まぶた(眼瞼)にできる炎症を伴った肉芽。まぶたの中にはまぶたの支持組織である瞼板があり,この瞼板の中にたくさんの瞼板腺(マイボーム腺)がある。これは角膜表面を潤す脂質を瞼縁開口部から分泌している。ところが開口部に目やにがついて分泌がおさえられると,瞼板内に未分泌の脂質がたまり,さらに軽度の炎症を伴いつつ肉芽をつくる。これが霰粒腫である。臨床的には,まぶたの皮下に限局した円形の腫瘤として触れるし,大きくなると,外見上も皮下の腫瘤として認められる。まぶたを反転すると,結膜側にも小腫瘤として突出する。自覚症状としては,腫瘤のでき初めは,瞼板組織が引き延ばされるために軽い痛みを伴うが,大きくなると逆に痛みは乏しい。予防には,瞼板腺の開口部を清潔に保つことが肝要である。できてしまった霰粒腫に対しては,抗生剤の点眼,温罨法(おんあんぽう)がある程度有効であるが,根本的には切開し摘出する。高齢者の場合には,悪性腫瘍が隠れていることがあるので注意を要する。
執筆者:佐藤 孜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
目の皮脂腺(せん)の一種である瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)の慢性肉芽腫性炎症をいい、眼瞼(まぶた)にできるぐりぐりしたものである。目を閉じたとき、眼瞼に球状の硬結(しこり)として触れるが、疼痛(とうつう)や発赤はないことが多い。ときには炎症を伴い、麦粒腫(ものもらい)に似て結膜面や皮下に破れることもある。放置しても長い間そのまま経過することもあるが、多くは増大する。原因は瞼板腺梗塞(こうそく)といわれるが、不明の点も多い。治療は手術的に腫瘤(しゅりゅう)を摘出するか、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの局所注射が行われる。手術は結膜側から行うので、眼瞼に傷ができることはほとんどない。なお、老人で再発を繰り返すときは悪性腫瘍(しゅよう)化に注意する。
[大島 崇]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…おもに関東地方で使われる言葉で,地方により,メモライ,メコジキ,メボ,メバチコなど,さまざまに呼ばれる。狭義には,麦粒腫hordeolum,とくに外麦粒腫をさすと思われるが,広義には,内麦粒腫や霰粒腫(さんりゆうしゆ)も含まれる。外麦粒腫は瞼縁の皮脂腺あるいはまつ毛の毛囊部にできる化膿性の炎症であり,内麦粒腫は瞼板腺(マイボーム腺)に起こる化膿性の炎症で,いずれの麦粒腫も限局性の腫張と疼痛を伴う。…
※「霰粒腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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