たか【高】
[1] 〘名〙
※地方一様記(1695頃)高と厘とを知物成米金を知事「田方は
高取に五つあらば、高に四を掛れば則物成と知」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉五「
干椎茸は、近来外国へも出し、其高三千万斤余に及べりと云ふ」
※玉塵抄(1563)一六「質を高をやすうにしてとって」
※門(1910)〈
夏目漱石〉四「守之助から持ち出した
資本の高迄話した」
※足利本論語抄(16C)雍也第六「漢の高は四十万騎あったれども百万騎と記ぞ」
(イ) 極限・限界を表わす。
物事のゆきつくところ。とどのつまり。最後。
限度。高のしまい。
※歌舞伎・
心中鬼門角(1710)上「久松様、惚れたが高でござんすほどに」
(ロ) 限度までいってみたところでの意から、物事の限度、限界を示す。
せいぜいのところ。精一杯のところ。
多寡。
※浄瑠璃・男作五雁金(1742)新町捕物「高
(タカ)はじゃれじゃ、
がいがいいふな」
※歌舞伎・櫓太鼓鳴音吉原(1866)六幕「多く喧嘩やおっかぶせ、押借りゆすりが高(タカ)だから」
※浄瑠璃・娥歌かるた(1714頃)五「高をさへのみこめば其上は時のさいかく」
※浄瑠璃・京羽二重娘気質(1764)二「理由(わけ)を知らざ云て聞さう、高は恁(か)うじゃ」
(イ) 形や位置が高いことをいう。古代語では実際の高さを示す意が薄らいで、ほめことばとして用いられる場合もある。「
高城(き)」「
高嶺」「高殿」「高値」「高照らす」「高敷く」「高知る」など。
(ロ) 音声が大きいことをいう。「高笑い」「高話」「高鳴る」「声高」「音高」など。
たか・める【高】
〘他マ下一〙 たか・む 〘他マ下二〙
① 空間的な高さや地位を高くする。
※漢書楊雄伝天暦二年点(948)「丘陵の


たるを崇
(タカム)」
② 音や声を高くする。
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉三「少年は〈略〉声の調子を高(タカ)めたり」
③ ある感情や気持の度合を強くする。
※シェイクスピア(1952)〈吉田健一〉オセロ「若し二人の恋愛が悲劇的な烈しさにまで高められる性質のものであるならば」
④ 評判、うわさなどを高くする。
※自由と規律(1949)〈池田潔〉その生活「母校の名誉を高める」
⑤ 数量や割合、また、物事の度合などを大きくする。
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉三「斯業の発達を勗めんことを嘱望す」
※他人の顔(1964)〈安部公房〉黒いノート「効果を高めるためには」
たかま・る【高】
〘自ラ五(四)〙
① 空間的な高さや地位が高くなる。
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉四「我が位置たかまるに付けて湧き来る企望のさまざま」
※俳諧師(1908)〈高浜虚子〉四五「素直に高(タカ)まった鼻を見る」
② 音、声、響きなどがだんだんと高くなる。次第に大きくなる。
※別天地(1903)〈国木田独歩〉下「斯う思へば今更ら鼓動の昂(タカ)まるのも無理ではあるまい」
③ ある感情や気持の度合・程度が次第に強く、または激しくなる。
※女難(1903)〈国木田独歩〉四「恐ろしい考えが、次第次第に嵩(タカマ)って来て」
④ 評判、うわさなどが次第に強く、また大きくなる。
※風流魔(1898)〈幸田露伴〉四「評判は非常に高まり」
⑤ 数量や割合、また、物事の度合などが大きくなる。
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉IV「物価の上昇と名目賃金の上昇率が高まれば高まるほど」
こう カウ【高】
〘名〙
① 高尚なもの。すぐれたこと。
※江戸繁昌記(1832‐36)五「則荒

を謂て高と為し」
② 高慢な言い分。大言。ほら。
※人情本・春色袖之梅(1837‐41)初「おれがお前(めへ)ではいくらそんな大言(カウ)を云(ふい)てもいいが」
たか・ぶ【高】
〘自バ上二〙 おごりたかぶる。ほこる。たかぶる。
※山田本妙法蓮華経平安初期点(830頃)「我慢として自ら矜
(おこ)り高
(タカヒ)
曲をさへして、心実にあらずして」
たか・む【高】
[1] 〘自マ四〙 たかくかまえる。えらぶってふるまう。
※大唐西域記長寛元年点(1163)四「何ぞ乃ち自ら高(タカミ)敢て敬を致さ不る」
だか【高】
〘語素〙 (名詞または、動詞の連用形に付く)
① ある数・量・金額などの総額を示す。「生産高」「残高」「取れ高」「売上高」など。
② 金額を表わす語に付いて、ある時点の価格と比べてそれだけ高くなっていることを表わす。「十円高」
たかまり【高】
〘名〙 (動詞「たかまる(高)」の連用形の名詞化) たかまること。また、その物事。
※浪曼主義(1950)〈中野好夫〉「近世において浪曼主義は少くとも二つの異常に大きな浪の高まりをもった」
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デジタル大辞泉
「高」の意味・読み・例文・類語
たか【高】
《他の語の下に付いて複合語をつくるときは、一般に「だか」となる》
1 数量・金額などを合計したもの。収穫量や知行の額、また金銭の総額など。「生産高」「石高」「現在高」
「持ち出した資本の―迄話した」〈漱石・門〉
2 基準となる額に比べて高値であること。「五円高の相場」
3 程度の高いこと。また、限度・限界。
㋐物事のゆきつくところ。つまるところ。
「死ぬるを―の死出の山」〈浄・曽根崎〉
㋑せいぜいのところ。→高が
「二、三年は稽古だの何だのと何にもならねえ。十両が―だ」〈洒・通神蔵〉
4 物事の要点や、あらまし。大略。
「―をさへのみこめば、その上は時の才覚」〈浄・娥歌かるた〉
5 名詞・動詞の上に付いて複合語をつくる。
㋐形や位置が高い意を表す。「高殿」「高照らす」
㋑音声が大きい意を表す。「高笑い」「高話」「高鳴る」
㋒りっぱだという意のほめことばとして用いる。「高知る」「高敷く」
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たか【高】
一般には物の総数量を表すことばで,収穫高,生産高,知行高などとも使われるが,日本史の用語としては土地丈量の単位としての貫高,永高,石高などが有名で,江戸時代には〈高〉といえば普通は一定の土地の大きさを米の収穫見積量に換算して表す石高のことを意味していた。鎌倉時代以来の貫高,室町後期以来の永高の名称は,太閤検地以降石高制が施行されるに及んですたれた。中世で租米量を表した〈分米(ぶんまい)〉という語が,近世になると法定収穫量を表すようになったが,この分米のことを高と呼ぶ場合も多くなった。
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高
たか
本来的には、かさ、あるいは数量の意味であるが、それが本来的な意味のまま使用される場合と、江戸時代の石高(こくだか)制のもとで、石高(田畑における米の生産高)の意を含んで、いろいろなことばと合成されて使用される場合とがあった。本来的な意味での高の使用例としては、貫高(かんだか)、永高(えいだか)、石高、小以高(こいだか)(小計の意)などがある。石高の意を含んで使用されている例として、古高(こだか)、村高、高持(たかもち)百姓、無高(むだか)百姓、高請(たかうけ)、高請地、高盛(たかもり)、込高(こみだか)、延高(のべだか)、役高、高掛物(たかがかりもの)、桑高、検見高引(けみだかびき)などがある。
[川鍋定男]
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