日本大百科全書(ニッポニカ) 「高橋里美」の意味・わかりやすい解説
高橋里美
たかはしさとみ
(1886―1964)
哲学者。山形県東置賜(ひがしおきたま)郡上郷村上新田(現、米沢(よねざわ)市)に生まれる。県立米沢中学校から第一高等学校を経て、東京帝国大学文科大学哲学科卒業(1910)。同大学院在学中に「意識現象の事実と其(その)意味」を書き、学界の注目を集めた。第六高等学校、新潟高等学校の教授を歴任ののち、東北帝国大学理学部助教授(1921)として科学概論を講ずる。2年余のドイツ留学ののち、同大学法文学部教授(1928)、さらに山形高等学校長(1947)、東北大学長(1949)に選出される。その間、『フッセルの現象学』(1931)によって日本に初めて現象学を紹介し、また『全体の立場』(1932)をはじめとする諸著によって、日本古来の存在感情に根ざした独自の哲学体系を築き、西田幾多郎(にしだきたろう)や田辺元(たなべはじめ)らと並び称された。晩年には日本学士院会員(1950)、文化功労者(1958)。死後『高橋里美全集』が刊行された。
[滝浦静雄 2016年9月16日]
『『高橋里美全集』全7巻(1973・福村出版)』