正倉院に伝わる屏風の一つ。「樹下美人図」ともよぶ。天平勝宝(てんぴょうしょうほう)8年(756)の『東大寺献物(けんもつ)帳』に「六扇」と記載されているが、現在は解かれてばらばらになり、その順序はわからない。紙に白土(はくど)を地塗りした上に、墨で樹下に立つ1人の唐風美人を描き、顔など一部に彩色を施す。人物の姿態は六扇ともそれぞれ異なる。もと画面に鳥の羽毛が貼(は)られていたが、いまはほとんど剥落(はくらく)。ただし、わずかに残る羽毛は日本産ヤマドリのものといわれ、さらに一扇の下貼紙に「天平勝宝4年」の日付のあることなどからして、数少ない奈良朝絵画の遺品として貴重である。
[永井信一]
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…すでに前3千年紀のスーサ出土の円筒印章には動物を伴った樹木文様や,樹下に聖獣を配したものがある。聖獣のかわりに女神を配したものは,いわゆる〈樹下美人図〉と呼ばれる文様で,正倉院の《鳥毛立女屛風(とりげりつじよのびようぶ)》は有名である。このモティーフはイランのハオマの豊穣の女神アナーヒターとの結びつきから生じている。…
…華厳経美術
[正倉院の絵画]
正倉院には菩薩像を描いた絹絵彩色幡や,麻布に力強い墨線で闊達に描いた《麻布菩薩像》などがあるが,東大寺大仏開眼会などに用いられたものである。《東大寺献物帳》によれば,正倉院には仏画のほかに各種の山水画や世俗画があったことが知られるが,遺存するもので有名なものに《鳥毛立女屛風(とりげりつじよのびようぶ)》が六扇そろっている。貼り付けられていた羽毛はほとんど剝げ落ちているが,唐朝風婦人の肉色には彩色が施され,柔らかな細線描写の下描きの素描がおおまかに墨描されており,西域画にみられる樹下美人図形式を踏襲している。…
※「鳥毛立女屏風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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