高取(読み)たかとり

精選版 日本国語大辞典 「高取」の意味・読み・例文・類語

たか‐とり【高取】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 江戸時代、知行を受けた武士のこと。知行取、地方取ともいう。
  3. 多額の知行や高い給料をとっていること。また、その人。
    1. [初出の実例]「承れば国家老の山良之助といふ者も、遊里通ひの酒と色とにうつつなき愚者との噂でござりまする。高取(タカト)りさへも其通りゆゑ、跡は取るに足らぬもの」(出典:歌舞伎・四十七石忠矢計(十二時忠臣蔵)(1871)二幕)
  4. 近世、関西地方で田租徴収の方法の一つである釐付取(りんづけどり)の異称。
    1. [初出の実例]「上方関東方御取箇之大法 上方は厘付取也。高取ともいふ也」(出典:地方要集録(1741)(古事類苑・政治七九))
  5. たかとりやき(高取焼)」の略。
    1. [初出の実例]「高取 筑前、此地より焼物を出す近き頃江戸に多し火鉢手水鉢なとさまさま外にかはりたるもあり」(出典:俚言集覧(1797頃))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高取」の意味・わかりやすい解説

高取(町)
たかとり

奈良県中央部、高市(たかいち)郡にある町。1891年(明治24)町制施行。1954年(昭和29)船倉(ふなくら)、越智岡(おちおか)の2村と合併。奈良盆地最南端に位置し、竜門(りゅうもん)山地および曽我(そが)川流域を占める。南東の高取山(584メートル)には南北朝期に越智氏が築城した高取城跡(国指定史跡)があり、近世は植村氏高取藩2万5000石の居城であった。中心の土佐は当時の城下町で、武家屋敷が残っている。また近世末から大和(やまと)売薬製造の中心地で、医薬品製造販売業者12、配置売薬業者約100を数える(2006)。高取山の西山腹には『壺坂霊験(つぼさかれいげん)記』で有名な西国(さいごく)三十三所第6番札所の壺阪寺(南法華寺(みなみほっけじ))がある。眼病に霊験があると伝えられる千手観音(せんじゅかんのん)を祀(まつ)り、養護盲老人ホーム慈母園や匂(にお)いの花園がある。インド政府要人から贈られた天竺(てんじく)渡来大観音石像がある。農業は稲作を中心にイチゴ、ナス、ホウレンソウの栽培が盛ん。製薬業のほかに、印刷、繊維、木材加工などが行われている。近畿日本鉄道吉野線と、芦原(あわら)トンネルを経て吉野川渓谷へ通ずる国道169号が走る。市尾墓山(いちおはかやま)古墳、宮塚(みやづか)古墳は国の史跡に指定されている。面積25.79平方キロメートル、人口6729(2020)。

[菊地一郎]

『『高取町史』全2冊(1964・高取町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「高取」の意味・わかりやすい解説

高取[町] (たかとり)

奈良県中西部,高市郡の町。人口7657(2010)。竜門山地の北斜面を占め,南には高取山(584m)などの標高200~600mの山々,北には越智岡丘陵が広がり,西境曾我川が流れる。中心集落の土佐は,近世植村氏(2万5000石)が居城した高取城(跡は史跡)の城下町として発展し,現在も町並みや武家屋敷などにそのおもかげを残す。明治初めから西隣の御所(ごせ)市とともに医薬品の製造が盛んで,配置販売を主とする大和売薬の中心地である。また関連産業として薬袋の印刷業も発達する。近年は靴下などの工場も増えているが,いずれも零細な下請工場が多い。農業は兼業農家がほとんどで,稲作,野菜栽培などが行われる。壺阪峠の下の壺坂には《壺坂霊験記》で名高い,西国三十三所第6番札所壺阪寺がある。近鉄吉野線が通じる。
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百科事典マイペディア 「高取」の意味・わかりやすい解説

高取[町]【たかとり】

奈良県中部,高市郡の町。奈良盆地の最南部にあり,南部は高取山などの山地。中心の土佐は高取城の城下町。明治以後,御所(ごせ)市とともに大和売薬の中心地。近鉄吉野線が通じ,高取山西麓には壺阪(つぼさか)寺がある。25.79km2。7657人(2010)。

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世界大百科事典(旧版)内の高取の言及

【厘取】より

…厘付取ともいう。また釐取,釐付取とも書き,〈りつけどり〉とも読み,高取ということもあった。江戸時代の徴租法の一種で,検地により定まった石高に租率(幾つ何分何厘)を乗じて租額を決定することを厘付,厘割あるいは免付,この徴租法で年貢を徴することを厘取または厘付取,村別に年々の厘付を記した帳簿を厘付帳といった。…

※「高取」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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