白質やアミノ酸で構成されている栄養剤を用います。ただし、いろいろな理由で腸から栄養が与えられない状態の場合は、静脈から全栄養を与えます。

病気に気づいたらどうする

 とくに慢性の下痢が続く場合は、便の性状や量、下痢が発症した時期や食べた食物との関係(種類や量など)が重要な手がかりになります。それらを記録に残しておくことが大切です。

 また、母子手帳などを活用し、子どもの体重を同年齢の標準体重と比較し、平均を下回っている場合は、小児科医に相談してください。

大塚 宜一

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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