高台寺蒔絵(読み)こうだいじまきえ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

高台寺蒔絵
こうだいじまきえ

桃山時代に流行した代表的な蒔絵の様式名称。平蒔絵,針描き,絵梨地 (えなしじ) などの比較的簡便な技法を用いてすぐれた装飾効果をあげる。京都市東山区高台寺の豊臣秀吉夫妻を祀る霊屋 (たまや) と,そこにある夫妻愛用の 30点ほどの調度類がすべてこの手法の蒔絵で装飾されていることからこの名がある。

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百科事典マイペディアの解説

高台寺蒔絵【こうだいじまきえ】

桃山時代に流行した蒔絵の様式。高台寺の霊屋内部の蒔絵と同寺蔵の蒔絵調度類にちなんで名づけられた。意匠は和風。技法は簡単であるが,色彩に変化をもたせるために,秋草に菊桐文を配したり,文様中に梨地(なしじ)を用いたりするほか,箱の各面を対角線で区切って塗りや文様を変えた片身替法を使ったりしている。室町蒔絵が複雑で装飾過剰となって行き詰まっていたので,漆工史上画期的な意義をもつ。
→関連項目漆器

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大辞林 第三版の解説

こうだいじまきえ【高台寺蒔絵】

高台寺にある秀吉と正室高台院が愛用したという調度品に施された蒔絵、およびその様式の蒔絵の呼称。秋草文様に桐菊紋などを施す。桃山時代の代表的漆芸。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高台寺蒔絵
こうだいじまきえ

桃山時代を代表する蒔絵様式の一つ。豊臣(とよとみ)秀吉と夫人高台院とを祀(まつ)る京都・高台寺の霊屋(たまや)内を装飾した蒔絵と、同寺所蔵の秀吉・高台院夫妻遺愛の蒔絵調度類(重要文化財。倚子(いし)、棚、歌書箪笥(たんす)、手文庫、枕(まくら)、刀掛、手拭(てぬぐい)掛、懸盤(かけばん)、椀(わん)、飲器、薬味壺(つぼ)、提子(ひさげ)、湯桶(ゆとう)、天目台、提灯(ちょうちん)など)に加飾された蒔絵が独特な意匠・技法からなっているところから、この名称が生じた。また、それから派生して、同系統の表現による蒔絵の品を、後世の作品であっても高台寺蒔絵とよぶ場合がある。意匠の題材の多くは秋草で、ところどころに菊花や桐(きり)の紋章を配置する。構図は対角的に区分され、それが段階的、電光形に仕切られたりする。また一方を梨地(なしじ)(梨の肌のように金や銀の粉末をまだらに蒔(ま)いた地)、他方を黒漆地としたり、同じ文様を梨地と沃懸地(いかけじ)(密に金・銀の粉末を蒔き詰めた地)を交互に対照的に配して、蒔絵で明確な色彩的変化を表しているが、これを絵梨地とよんでいる。特色ある技法としては、平(ひら)蒔絵(金・銀の粉末を蒔いたら磨く法と、磨かずに蒔き放しの2法がある)、葉脈や花弁などの細部には針書(はりが)き(生乾きの状態に細い針金で線書きすること)がみられ、金・銀粉のほかに焼金(やききん)(純金)や青金(あおきん)(金と銀との合金)を使用している。技法的には簡便法を行ったとみられがちであるが、むしろ、失敗の許されない1回きりの熟練が必要とされた。豪放さを表しながら、内に細密な計算を必要としている蒔絵である。[郷家忠臣]

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世界大百科事典内の高台寺蒔絵の言及

【高台寺】より

…境内に文人大名の木下長嘯子,儒者で名書家の誉れ高かった竜草廬,歌人の澄月らの墓がある。【藤井 学】
[高台寺蒔絵]
 霊屋の須弥壇(しゆみだん)と厨子(ずし)は豪華な蒔絵が施され,また当寺には同様な作風の蒔絵の調度類がある。いずれも桃山時代漆工芸を代表するが,これにちなんで当寺の蒔絵作品ばかりでなく,同様式のものが〈高台寺蒔絵〉と呼ばれる。…

【蒔絵】より

…レリーフ状に盛り上げる方法には漆上げ,銹(さび)上げ,粉上げなどがある。絵梨地とは梨地の効果を地でなく文様の部分に応用したもので,高台寺蒔絵などに多用されている。単独ではあまり用いず,平蒔絵との併用が多い。…

※「高台寺蒔絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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