鼻音(読み)びおん(英語表記)nasal

翻訳|nasal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

鼻音
びおん
nasal

肺から呼気対して口ろの調音器官が閉鎖を形成するとき,口蓋帆が下がって呼気がむろを通して流れ出ることによって生じる音。普通は鼻むろのから呼気が出る鼻子音のことをいい,口むろと鼻むろの両方から出る鼻母音は含ない。[m](両唇音),[ɱ](唇歯音),[n](歯音歯茎音),[ɳ](そり舌音),[ɲ](硬口蓋音),[ŋ](軟口蓋音),[N](口蓋垂音)で表示される。日本語はおおむma](間),[ne](根),[ɲiʃi](西),[kuŋi](),[paN](パン)と表すことができる。鼻音は一般に有声で,特に無声のときは[][ŋ゜]のように,[。][゜]をつける。なお鼻音化された母音(鼻母音)は[ã][ĩ]のように口母音を表す記号の上に[~]をつけて表記する。日本語の撥音は環境によって鼻音いし鼻母音で実現する。

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デジタル大辞泉の解説

び‐おん【鼻音】

鼻にかかった声。
音声学で、呼気が鼻腔を通り、鼻腔の共鳴を伴う有声子音。例えば英語では、口腔を両唇で閉鎖する[m]、舌先を歯茎につけて閉鎖する[n]、後舌を軟口蓋につけて閉鎖する[ŋ]の3種がある。→口音

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鼻音
びおん

口蓋帆(こうがいはん)を下げて、肺臓からの呼気の一部を鼻腔(びくう)にも流出させる音を鼻音という。子音では[m,ɱ,n,ɳ,ɲ,ŋ,]などがあるが、日本語に用いられている典型的なものはマ行の[m]、ナ行の[n]、ニャ行の[ɲ]、ガ行鼻濁音の[ŋ]および語末のン[]である。一方、母音では、理論的にすべてのものが鼻母音化できる。フランス語は鼻母音(補助記号[~]で示す)を用いる言語として有名だが、[bvbl]un bon vin blanc(良質の白ワイン)などは、フランス語におけるすべての鼻母音を有する最小有意味文である。一方、日本語ではアンアン[aã]、音韻[oõ]などに鼻母音が現れる。

 一般に鼻音は、鼻腔にも呼気の一部を抜くことによって生ずるため、実用的見地からは、鼻をつまむと音価が変わる点に注目すると特徴をつかみやすい。たとえば、日本語で煙(ケムリ)を「ケブリ」という方言があるが、鼻をつまんで「ケムリ」といえば、「ケブリ」に限りなく近づく。このようにして、[m]と[b]、[n]と[d]、[ŋ]と[ɡ]などは主として鼻音性の有無によって対立するため、ドケ~ノケ(退け)、ビダンシ~ビナンシ(美男子)などのような交替形を生じやすい。

[城生佰太郎]

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精選版 日本国語大辞典の解説

び‐おん【鼻音】

〘名〙
① 鼻にかかった声。
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「普魯西にては貴族めきたる鼻音にて物言ふ」
② 音声学で、呼気が鼻腔を通り、鼻腔の共鳴を伴う有声子音。口腔を両唇で閉鎖するm、舌端と硬口蓋の間で閉鎖するn、舌背と軟口蓋の間で閉鎖するŋなど。〔初学日本文典(1878)〕

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世界大百科事典内の鼻音の言及

【音声学】より


[調音の位置]
 上位器官に下位器官が接近もしくは接触する位置につき表のような音声学的名称が定められている。
[調音の方法]
 上下の器官が接触する場合が閉鎖で,(1)完全に接触するものに閉鎖音,破擦音,鼻音があり,(2)不完全に接触するものに流音がある。これは(a)断続的に繰返し接触する顫(せん)動音(ふるえ音)と(b)1回だけこするように接触する弾音(はじき音)に分かれる。…

【子音】より

…口腔内に閉鎖が作られていれば,息は鼻からのみ出ていく。これが鼻音である。(4)声門において(a)二つの声帯が固く接触すれば声門閉鎖音[ʔ]となり,(b)声帯の接触がゆるければ,肺から流出する空気に声帯が押し上げられて振動し,ここに〈こえ〉が発生して有声音となる。…

※「鼻音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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