福井県北端の市。2004年3月芦原(あわら)町と金津(かなづ)町が合体して成立した。人口2万9989(2010)。
あわら市西部の旧町。旧坂井郡所属。1955年北潟,本荘2村を合体。人口1万4356(2000)。坂井平野と加越台地にまたがり,日本海に臨む。芦原温泉で広く知られるが,沖積地は米作,台地は畑作,酪農を主とする静かな農村である。竹田川の自然堤防を占める本荘は平安末期から中世に栄えた興福寺の荘園河口荘十郷の中心で,ここの春日社は旧十郷にある同荘の総社,式内井ノ口神社と伝え,同荘開拓の基となった十郷用水末端の竹田川落ち口に鎮座する。台地は茶,梨のほか近年は野菜,スイカを産し,北潟湖畔では揚水灌漑によって台地の一部を開田した。温泉は1883年干害時に農夫の掘った井戸に始まり,関西の奥座敷として急発展し,1956年の大火後設備は一新された。40~70℃の食塩泉で,京福電鉄(現,えちぜん鉄道三国芦原線)が通じ,約70の旅館,保養施設があって東尋坊,永平寺などへの観光拠点となり,近くの芦原ゴルフ場は白山と日本海の景観で知られる。舟津に貝塚,番田(ばんでん)に弥生遺跡があり,本荘は魯迅の《藤野先生》のモデルとなった藤野厳九郎の生地。
執筆者:島田 正彦
あわら市中東部の旧町。旧坂井郡所属。人口1万7822(2000)。福井平野,加越台地,加越山地からなり,竹田川が流れる。西接する旧芦原町との境に加越台地の開析谷に形成された北潟湖がある。台地の末端に市街地が発達し,中心集落の金津は北陸街道の宿場町として栄え,近世には福井藩の奉行所が置かれた。竹田川が舟運に利用された中世には周辺の物資の集散地であった。現在も国道8号線,北陸自動車道,JR北陸本線が町を縦断,交通の要地である。竹田川沿いの低地は肥沃な土壌で米作地帯であるが,繊維・機械工業を中心とした工業も発達する。1948年福井地震により大被害を受けた。北部の吉崎には蓮如によって開かれた吉崎御坊(史)があり,寺内町が形成されている。
執筆者:上田 雅子
古来,北陸街道の要衝の地として栄え,また越前・加賀国境の地として両国抗争の戦場ともなった。金津の初見は《太平記》で,中世には興福寺領の河口荘,坪江郷(荘)の中にあった。文明年間(1469-87)の《大乗院寺社雑事記》に〈金津町屋は焼〉〈金津十文字屋〉などと記されているのを見れば,当時は相当に商業が栄えていたことがわかる。江戸時代は福井藩領で,金津奉行,金津定番が置かれ,町には北金津宿,南金津宿それぞれに1人の宿問屋が配され,30匹の役馬を維持し,交通の便を保った。北陸本線の開通とともに1897年金津駅(現,芦原温泉駅)が設けられた。
執筆者:水藤 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
福井県の最北端にある市。2004年(平成16)坂井(さかい)郡芦原町(あわらちょう)、金津町(かなづちょう)が合併して市制施行。北東は石川県加賀市に、北西は日本海に面する。北潟湖(きたがたこ)のある北部は、加越(かえつ)台地で、南西部には平野が広がり、竹田川が東西に流れる。東部は山岳地帯で、加賀市との境に刈安(かりやす)山森林自然公園がある。JR北陸本線、えちぜん鉄道三国芦原線、国道8号、305号、北陸自動車道が通り、金津インターチェンジがある。歴史のある土地で、縄文早期の桑野遺跡、集落跡である舟津貝塚などの遺跡が残る。奈良時代に東大寺領の荘園が置かれ、平安時代末期には興福寺領河口庄(しょう)、鎌倉時代には興福寺領坪江(つぼえの)庄が設けられた。室町時代に本願寺蓮如(れんにょ)により吉崎御坊(よしざきごぼう)が建立された(吉崎御坊跡は国指定史跡)。細呂木は、江戸時代には北国街道の宿駅で、福井藩の金津奉行(ぶぎょう)支配の関所も置かれ、古くから福井県の北の玄関口として栄えた。西部の芦原は、1883年(明治16)灌漑(かんがい)用の井戸を掘っていた際に湧出した湯がきっかけで誕生したといわれる芦原温泉の温泉街を中心に発展し、1948年(昭和23)福井地震では多大な被害をうけたが、その後復興した。開湯110周年の1994年(平成6)には町営(現在は市営)の温泉施設「セントピアあわら」が完成した。農業では米作を中心に、メロン、スイカなどが生産されるほか、ナシの特産地である。工業も盛ん。北部は越前加賀海岸国定公園に含まれる。また、北潟湖畔の花菖蒲(しょうぶ)園では毎年6月に花菖蒲まつりが催される。ほかに総合文化施設「金津創作の森」などがある。面積116.98平方キロメートル、人口2万7524(2020)。
[編集部]
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