鯖江藩(読み)さばえはん

藩名・旧国名がわかる事典 「鯖江藩」の解説

さばえはん【鯖江藩】

江戸時代越前(えちぜん)国今立(いまだて)郡鯖江(現、福井県鯖江市)に藩庁をおいた譜代(ふだい)藩。藩校は進徳館。1720年(享保(きょうほう)5)に、越後(えちご)国村上藩主間部詮言(まなべあきとき)が鯖江5万石に移封(いほう)され立藩した。詮言の兄で間部氏の元祖詮房(あきふさ)は、上野(こうずけ)国高崎藩5万石を与えられ、新井白石とともに6代将軍徳川家宣(いえのぶ)、7代将軍徳川家継(いえつぐ)に仕えて老中格に任じられた。しかし、1716年(享保(きょうほう)1)に徳川吉宗(よしむね)が8代将軍になると退けられ、村上藩に転封(てんぽう)(国替(くにがえ))となった。さらに20年に詮房が没し弟の詮言が継ぐと、27戸しかない寒村鯖江への移封を命じられたのである。以後明治維新まで間部氏9代が続いたが、城下町設営に莫大な費用がかかり、財政はいつも苦しかった。7代詮勝(あきかつ)は老中にまでのぼり、大老 井伊直弼(なおすけ)を助け、尊王攘夷派を弾圧した。そのため、井伊暗殺後の1862年(文久(ぶんきゅう)2)に隠居謹慎を命じられ、1万石減封の4万石にされた。71年(明治4)の廃藩置県により、鯖江県敦賀(つるが)県、石川県を経て、81年福井県に編入された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鯖江藩」の意味・わかりやすい解説

鯖江藩
さばえはん

越前(えちぜん)国今立(いまだて)郡鯖江(福井県鯖江市)に本拠を置く5万石の譜代(ふだい)藩。藩主間部(まなべ)氏。藩領域は越前3郡130か村、大部分が今立郡内で105か村、ほかは丹生(にう)郡に14か村と大野郡に11か村あった。

 間部氏の元祖詮房(あきふさ)は、能楽師喜多(きた)六太夫の弟子であったが、徳川綱豊(つなとよ)(のち6代将軍家宣(いえのぶ))にみいだされ、のちその側用人(そばようにん)となり、上野(こうずけ)(群馬県)高崎城主となった。家宣・家継(いえつぐ)2代に近侍し、新井白石(あらいはくせき)とともに「正徳の治(しょうとくのち)」を行ったが、1716年(享保1)側用人を免ぜられて越後(えちご)(新潟県)村上に移封された。20年詮房没して弟詮言(あきとき)が家督を相続したが、領地は越前鯖江へ転封となった。当時の鯖江は、幕府の代官陣屋があったものの家数27戸の寒村にすぎず、城下町として整備されるには8か年を要した。戸口は、1868年(明治1)の記録によると888戸、3611人であった。

 詮言を鯖江の初代とする同藩は、9代、150年間続いた。歴代藩主中でもっとも活躍したのは7代詮勝(あきかつ)であり、1840年(天保11)と58年(安政5)の二度老中の職についている。後の老中在任中では大老井伊直弼(なおすけ)を助けていわゆる「安政(あんせい)の大獄」を指揮したが、そのことで62年(文久2)領地1万石を削られ、隠居謹慎に処せられた。71年(明治4)廃藩、鯖江・敦賀(つるが)・石川各県を経て81年福井県に編入。

[舟澤茂樹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鯖江藩」の意味・わかりやすい解説

鯖江藩
さばえはん

江戸時代,越前国 (福井県) 今立 (いまだち) 郡鯖江地方を領有した譜代小藩。享保5 (1720) 年に間部詮言 (あきとき) が越後 (新潟県) 村上から5万石で入封したが,文久2 (1862) 年に藩主詮勝が老中在職中の失敗により1万石を減封された。江戸城雁間詰。

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デジタル大辞泉プラス 「鯖江藩」の解説

鯖江藩

越前国、鯖江(現:福井県鯖江市)を本拠地とした譜代藩。享保年間に、越後国村上藩主の間部詮言(まなべあきとき)が5万石で移封され立藩、以後幕末まで間部氏が藩主をつとめた。家数27戸の寒村から城下町の整備を開始。7代藩主、詮勝(あきかつ)が造営した庭園「嚮陽渓(きょうようけい)」が有名。

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世界大百科事典(旧版)内の鯖江藩の言及

【越前国】より

…農業では大地主は生まれなかったが,越前海岸から若狭にかけての漁業が技術の先端を示した。そのほか福井藩五箇(ごか)の奉書や鳥の子紙,福井城下の絹織物,府中の打刃物,鯖江藩の漆器と漆搔き,大野藩の面谷(おもだに)銅山,勝山藩のタバコなどが著名。交通は,陸上で北陸街道(北国路)が北進し,近江国境の栃ノ木峠を越えた板取駅から加賀国境の細呂木(ほそろぎ)駅まで15駅置かれたほか,西街道,美濃街道などが通った。…

※「鯖江藩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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