高速度星(読み)コウソクドセイ(その他表記)high-velocity star

デジタル大辞泉 「高速度星」の意味・読み・例文・類語

こうそくど‐せい〔カウソクド‐〕【高速度星】

太陽に対する空間運動の速度が秒速60~70キロメートル以上の星。太陽近傍約300光年以内の恒星多くは空間運動の平均速度が秒速20キロメートル程度なので、これを大きく上回る速度の恒星をさす。その軌道銀河面に対して傾き、離心率が大きい楕円軌道を描いているものが多い。→バーナード星

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高速度星」の意味・わかりやすい解説

高速度星
こうそくどせい
high-velocity star

恒星のうち太陽に対する空間運動速度が秒速約65キロメートル以上の星。太陽周辺の大部分の恒星は、相対空間速度が秒速20キロメートル程度である。生成原因の違いによって、逃走星(runaway star)、ハロー星(halo star)、極高速度星(hypervelocity star)が考えられている。逃走星は、連星系の進化の過程で高速度で飛び出したか、連星を形成していた相手方の星が超新星爆発して放出されたと考えられる星。ハロー星は、銀河円盤外のハローで誕生した星がたまたま太陽近傍の銀河円盤を横切ったもの。極高速度星は、前者二つと違い秒速1000キロメートルと桁違いに大きい速度を示し、銀河中心にあるとされる巨大ブラック・ホールとの衝突で加速されたか、わが銀河系と近傍の矮小銀河との衝突で加速されたか、どちらかの原因による星と考えられている。高速度星の多くはその元素組成が太陽など標準の星と異なり、重元素欠乏を示す。欠乏度の大きな高速度矮星(わいせい)は、HR図上の位置にちなんで準矮星ともよばれる。高い相対速度を反映して、銀河系内の分布も広範囲にわたり、レンズ状の円盤部を越えてハローとよばれる楕円(だえん)体領域に及ぶ。代表的な種族Ⅱの星で、年齢は古く、一般に100億年以上であって、中小質量の矮星、巨星、水平枝星を含む。

[小平桂一・安藤裕康]

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改訂新版 世界大百科事典 「高速度星」の意味・わかりやすい解説

高速度星 (こうそくどせい)
high velocity stars

約300光年以内の太陽近傍の恒星のうち,それらの空間速度の平均(局所静止基準という)に対して,60~70km/s以上の速度をもつ恒星をいう。太陽を含めて,ほとんどの恒星は局所静止基準に対して約30km/sの速度をもち,それらの速度ベクトルは,局所静止基準を原点として対称的な分布を示す。ところが,高速度星の速度ベクトルは著しい非対称分布を示し,それらのベクトルは局所静止基準を原点として,銀河回転方向を避け,銀河回転と逆の方向に集中する。局所静止基準は約250km/sの速度で銀河回転していることから,このような現象は,高速度星が一般星に比べて小さな速度で銀河回転していることを意味する。また恒星が太陽近傍にとどまるためには限界速度があり,その限界速度を超すような速度をもった星々は,銀河系が形成される過程ですでに逃脱してしまったことを示す。高速度星の銀河系内における軌道は,一般星の軌道が銀河中心のまわりの円軌道であるのに反して,銀河中心のまわりの離心率の大きな軌道を描いている。高速度星の物理・化学量も特異性を示すことから,高速度星は原始銀河の収縮過程を知るための重要な手がかりを与えている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高速度星」の意味・わかりやすい解説

高速度星
こうそくどせい
high velocity star

太陽を含め,太陽近傍の大部分の星はほぼ円軌道を描きながら,全体として銀河中心のまわりを回転しているが,この回転速度 (太陽付近で毎秒約 250km) で動く座標系からみて,空間速度が毎秒 60~70km以上の星を高速度星と呼ぶ。これに対し,太陽近傍の大部分の星は,同じ座標系からみて空間速度が毎秒 60km以下で遅いものほど多く,太陽自身は毎秒 20km程度である。高速度星は,銀河中心のまわりに大きな離心率の楕円軌道を描き,銀河中心方向から飛出してくるような運動をしている。その結果,銀河回転方向の速度は,ほぼ円軌道上を動いている太陽近傍の大部分の星より平均的に遅い。つまり,高速度星は実際には,太陽近傍の大部分の星より低速度なのである。高速度星はこのような運動学的な違いだけでなく,そのスペクトル分析から,太陽近傍の大部分の星よりも金属量の含み方が少いことがわかっている。これは,これらの星が比較的年齢の古い種族 IIの星 (→恒星の種族 ) であることを示し,これらの星の運動を調べることは銀河系の形成時の様子の解明に役立つ。

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百科事典マイペディア 「高速度星」の意味・わかりやすい解説

高速度星【こうそくどせい】

太陽の近傍約300光年以内にある恒星のうち,それら恒星の空間速度の平均より秒速60〜70km以上速い速度をもつ星。銀河系内でふつうの星が銀河中心のまわりに円軌道を描いているのに対し,高速度星は離心率の大きい軌道をとっている。
→関連項目視線速度

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世界大百科事典(旧版)内の高速度星の言及

【銀河系】より

…太陽系から見た場合の諸天体の相対速度は,太陽と似た運動をしている種族Iでは小さくて平均20km/sくらいである一方,太陽とかけ離れた運動をしている種族IIでは,大きくなるわけである。高速度星と呼ばれる速度約60km/s以上の星の大部分は,種族IIの星である。それらの銀河系中心のまわりの軌道は,銀河面に対して傾いているとともに離心率も小さくなく,かなり細長い楕円形をしている。…

※「高速度星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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