政治家、小説家、新聞記者。本名柴四朗(しばしろう)。安房(あわ)国(千葉県)生まれ。もと会津藩士の出。弟に陸軍大将柴五郎(1859―1945)がいる。1868年(明治1)官軍により会津落城、一家悲運にあう。1879年渡米、ハーバード大学、ペンシルベニア大学などで経済学を学び、1885年帰朝。同年以降、長編小説『佳人之奇遇(かじんのきぐう)』を刊行、8編まで出し、1897年まで及んだ。規模雄大な政治小説として好評を博し、作者の熱情が行間にあふれている。1888年『大阪毎日新聞』主筆などを経て、1892年の総選挙に当選、以後政界に活躍したが、終始アジアでの国権伸張を念願とした。1898年大隈重信(おおくましげのぶ)・板垣退助(いたがきたいすけ)内閣の農商務次官、1915年(大正4)には外務参政官に就任した。大正11年9月25日、熱海(あたみ)の山荘で病没した。
[岡 保生]
『『日本現代文学全集3 政治小説集』(1965・講談社)』▽『大沼敏男・中丸宣明校注『新日本古典文学大系明治編17 政治小説集2』(2006・岩波書店)』
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明治・大正期の政治家,小説家,ジャーナリスト 衆院議員(憲政本党)。
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政治家,小説家,ジャーナリスト。本名柴四朗。安房国(千葉県)生れ。会津藩の出身で,戊辰戦争の降伏人として東京に護送されたが,釈放後は,各地の私塾,学校に学び,1877年西南戦争に従軍,谷干城の知遇を得た。79年岩崎家の援助をうけて渡米,ハーバード大,ペンシルベニア大で経済学を専攻する。85年の帰国をきっかけに,滞米中に想を得た政治小説《佳人之奇遇》(1885-97)を公刊,弱小民族のナショナリズムをうたいあげた格調高い叙事詩ふうの文章が,青年読者から熱狂的に支持された。その後,谷に随行して外遊,条約改正にたいする反対運動を展開するが,中年以降は,進歩党,憲政党の幹部として,政治活動に専念した。
執筆者:前田 愛
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(有山輝雄)
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1852.12.2~1922.9.25
明治・大正期の政治家・小説家。本名柴(しば)四朗。安房国生れ。少年時に会津藩士として戊辰戦争を経験。アメリカに留学し,ペンシルベニア大学およびパシフィック・ビジネス・カレッヂを卒業。1885年(明治18)帰国。同年持論の「国権伸長」論を基調とするナショナリズム文学「佳人之奇遇」初編を発表して好評を得,以後97年まで8編を刊行。政治家としては92年以降福島県選出の衆議院議員(憲政本党)として活躍。農商務次官・外務省参政官などを務めた。
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…(2)保護貿易政策の論拠としてのアイルランド問題。犬養毅,東海散士らは,イギリスとの自由貿易がかつてアイルランド経済を破壊したごとく,自由貿易政策は日本経済を破滅させると説いた。明治末までの一つの大きな主張であった。…
…東海散士の長編小説。1885‐97年(明治18‐30)刊。…
…古代ギリシアのテーベの勃興に素材を求めたこの作品は一種の歴史小説で,前編ではテーベにおける民主政治の回復,後編ではスパルタを打ち破って国威を発揚するまでの経緯が巧みな話術で語られている。《経国美談》と並び称される政治小説の傑作,東海散士の《佳人之奇遇》(1885‐97)は,スペインの幽蘭(ユーラン),アイルランドの紅蓮(コーレン)の2佳人を配した浪漫的な叙事詩ふうの作品であるが,作者が力をこめて語る帝国主義の犠牲に供された弱小民族の悲史と自由と独立を求めてやまない彼らの熱情は,同時代の青年から熱狂的に支持された。《佳人之奇遇》についであらわれた政治小説は,民権運動の敗北と国会開設への楽天的な期待を背景に,政治的主張はうすめられ,写実的な傾向が目立つようになった。…
…吉田には参謀本部の古川宣誉が同行し,この地域における帝政ロシアの南下政策に関心を寄せている。また近代史研究として,柴四郎(東海散士)の《埃及近世史》(1889)があり,当時としては基本的な英文文献によってまとめられ,西欧列強支配下のエジプト人から歴史的教訓を読み取り,被圧迫民族への共感を示している。 明治後期には,日本の台湾や朝鮮支配の参考資料として,イギリス,フランスの中東イスラム世界支配に関心をもつ一連の著作が現れた。…
※「東海散士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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