霊屋(読み)タマヤ

デジタル大辞泉 「霊屋」の意味・読み・例文・類語

たま‐や【霊屋】

死者霊魂を祭ってある堂。
葬送の前に一時遺骸を安置する所。
墓の上にのせる小さい屋形上屋うわや雨覆あまおおい。野屋のや
[類語]霊廟廟堂宗廟聖廟

れい‐おく〔‐ヲク〕【霊屋】

死者の霊を祭ってある建物霊廟れいびょう

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精選版 日本国語大辞典 「霊屋」の意味・読み・例文・類語

たま‐や【霊屋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 葬送の前に、しばらく遺骸をおさめておく所。霊殿(たまどの)
    1. [初出の実例]「作玉屋、奉喪皇后宮」(出典:左経紀‐万寿二年(1025)四月一四日)
    2. 「鳥辺野の南の方に二丁ばかり去りて、たまやといふものを造りて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鳥辺野)
  3. 霊魂をまつってある建物。霊廟(れいびょう)。霊殿。おたまや。みたまや。
    1. [初出の実例]「旅籃(あんだ)玉屋の門に着にけり〈一礼〉 金剛情の土となる身は〈均朋〉」(出典:俳諧・大坂八百韻(1680)下)
  4. 墓の上にのせ置く屋形。うわや。

れい‐おく‥ヲク【霊屋】

  1. 〘 名詞 〙 みたまをまつっておく建物。みたまや。おたまや。霊廟。
    1. [初出の実例]「清水の舞台より高く、日光の霊屋より美なり」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「霊屋」の意味・わかりやすい解説

霊屋 (たまや)

葬送後の遺体を安置するために造られた建物のこと。とくに,11世紀から12世紀ころに見られる言葉である。玉屋,玉殿,御魂殿などとも書く。四壁を閉じて人を中に入れなかった。《栄華物語》巻七の中宮定子の葬送場面には〈とりべのゝ南の方に二丁ばかりさりて,霊屋(たまや)といふものを造りて,築土(ついひじ)などつきて,こゝにおはしまさせんとせさせ給ふ〉とある。多くは檜皮葺き(ひわだぶき)の屋であった。霊屋は《日本書紀》に殯宮(もがりのみや)とか殯殿とか喪屋もや)と書かれているものと,基本的には同じものである。この中で遊部(あそびべ)が死者に付着する凶癘魂(きようれいこん)を鎮める儀礼をした。このあと遺体は喪屋とともに放棄されるか,墳墓に埋葬されなおすかした。この遊部による儀式が忘れられてからは,遺体を安置する施設だけとなった。11世紀になると御魂殿の中で火葬が行われ,そのまま屋を閉じる風も発生した。拾骨された一条天皇の場合は,三昧堂のような1間四方の小堂が造られた。浄土教が浸透すると,霊屋の伝統を受けて中尊寺の金色堂のごとく,埋葬した上に阿弥陀如来本尊とする堂を建立するようになった。これが,現在なお民俗として残る,埋葬地の上にスヤヒヤスズメドウなどといわれる小さな小屋型の堂を置く風を生み出したのである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霊屋」の意味・わかりやすい解説

霊屋
たまや

人の死後、埋葬するまでの間、近親者が小屋に忌み籠(ごも)ることが古代にあった。その詳細は明らかでないが、死者とともに隔離生活を送り、死を悲しむと同時に死の穢(けがれ)の拡散を防いだのであろう。その小屋を霊屋、喪屋(もや)、殯宮(もがりのみや)などといった。貴族、豪族の場合は、古墳を築造する期間を過ごした場所とも推定されるが、その期間はかならずしも一致しない。喪屋籠りの習俗は早くに消滅し、現在では通夜(つや)の諸行事が、その変化形式ではないかと推定されている。同様に現在も霊屋とよばれる墓上施設があり、喪屋の形式化したものと考えられている。現行習俗の霊屋は、埋葬した上に置く小屋形のもので、野位牌(のいはい)、灯明(とうみょう)、水、線香などを収める。簡単な屋根だけのものもあり、四角や六角のものもある。葬列で棺にかぶせたサヤ(龕(がん))をそのまま置くものもある。四十九日(しじゅうくにち)まで残したり、朽ちるまで放置したりする。モヤ、タマヤ、スヤ、サヤ、ヒヤ、ヤギョウなどとよばれて広く分布するが、概して西日本に多い。以上とは別に、寺院で檀家(だんか)の位牌を預かって供養する廟所(びょうしょ)を霊屋という。多くは永代(えいたい)供養を依頼するものであるから、関連があるとしても希薄である。

[井之口章次]

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百科事典マイペディア 「霊屋」の意味・わかりやすい解説

霊屋【たまや】

魂屋とも書く。平安時代,葬送後の遺体を安置する所をいう。現在では九州にみられる埋葬地の上に据える家形のものをさす。簡素なものから瓦ぶきのものまでさまざまだが,同種のものは東海地方や西南日本でも見られ,すや,火屋,野屋と呼ぶ。死者の住居とするためか,あるいは喪屋の遺風とみられる。
→関連項目葬制

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「霊屋」の意味・わかりやすい解説

霊屋
たまや

平安時代以降,葬送の前,遺骸をしばらく安置しておいたところ。古代には殯宮 (あらきのみや) といった。江戸時代には将軍の霊廟を特に御霊屋 (おたまや) と称し,また今日では,地方によって墓の上に置く屋形を霊屋,火屋 (ひや) ,須屋 (すや) ,野屋 (のや) などと称している。

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普及版 字通 「霊屋」の読み・字形・画数・意味

【霊屋】れいおく

字通「霊」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の霊屋の言及

【廟】より

…家康の神号が東照大権現であることから,この形式は権現造と称された。権現造のもとは神社建築であったが,霊屋(たまや)には宝形(ほうぎよう)造(屋根面が一つの頂点に集まる屋根形式)や入母屋造のものも多く,こちらは仏堂がもとになっている。近世の霊廟は神社と仏寺の形式を自由に採用し,また両者を折衷して新しい建築様式を確立した。…

※「霊屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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