青森県西部,津軽半島南部から西部に広がる岩木川下流の沖積平野。南北60km,東西20kmにおよぶ。東側は奥羽山脈,北側は津軽山地,南西側は岩木山,白神山地によってかこまれ,白神山地に源を発する岩木川が浅瀬石(あせいし)川,平川,十(と)川などを合わせ,平野中央部を緩やかに北流しており,日本海岸の十三(じゆうさん)湖に注いでいる。
平野の南部は盆地状をなし,積雪の多い日本海側気候であるが,梅雨の影響が少なく,また夏は比較的乾燥し,〈やませ〉の影響も少なく高温となる。このため県内では稲の生育条件に恵まれた地域で,近世までは日本の稲作の北限地であった。傾斜地や自然堤防上ではリンゴ栽培が盛んで,この地域で全国のリンゴ栽培面積の4割近くを占めている。また,この地域には津軽地方の産業・文化の中心である弘前市がある。平野の北部は近世中ごろから開拓された新田地帯で,十三湖沿岸は1948年から国営十三湖干拓事業によって水田化されたものである。
津軽平野は全体に低平で,標高10mの等高線は平野中央部の五所川原市南部を東西に走っている。このため,これまで河川のはんらんが繰り返され,しばしば流路がかわり,自然堤防も発達している。しかし,渇水期には灌漑用水が不足するため,山麓部や砂丘には近世につくられた溜池も多い。日本海に面して南北約28kmに及ぶ七里長浜と呼ばれる砂浜海岸が発達する。その内側には屛風山砂丘があり,4代津軽藩主信政が平野の新田開発のために植林した防風・防砂林で覆われている。
執筆者:横山 弘
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青森県西部に展開する平野。南北約60キロメートル、東西20キロメートル。北西部は日本海に面すが、南東部は奥羽山脈、北東部は津軽半島脊梁(せきりょう)山地、南西部は岩木山を主体とする山地により囲まれている。白神(しらかみ)山地に源を発する岩木川は浅瀬石(あせいし)川を合流した平(ひら)川をあわせて緩やかに平野を北流し十三湖(じゅうさんこ)に注ぐ。弘前市(ひろさきし)を中心とする南部の地域は、夏は偏東風のやませや梅雨の影響が少なく、水田とリンゴ園が広く分布し、リンゴ園は全国の49%を占める。平野の北部は水田単作地帯である。江戸時代の中ごろから開拓された新田地帯で低湿地が多いが、第二次世界大戦後の水利事業により全国屈指の高収田となった。平野全体で県の米の半分を産出する。平野の中心は五所川原市(ごしょがわらし)。
[横山 弘]
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… 比較的広い沖積平野では,山麓部に発達する扇状地と,河口部に発達する三角州とにはさまれた平野中央部において,自然堤防(地)帯とよばれる自然堤防と後背湿地とが顕著に発達する地域がひろがっている。日本では濃尾平野や津軽平野においてその典型的な例を見ることができるほか,石狩平野や関東平野中央部でも自然堤防が良好に発達している。また,扇状地や三角州でも河道に沿う自然堤防状の微高地が認められる。…
※「津軽平野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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