岐阜県北部,飛驒高地の中央部にある盆地。周囲を見量(みはか)山,源氏岳,松ヶ洞山など標高1000m前後の山々に囲まれ,盆地底には南から宮川,東から江名子川,大八賀(おおはちが)川,西から川上(かおれ)川などが流入する。盆地はそれらの河川による沖積地で,周囲の山間にも入りこんでいる。標高約600mで南から北に低くなり,まわりに比高50~100mの台地・丘陵地がある。東部の台地・丘陵地にはかなり広い平たん地があるが,西部の丘陵地は浸食が進んで平たん地は少ない。盆地底を構成する基岩は飛驒流紋岩あるいは石英斑岩で,丘陵地では基岩の上に火砕流や礫(れき)岩がのっている。さらに最上部には厚さ0.5~2mのローム層がのっている。盆地底をおおう砂礫層は薄く,河川の河床には基岩が露出する。標高が高いため,夏季は比較的冷涼であるが,冬季は寒さがきびしい。
まとまった平地に乏しい飛驒地方では高山盆地は最大の平地であり,飛驒地方の中央部にあるため,古くから要衝の地であった。1586年(天正14)に金森氏が飛驒地方を統一して,盆地東部の城山に築城して城下町を経営してから名実ともに飛驒地方の中心地となった。盆地の中央を北流する宮川の東岸を城下町に,西岸を耕地とし,市街地を碁盤目状に区画し,東部の丘陵地に寺院を配した。盆地を流れる河川沿いに街道を四通させ,さらに峠を越え,峡谷の難所を通して他国とも結び,東西の文化を流入させた。明治以降も飛驒は近代交通から孤立していたが,1934年に高山本線が全通してから産業が盛んになり,市街地は宮川西岸にも広がった。さらに近年道路網が整備されて,飛驒地方の観光基地になり,これまで山林であった西部丘陵地にも学校,官公署,市営の観光施設などが設置され,開発が進んでいる。
執筆者:高橋 百之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岐阜県の北部、飛騨(ひだ)地方の中央部を北流する宮川に沿って開ける盆地。標高約600メートル。夏は涼しく、しのぎやすい。東方には乗鞍(のりくら)岳をはじめ、北アルプスの雄大な山々が遠望される。中心は高山市で、早くから文化が開け、魅力のある伝統文化が形成され、江戸時代の町並みも保存され、また飛騨の工匠の技能は現代にも継承されている。JR高山本線、名古屋と富山を結ぶ国道41号や福井―松本間の国道158号が通じる。
[上島正徳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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