精選版 日本国語大辞典 「よ」の意味・読み・例文・類語
よ
〘間投助〙
[一] 感動をこめて聞き手に働きかけ、また念を押すのに用いられる。
① 文中の用語を受ける。
※古事記(712)上・歌謡「吾(あ)はも与(ヨ) 女(め)にしあれば 汝(な)を置(き)て 男(を)は無し 汝を置て 夫(つま)はなし」
② 終止した文・体言止めの文を受ける。
※古事記(712)中・歌謡「我(わ)が着(け)せる 襲(おすひ)の裾に 月立たなむ余(ヨ)」
※万葉(8C後)八・一四六一「昼は咲き夜は恋ひ寝(ぬ)る合歓木(ねぶ)の花君のみ見めや戯奴(わけ)さへに見代(よ)」
※今昔(1120頃か)二五「馬を取て来よと許云懸て」
[二] 体言を受けて、呼び掛けを表わす。
※古事記(712)下・歌謡「大魚(おふを)よし 鮪(しび)突く海人余(ヨ)」
※源氏(1001‐14頃)若紫「少納言よ。直衣着たりつらんは、いづら。宮のおはするかとて」
[語誌](1)上代から現代まで盛んに用いられたが、時代による用法の変化の幅は小さい。(イ) 平安時代末期から係助詞「こそ」の結びに使われる例が出現する。(ロ) 室町時代から変化形「い」が出現する。(ハ) 格助詞「と」についた「とよ」の形は、本来「…と思うよ」「…と言うよ」のような意であったが、次第に「とよ」だけで同様の意味に用いられるようになる。→「とよ」。
(2)②の万葉例、今昔例にみられる「見よ」「来よ」などについては、古典文法ではカ変・サ変・上一段・上二段・下二段の命令形の一部とするが、この「よ」はもともと本項の間投助詞である。奈良時代には「吉野よく見与(みよ) 良き人四来三(よくみ)」〔万葉‐二七〕(上一段の例)「都止米(つとめ)もろもろ 須々売(すすめ)もろもろ」〔仏足石歌〕(下二段の例)と「よ」を添えない形で命令する、本来の形が少なくない。後にも「とくこと言ひやりたるに」〔枕‐二五〕(カ変の例)がある。→「ろ」の補注
(2)②の万葉例、今昔例にみられる「見よ」「来よ」などについては、古典文法ではカ変・サ変・上一段・上二段・下二段の命令形の一部とするが、この「よ」はもともと本項の間投助詞である。奈良時代には「吉野よく見与(みよ) 良き人四来三(よくみ)」〔万葉‐二七〕(上一段の例)「都止米(つとめ)もろもろ 須々売(すすめ)もろもろ」〔仏足石歌〕(下二段の例)と「よ」を添えない形で命令する、本来の形が少なくない。後にも「とくこと言ひやりたるに」〔枕‐二五〕(カ変の例)がある。→「ろ」の補注
よ
〘格助〙 体言または体言に準ずる語を受けて「より」と同様に用いられる上代語。
① 動作・作用の起点を示す。時間的な場合と空間的な場合とがある。
※古事記(712)中・歌謡「狭井河用(ヨ) 雲立ち渡り 畝火山 木の葉さやぎぬ 風吹かむとす」
※万葉(8C後)一九・四一六〇「天地の 遠き始め欲(ヨ) 世の中は 常無きものと 語り継ぎ ながらへ来れ」
② 動作・作用の行なわれる場所・経由地を示す。空間的・抽象的な場合がある。
※古事記(712)中・歌謡「己が命(を)を 盗み死せむと 後(しり)つ戸用(ヨ) い行き違ひ 前つ戸用(ヨ) い行き違ひ 窺はく 知らにと」
※万葉(8C後)一五・三七八三「旅にして妹に恋ふれば霍公鳥(ほととぎす)わが住む里に此(こ)欲(ヨ)鳴き渡る」
③ 動作の手段を示す。
※古事記(712)中・歌謡「浅小竹原(あさじのはら) 腰泥(なづ)む 空は行かず 足用(ヨ)行くな」
④ 比較の基準を示す。
※万葉(8C後)五・八四八「雲に飛ぶ薬はむ用(ヨ)は都見ばいやしき吾(あ)が身また変若(を)ちぬべし」
よ
〘感動〙
① 目上の人の呼び掛けに対して答える男性の返事。
※古今著聞集(1254)八「人のめす御いらへには、男はよと申、女はをと申也」
② 驚いた時に思わず口をついて出ることば。やっ。
※天正本狂言・酢辛皮(室町末‐近世初)「よ。おのれが。とくとく。ゆびさし。とめ」
③ 相手に呼び掛けたり訴えたりする時に発することば。
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四「『私(わちき)をわるく思ってお呉でなひヨ。ヨ姉さん』」
よ
〘副〙 (「え(得)」の変化した語か。一説に「よう」の変化した語とも。後に打消の表現を伴って用いる) …することができない。とても…できない。よう。
※京大本論語抄(16C前)雍也「世の害をばよ免れまいぞ、無為にはえ居まいぞ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報