黒石(市)(読み)くろいし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒石(市)」の意味・わかりやすい解説

黒石(市)
くろいし

青森県中央部、津軽(つがる)平野の南東隅に位置する都市。1954年(昭和29)黒石町と山形、浅瀬石(あせいし)、中郷(なかごう)、六郷(ろくごう)の4村が合併して市制施行。津軽(弘前(ひろさき))藩の支藩黒石藩1万石の小城下町として廃藩置県まで続いた。城下町のたたずまいをいまも残し、雪国特有のコミセ(雁木(がんぎ))もみられる。

 浅瀬石川の流域地帯で、黒石米とよばれる良質の米とリンゴの生産で知られる。県の農林総合研究所とりんご試験場があり、りんご試験場は1931年に設立され、栽培、改良、試作など青森リンゴの生産を今日に至らしめた功績は大きい。県内のリンゴ生産者への指導のほか、他県の生産者に対しても資料を提供している。

 奥羽本線敷設の際、住民の反対で町を迂回(うかい)し、町の発展を阻害したが、その後、国鉄黒石線(のち弘南鉄道黒石線(こうなんてつどうくろいしせん)。1998年廃止)、弘南鉄道(弘南線)が開通し、奥羽本線とも連絡した。国道102号、394号が通じ、東北自動車道黒石インターチェンジがある。浅瀬石川流域に温湯(ぬるゆ)、板留(いたどめ)、落合、温川(ぬるかわ)、青荷(あおに)などの温泉があり、黒石温泉郷とよばれている。また十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園の西口にあたり、観光に力を入れている。「大川原の火流し」(舟の帆柱に火をつけて川に流す)は豊作、疫病退散を願う行事で、南北朝時代のころから行われていると伝える。このほか黒石ねぷた祭り、黒石よされの行事がある。面積217.05平方キロメートル、人口3万1946(2020)。

横山 弘]

『鳴海静蔵著『黒石百年史』(1962・黒石市役所)』


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