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…中期(14世紀半ば)には,鎌倉に建長寺,円覚寺,京都に東福寺,南禅寺が創建され,中国禅寺の風を模倣した伽藍が出現した(禅宗寺院建築)。禅寺特有の伽藍の構成と建築の様式は宋代中国の建築に範をとった技術と意匠からなり,これは禅宗様(唐様)と呼ばれた。禅宗の発展とともに禅宗様は各地に広がり,在来の和様の技術,意匠の改良工夫にも大きい影響を与えた。…
…天竺様は鎌倉初期に東大寺再建のため重源が中国浙江省付近の様式を学んで採用した様式で,現代では大仏様と呼ばれる。唐様という呼称も,チャイニーズ・スタイルそのものとの誤解を避けるため,現代では禅宗様と呼ぶことが多くなった。禅宗様建築の特徴は,(1)軸部の柱高が高く,貫(ぬき)を多用する,(2)組物は詰組といい,柱上のみでなく柱の間にもおく,(3)屋根の傾斜は急で,軒反(のきぞり)が強い,(4)大虹梁(だいこうりよう)を利用して構造柱を少なくし大空間をつくる減柱造,(5)虹梁上に大瓶束(たいへいづか)を用いる小屋組,(6)礎石と柱の間に礎盤(そばん)を入れる,(7)柱の上下端を丸く細める(これを粽(ちまき)という),(8)丈の高い頭貫(かしらぬき)と厚い台輪をめぐらし先端を繰形のある木鼻とする,(9)海老(えび)虹梁という曲線状の虹梁を用いる,(10)肘木(ひじき)は笹繰(ささぐり)をもち先端をまるめる,(11)垂木(たるき)は扇垂木という放射線状の配置にする,(12)内陣に鏡天井を使う,(13)窓や出入口の花頭曲線,(14)桟唐戸(さんからど)という桟で組んだ扉を使う,などである。…
…柱には丸柱と角柱があり,主要な部分には丸柱を用い,向拝(ごはい∥こうはい)や裳階のような従属的部分に角柱を使う。丸柱は,中ほどにギリシア建築のエンタシスに似た胴張りのあるもの(飛鳥時代),上端を丸く細めたもの(奈良時代),上にいくにしたがい細くなるもの(大仏様),上下端を細めたもの(禅宗様)がある。まれには表面に縦溝をつけた胡麻殻(ごまがら)柱のような特殊なものもある。…
…すでに平安末の藤原頼長は学識名高く,兄の法性寺忠通とはまったく趣を異にした筆跡を残しているが,当時舶載の宋版本の字体を思わせる。宋風の書は禅宗の渡来によるところが大きく,日中禅僧の往来は禅宗様と呼ぶ禅僧墨跡の名品を伝えた。そのおもな墨跡の基本には宋の黄庭堅,張即之や元の趙子昂の書風があり,加えて禅僧の個性的な気迫に富んでいる。…
… 伽藍建築は配置のみでなく,構造や細部も南宋禅寺の様式を忠実に模したといわれるが,12世紀の遺構はなく,実態にわからない点が多い。現存遺構は13世紀からのもので唐様(からよう)または禅宗様といわれる。南宋様式を日本人の感覚と技術で再構成した,繊細で技巧的な形でおおよそ統一されている。…
…たとえば禅宗建築では,建物の正面の幅の1.4倍くらいが棟(むね)の高さであるから,全体の形は縦長の長方形となるが,和様の建物では棟高は建物の正面の幅と同じか,それ以下となっている。柱と頭貫(かしらぬき)とで構成される各軸部の割合は,禅宗様(唐様(からよう))では中央の間で正方形あるいは縦長の長方形となるが,和様では正方形とする。禅宗様では左右の間は中央の間の7割ほどの広さしかないから,隅にいくにしたがって,軸部の縦横の差は大きくなるが,和様では左右の間があまり狭くならないから,ほぼ正方形に近く,また長押(なげし)が外に打たれるので,柱の垂直線よりも長押の水平線の方が強調される。…
… これに代わる新しい美術の展開の契機となったのは,禅宗とともに中国からもたらされた宋・元の美術様式である。建築では安楽寺八角三重塔(長野)にみられるような禅宗様(唐様)が宋風の異国調をただよわせ,伝統的な和様建築はこの禅宗様や大仏様(天竺様)をとり入れて,いわゆる折衷様を生みだした。彫刻では慶派,院派,円派が前代末から引き続いて活躍し,各地に多くの像を残している。…
…〈やまとのかたち〉と信じられているものだが,実際には飛鳥・奈良時代に中国の唐から伝えられ,これを学び,平安時代を通じてしだいに日本人の感覚と風土に合うように変容した文化様式を指している。そして〈和様〉という用語は鎌倉時代以降新たに中国から摂取した唐様(禅宗様)や天竺様(大仏様)に対比し,それ以前から日本で広く用いられ,中国とは異なる表現となっていた様式を区別するために使われた言葉である。 建築では鎌倉時代に宋・元の新技術や様式が伝わり禅宗様,大仏様建築が建てられると,和様にも部分的にとり入れられ,鎌倉中期以降純粋の和様はほとんどみられなくなる。…
※「禅宗様」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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