(読み)マナブタ(その他表記)eyelid

翻訳|eyelid

デジタル大辞泉 「瞼」の意味・読み・例文・類語

ま‐な‐ぶた【×瞼】

《「ふた」の意》まぶた。
「波羅門の作れる小田からす―腫れて幡桙はたほこに居り」〈・三八五六〉

ま‐ぶた【×瞼/目蓋】

《目のふたの意》眼球をおおって開いたり閉じたりする皮膚眼瞼がんけん。まなぶた。まぶち。「―が重くなる」
[類語]眼瞼

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精選版 日本国語大辞典 「瞼」の意味・読み・例文・類語

ま‐な‐ぶた【瞼】

  1. 〘 名詞 〙 ( 目(ま)の蓋(ふた)の意 ) まぶた。
    1. [初出の実例]「婆羅門の作れる小田を喫(は)む烏(からす)(まなぶた)腫れて幡幢(はたほこ)に居り」(出典:万葉集(8C後)一六・三八五六)

ま‐ぶた【瞼・目蓋】

  1. 〘 名詞 〙 ( 目の蓋(ふた)の意 ) 眼球の前をおおう皮膚。まなぶた。眼瞼(がんけん)
    1. [初出の実例]「哀れみ貴とく誦め眼蓋(マブタ)を開ひて」(出典:私聚百因縁集(1257)八)

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改訂新版 世界大百科事典 「瞼」の意味・わかりやすい解説

瞼 (まぶた)
eyelid

眼瞼(がんけん)ともいう。眼球の角膜を保護する一種のひだで,サメ類などの一部の魚類のほかは,両生類以上の脊椎動物に発達する。サメでは下のまぶたが可動性でこれで目を閉ざすが,カエルなどの両生類もこれに似ている。爬虫類では,多くは上と下のまぶたのどちらも可動性であるが,目を閉ざすのは普通下のまぶたである。爬虫類,鳥類,および哺乳類では,第3のまぶたである瞬膜が発達する。瞬膜は内側上方から外側下方へ動いて角膜を清掃し,湿りけを与える働きをする。カメレオンでは瞬膜がなく,上と下のまぶたが瞳孔の前にあたる部分にだけ小孔を残して結合するが,砂漠に生息するトカゲ類のなかには,まぶたが完全に閉じ,下まぶたの中央に透明な窓ができているものがある。ヘビ類では透明な瞬膜が上まぶたの痕跡と結合し,外面を透明な1枚のうろこが覆う。このうろこは他の部分のうろことつながっていて,脱皮により更新される。鳥類のまぶたも普通は下のものが上がって目を閉ざすが,フクロウなどは上下のまぶたが自由に動く。瞬膜はよく発達していて,ウのような水鳥は潜水するとき,タカ類は急降下するときなどに,透明な瞬膜を閉ざして目を保護する。哺乳類のまぶたは上下とも可動性であるが,鳥類や爬虫類と反対に,上のまぶたが下がって目を閉ざす。瞬膜はヒトでは痕跡しかないが,多くのものではよく発達している。なかにはウサギ類のように,瞬膜に透明な軟骨の板が入っていて,目の外傷を防ぐのに役だつものがあり,ネコ類もこれに似ている。モグラ,ヒミズ,メクラネズミなどでは目は半透明な皮膚で覆われ,まぶたはまったくない。
執筆者:

眼球の前にある可動性をもつ上下2枚の皮膚のひだ。異物や乾燥から眼球を保護し,角膜および結膜に涙を主体とする液体をつくり,表情をつくるなどの働きをしている。上下のまぶたの間の裂け目を眼瞼裂といい,その両端で上下の両まぶたが相会するところを内眼角および外眼角という。まぶたの外側は薄く柔らかい皮膚で覆われ,内側は粘膜である結膜におおわれる。皮膚と結膜の移行部は瞼縁と呼ばれ,ここには睫毛(しようもう)(まつげ)があり,皮脂腺であるゼイス腺や,アポクリン腺であるモール腺が存在する。まぶたの前面には,眼裂に平行して走る溝,眼瞼溝があることがある。このようなまぶたが二重(ふたえ)まぶたで,溝のないものが一重(ひとえ)まぶたである。また,日本人など東洋人では,内眼角部で皮膚が上眼瞼縁にかぶさって,ひだをつくる。これを上内皮贅皮(ぜいひ)または内側眼瞼ヒダ,あるいは蒙古ひだという。まぶたの内部には結膜と接して硬い結合組織からなる瞼板(または眼瞼板という)があり,開・閉瞼をうまく行う支えとなる。瞼板の中には瞼板腺(マイボーム腺ともいう)が多数ならび,これらは油性の分泌液を出す。上まぶたでは,瞼板に眼瞼挙筋および瞼板筋が付着している。このうち眼瞼挙筋は皮膚のほうにも付着する。これら筋肉の働きにより上まぶたは挙上される。下まぶたをおろす筋肉はなく,下まぶたが多少下へさがるのは重力による。皮膚と瞼板の間には眼輪筋があり,これは上下のまぶたにわたり,輪状に存在し,まぶたを閉じる働きをする。筋肉が輪状に取り巻いて,まぶたが上下にうまく閉じるのは,内・外眼角部で皮膚が眼窩(がんか)の骨に固定されているためである。以上の組織のすきまには多くの脂肪組織があり,まぶたの柔らかさを保っている。眼瞼挙筋は動眼神経,瞼板筋は交感神経,そして眼輪筋は顔面神経に支配される。したがって,これら神経が障害されると,眼瞼下垂や閉瞼不能(これを兎眼(とがん)という)を生ずる。瞼板の上縁の結膜に接して副涙腺があり,結膜円蓋部の外側には主涙腺がある。

 まぶた自体は厚いふたとなり,眼球を保護するが,瞼縁に生えた睫毛は上下が組み合わさって,細かいごみよけとなる。涙液や,瞼板腺,皮脂腺の油性液,そして結膜杯細胞からのムチンを角膜の表面に滑らかに塗りのばすのもまぶたのたいせつな働きである。これにより角膜は,初めてきれいな光学面をなす。〈口ほどに物をいう〉目も,形を変えられるのはまぶただけで,社会生活の中でもまぶたの働きはたいせつな意味をもつことがある。

 なおまぶたの病気には,いわゆるものもらいである麦粒腫や霰粒(さんりゆう)腫,眼瞼縁炎などがある。

執筆者:

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普及版 字通 「瞼」の読み・字形・画数・意味


18画

[字音] ケン
[字訓] まぶた

[説文解字]

[字形] 形声
声符は僉(せん)。僉に檢(検)・驗(験)(けん)の声がある。〔説文新附〕四上に「目の上下の瞼なり」とあり、まぶたをいう。

[訓義]
1. まぶた。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕瞼 万奈不太(まなぶた)〔和名抄〕瞼 末奈布太(まなぶた)〔名義抄〕瞼 マナブタ・マナコ 〔立〕瞼 マナコ・マナジリ・ヱム・マナブタ

[下接語]
眼瞼

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「瞼」の意味・わかりやすい解説


まぶた

眼瞼(がんけん)ともいう。眼球の前面を覆い、上眼瞼(ウワマブタ)と下眼瞼(シタマブタ)とに分かれる。前面は皮膚、後面は眼瞼結膜で、その間に瞼を動かす筋肉(上眼瞼挙筋と眼輪筋)と、眼輪筋の後方に瞼板という緻密(ちみつ)な結合組織があって、瞼の形を整えている。瞼板の中には瞼板腺(けんばんせん)(マイボーム腺)とよぶ脂腺がある。麦粒腫(ばくりゅうしゅ)(ものもらい)はこの瞼板腺の炎症である。眼瞼は眼球を保護するとともに、まばたきをすることによって涙(涙液(るいえき))で眼球の表面を清浄にしたり、角膜を湿潤・透明に保つ働きをする。瞼の縁(ふち)からは睫毛(しょうもう)(まつげ)が上下に並列して生えているが、これもやはり、眼球を保護する役目をもっている。上眼瞼の前面にある溝(上眼瞼溝)の深いときは二重眼瞼(にじゅうがんけん)(二重瞼(ふたえまぶた))といい、溝のないときは一重眼瞼(いちじゅうがんけん)(一重瞼(ひとえまぶた))という。日本人には一重眼瞼がやや多いが、これには遺伝も関係する。眼瞼はおもに両生類以上の脊椎(せきつい)動物にみられるが、爬虫(はちゅう)類や鳥類の瞬膜(角膜と瞼の間にある薄膜)も同様の役目をもっている。

[嶋井和世]


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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【顔】より

…すなわち,(1)顔の上部には1対の目があり,その皮膚の窓のことを目の切れ目または眼瞼裂という。眼瞼裂を上下から囲む皮膚のひだはすなわち眼瞼(まぶた)である。(2)鼻は顔面の中央部に突き出している錐体状の突起であるが,広義の鼻という部分はさらに顔面の奥深く繰り広がっているから,外に突き出している部分だけをとくに外鼻という。…

※「瞼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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