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中国古代の神話に登場する神。雲車を御して空中を飛び回るこの神は、また下界に雨をもたらす雨師であったとされる。これは馮夷の水神としての性格を示しているが、時代が下るととくに黄河の神、すなわち河伯(かはく)と考えられるようになった。この経緯を語る説話によると、8月上庚(じょうこう)の日に、もともと人間であった馮夷が黄河を渡ろうとして溺死(できし)し、これを見た天帝が彼を黄河の神に任命したのだという。このように水辺に死したのちその地で水神として祀(まつ)られた者は、ほかにも汨羅(べきら)(湖南省北部)の淵(ふち)に身を投じた屈原(くつげん)、湘水(しょうすい)(湖南省)に自ら身を沈めた湘君、銭塘江(せんとうこう)(浙江(せっこう)省西北部)に遺棄された伍子胥(ごししょ)など多くの例があり、これらは水神に関する古い信仰の痕跡(こんせき)と考えられる。
[桐本東太]
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