腕くらべ(読み)ウデクラベ

デジタル大辞泉 「腕くらべ」の意味・読み・例文・類語

うでくらべ【腕くらべ】

永井荷風長編小説。大正5~6年(1916~17)発表新橋の芸妓駒代を主人公に、彼女をめぐるさまざまの男性を通して当時の風俗を描いた、近代花柳小説代表作

うで‐くらべ【腕競べ/腕比べ】

腕力または技量を比べること。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「腕くらべ」の意味・読み・例文・類語

うで‐くらべ【腕比・腕競】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 腕力や腕前を比べ争うこと。
    1. [初出の実例]「互に腕くらべだぞ」(出典:史料編纂所本人天眼目抄(1471‐73)三)
  2. [ 2 ] ( 腕くらべ ) 小説。永井荷風作。大正五~六年(一九一六‐一七)発表。新橋花柳界での新旧両風俗の錯綜を描いた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「腕くらべ」の意味・わかりやすい解説

腕くらべ (うでくらべ)

永井荷風の長編小説。1916年(大正5)から17年にかけて《文明》に連載。17年,私家版50部限定として知友に配布し,翌年流布本(削除をほどこしたもの)を刊行戦後は私家版500部限定の刊行などもあり,その系統の本文が読まれている。大正初期の新橋花柳界を舞台にしたいわゆる〈花柳小説〉。尾花家の抱えの駒代を主人公として,実業家の吉岡役者瀬川,姐さん芸者の力次,枕芸者の菊千代,芸者上がりの君竜などが,金と色の世界の〈腕くらべ〉を展開する。エロティックな描写で注目されたが,季節の推移を味わい深くとらえ,時勢の変化を文明批評的に浮き上がらせており,荷風文学の中期を飾る代表作となっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「腕くらべ」の意味・わかりやすい解説

腕くらべ
うでくらべ

永井荷風の長編小説。1916年(大正5)8月から17年10月雑誌『文明』に連載、のち私家版50部限定として刊行(十里香館刊、17年12月の日付、実際は翌年1月)。荷風中期の代表作で、大正初めの新橋花柳(かりゅう)界を舞台とする「花柳小説」。尾花家(おばなや)の抱え駒代(こまよ)は実業家吉岡を旦那(だんな)にしているが、人気役者瀬川一糸に夢中になり、吉岡はその報復に菊千代を落籍し、また姐(ねえ)さん芸者力次は芸者あがりの君竜をそそのかして一糸を奪わせる。当世的な金と色と意地の腕くらべであるが、時勢おくれの尾花家の亭主老妓(ろうぎ)、旧派の文学者南巣(なんそう)らの設定は、それらを相対化している。エロティックな描写を含むが、季節の推移と融(と)け込んだ年中行事や風俗の描出に別趣の詩的な味わいがある。

[竹盛天雄]

『『荷風全集6』(1962・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

選挙公営

国または地方公共団体が個々の候補者の選挙費用の一部または全額を負担すること。選挙に金がかかりすぎ,政治腐敗の原因になっていることや,候補者の個人的な財力によって選挙に不公平が生じないようにという目的で...

選挙公営の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android