養老川(読み)ようろうがわ

日本歴史地名大系 「養老川」の解説

養老川
ようろうがわ

大多喜おおたき町と天津小湊あまつこみなと町境の清澄きよすみ山東麓を水源とし、市原市域をほぼ東西に分けながら北流、五井ごい岩崎いわさき地区で東京湾に注ぐ。上流部は養老渓谷で、粟又あわまたの滝などがあり、養老渓谷ようろうけいこく奥清澄おくきよすみ県立自然公園のうちに含まれる。中流部で古敷谷こしきや川・平蔵へいぞう川・内田うちだ川などが合流する。流路延長七五キロ、流域面積二四五・九平方キロ。一級河川。中流域に鎌倉時代より金沢称名寺領与宇呂ようろ保が置かれて、当河川名との関連がうかがえる。江戸時代は大川とよばれるほか、上流域では高滝たかたき川、中流域では手綱てづな川とも称し、また村ごとに村名を冠してよぶ例も多い。元文五年(一七四〇)の訴状(斎藤家文書)に用呂川とあるなど用呂川の表記も少なくない。「甲寅紀行」では二井にい川・飯沼いいぬま川とある。養老川の流路を利用した短絡による耕地化は、寛文期(一六六一―七三)と推定される中村なかむら地区をはじめ(御園生家文書)、さらに古い時期に自然に短絡したとみられる永田ながた村地区のほか、皆吉みなよし村・山口やまぐち村などで行われていたと想定される。

貞享四年(一六八七)麻生原あそうばら村や筒森つつもり村・葛藤くずふじ(現大多喜町)など養老川上流の一二村が川船で薪を積下ろしてきたところ、本郷ほんごう村が乗通しは認めないとして訴訟となるが、同川を開削したとする本郷村の主張は退けられ、舟運稼が認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「養老川」の意味・わかりやすい解説

養老川
ようろうがわ

千葉県南部の清澄山(きよすみやま)に源を発し、北流して東京湾に注ぐ川。延長75キロメートル、流域面積246平方キロメートル。大多喜(おおたき)町で養老渓谷をつくり、古敷谷(こしきや)川、平蔵(へいぞう)川、内田川などを集めながら市原(いちはら)市域を流れる。中・下流域は谷が開けて米作が盛んで、千葉県有数の穀倉地帯をなし、下流の市原市域で約9000ヘクタールを潤す農業用水に利用されるほか、京葉工業地帯の形成に伴って立地企業16社の工業用水として供給され、その貯水用に山倉(やまくら)ダムが造成された。1970年(昭和45)の洪水を契機に養老川と古敷谷川の合流点に水量調節を行う多目的ダムの高滝ダムが建設され、河川改修事業も進められた。養老渓谷は県立養老渓谷奥清澄県立自然公園の中心地で、砂質凝灰岩が侵食されてみごとな渓谷美をつくり、梅ヶ瀬渓谷、養老温泉などの観光資源に恵まれるとともに、小湊(こみなと)鉄道が連絡して観光開発が展開した。中・下流域の丘陵や台地上には日本一といわれるほどゴルフ場が集中している。

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改訂新版 世界大百科事典 「養老川」の意味・わかりやすい解説

養老川 (ようろうがわ)

千葉県南部の清澄山に源を発し,北西流して東京湾に注ぐ川。全長70km,流域面積246km2。上流部に夷隅(いすみ)川と河川の争奪をした空谷(からだに),中流に数kmにわたる景勝の養老渓谷と,京葉工業地域に工業用水を供給する山倉ダムがある。また中流には桜の名所鶴舞や,かつて勝浦街道の馬継ぎ地で現在も半島中央部の商業中心をなす牛久(うしく)がある。下流の三角州は米作や果樹栽培に利用されてきたが,近年は臨海部に続く工業地になりつつある。河谷に小湊鉄道が通じる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「養老川」の意味・わかりやすい解説

養老川
ようろうがわ

千葉県房総半島中部を北西流する川。全長約 64km。半島南部にある清澄山(377m)付近に発し,東京湾に注ぐ。上流の養老渓谷は新第三紀の砂質凝灰岩が浸食されてできたもので,絶壁や早瀬はない。一帯は養老渓谷奥清澄県立自然公園に属する。中流部は曲流して河岸段丘が発達し,下流に三角州が形成されて水田地帯をなす。河口付近は京葉工業地域の中心。

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百科事典マイペディア 「養老川」の意味・わかりやすい解説

養老川【ようろうがわ】

千葉県中央部を流れる川。長さ64km。流域面積260km2清澄山付近に発し,房総半島中部を北流,市原市で東京湾に注ぐ。水戸光圀の《甲寅紀行》には二井川・飯沼川などとある。上流域などの薪炭などを搬出する水運が発達していた。上・中流部は渓谷美の養老渓谷で知られ,河谷に小湊鉄道が通じる。下流には三角州が発達し,果樹栽培が盛ん。また河口部は京葉工業地帯の一部で,埋立てにより工業用地が造成されてきた。

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