淋菌性結膜炎gonorrheal conjunctivitisの俗称。風や空気が原因でこの病気が起こるとされたことから,古くからこの名で呼ばれた。淋菌によって起こる結膜炎で,強い眼瞼および結膜の腫張と,大量の膿様眼脂(目やに)を伴う。病変はしばしば角膜にも及び,角膜穿孔(せんこう)を起こし,あるいは白い癒着白斑を残す。耳前リンパ節は疼痛を伴い腫張する。潜伏期はごく短く,数時間から3日程度で突然に発症する。2~3週で眼脂は消退するが,乳頭肥厚を伴う結膜炎は数週間持続し,この間も淋菌は存在し,感染の危険を有する。母親が感染している新生児では,産道を通る際に感染し出生直後より強い症状を呈する。これを新生児膿漏眼というが,これを予防するために,出産直後に新生児の眼にクレーデ点眼を行う。大人では陰部からの直接感染による。男性の場合,初めに右眼に起こることが多い。治療の第1の目標は他眼への感染予防であり,ペニシリン,アミノグリコシドの点眼を数時間にわたり,数分ごとに精力的に行い,また防御のための眼帯をする。患眼に対しては抗生物質を含んだ大量の温生理食塩水で洗眼を行い,膿様眼脂を洗い流し,その後抗生物質の点眼を行う。幸い,日本ではきわめて少なくなってきている。
→淋病
執筆者:佐藤 孜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…江戸時代には馬島流のほか41派におよぶ眼科専門医が各地で流派を競っていたことは,日本に眼病の多かったことを物語る。眼病のうち最も恐れられていたのは風眼(ふうがん)で,目が急にはれあがり,血膿が流れ出し,結膜が浮腫し,やがて角膜をかくす。これは淋菌性膿漏眼と推定される。…
…このような性器の合併症以外に,かつては淋菌性敗血症,淋菌性心内膜炎,淋菌性関節炎,淋菌性結膜炎(淋菌性膿漏眼。俗に風眼ともいう)などを合併することもあったが,最近はほとんどみられない。後遺症として慢性淋菌性尿道炎罹患後数年して尿道狭窄を起こすことが少なくなく,このため尿が出にくくなることがまれではなかった。…
※「風眼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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