(1)律令官制における中務省所属の役所。朝廷の図書・仏像・仏具・経典の保管,国史の修撰,書籍の書写・校正・製本,諸官庁で使用する紙・筆・墨などの文房具の製造と供給を任務とする。頭,助,大允,少允,大属,少属各1人の事務官と,写書手20人,装潢(そうこう)手4人,造紙手4人,造筆手10人,造墨手4人の技術指導者を擁し,紙すきに従事する紙戸50戸が付属する。大同年間(806-810)に別所として紙屋院(かみやいん)と称する紙すき場が置かれたが,律令制の衰退とともに,紙屋院での紙すきのみは,図書允を世襲した栂井(とがのい)家と図書属を世襲した小佐治家が紙漉座を結成して行ったが,それも地方製紙業の発達によりすたれた。
(2)近代官職制度において,1884年8月,宮内省中に置かれた部局。皇室系譜ならびに帝室の記録を編修し,内外の書籍・古器物・書画の保存および美術に関することをつかさどる。その後,幾多の変遷を経て,1949年6月,同じ省中の諸陵寮と併合,宮内庁の一部局である書陵部となり,現在に至っている。
執筆者:今江 広道
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出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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令制(りょうせい)官司の一つで中務(なかつかさ)省の被官。職員(しきいん)令によると、職掌は儒教・仏教の典籍や仏像の保管、国史の撰修(せんしゅう)、典籍の書写・表装、紙・筆・墨の支給など。職員は頭(かみ)1人、助(すけ)1人、大・少允(じょう)各1人、大・少属(さかん)各1人で、頭の官位相当は従(じゅ)五位上。そのほか写書手(しゃしょしゅ)、装潢(そうこう)手、造紙手、造筆手、造墨手などが所属。1884年(明治17)宮内省の管下に復置され、御系譜・帝室いっさいの記録の編輯(へんしゅう)、書籍・古器物の保存、美術に関することなどを管掌した。
[柳雄太郎]
大宝・養老令制の中務(なかつかさ)省被管の官司。儒教や仏教の経典を中心に,宮中の書籍を管理した。国内の記録を集積して国史の編纂にもかかわり,中国から書物のかたちで輸入した情報や,国内のさまざまな情報を国家的に管理する部局でもあった。仏像を保管し宮中での法会(ほうえ)に供したほか,諸国からの進上や寮内の労働力を使って作らせた紙・筆・墨を管理し,これを諸司に分配したり,寮内で書籍を写したりした。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…このような気運のもとで,多くの図書を集め多くの人の閲覧に供するという狭義での図書館も誕生することになった。聖徳太子の夢殿,大宝令の規定に見える中務(なかつかさ)省の図書(ずしよ)寮,東大寺など大寺に付設された経蔵,さらには吉備真備(きびのまきび)や玄昉(げんぼう)など知識人の私的な文庫も広義の図書館と考えることができるが,一般には石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)が奈良の地において,私邸に阿閦(あしゆく)寺を建立し,その境内に芸亭(うんてい)と称する書斎を設け公開したものが日本における公開図書館の発祥とされる(8世紀後半)。また,菅原道真はその書斎文庫の紅梅殿(こうばいどの)を他人にも公開したといわれる。…
※「図書寮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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