(読み)マデ

デジタル大辞泉 「迄」の意味・読み・例文・類語

まで【迄】[副助・終助]

[副助]名詞、活用語の連体形、一部の助詞などに付く。
動作・事柄の及ぶ距離的、時間的な限度・範囲・到達点を表す。「ここ来れば安心だ」「明日待ってください」「東京から大阪三時間かかる」
「堀江越え遠き里―送りる君が心は忘らゆましじ」〈・四四八二〉
動作・事柄の及ぶ程度を表す。…ほど。…くらいに。「そんなにぼくのことを思ってくれるのか」
作法、世に珍しき―、もてかしづき聞こえ給へり」〈桐壺
動作・事柄がもうそれ以上には及ばず、それに限られる意を表す。…だけ。「気に入らなければ断るさ」「念のために聞いてみただ」
「タダ出陣ノトキ、貝ヲ吹クコト、コレ家ノ役ナレバ勤ムル―ヂャ」〈天草本伊曽保・陣頭の貝吹き〉
極端な例をあげて、他の場合を言外に推測させる意を表す。…さえ。「子供にばかにされる」「実の親に見放される」
しづ―、おのが顔のならむさまをば知らでみさかえたり」〈・葵〉
[終助]確認・強調を表す。…ね。…よ。…ぞ。
「私がまゐって呼び返いてう―」〈虎明狂・乞聟〉
[補説]格助詞と扱う説もある。また、3は、多く断定の意を表す語を伴って文末に用いられるが、「まずはお礼まで」のように断定の助動詞を伴わないで用いることもある。3用法が転じたものと考えられ、中世末から近世にかけて用いられた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「迄」の意味・読み・例文・類語

まで【迄】

〘副助〙
体言・活用語の連体形・助詞などを受けて、事態の至り及ぶ時間的・空間的・数量的限界を示す。格助詞とする説もある。
万葉(8C後)四・四八五「昼は 日の暮るる麻弖(マデ) 夜は 夜の明くる極み
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「抓合ふまでは叭(あくび)が出る」
② 活用語の連体形・副詞や体言を受け、事態の及ぶ程度を表わす。ほど。
※古事記(712)上「八拳垂る摩弖(マデ)(た)き挙げ」
③ 体言や体言に助詞の付いたものなどを受けて、極端な例を挙げて、極端なものがそうであるのだから、普通の水準のものは、いうまでもなくそうである、という類推の意味を表わす。さえ。→語誌(2)。
源氏(1001‐14頃)賢木「あやしの法師ばらまで喜びあへり」
④ 体言または活用語の連体形を受け、それ以上には及ばず、それに限られる意を表わす。だけ。…にすぎない。→語誌(3)。「取り敢えずお礼まで」
※史記抄(1477)一一「道徳経と云も道徳の二篇まてぞ」
※歌舞伎・百夜小町(1684)二「髪を切って後家を立つる迄ぢゃ」
⑤ (④から転じて) 文末にあって確認・強調の意を表わし、終助詞的に用いられる。中世末・近世の口語
※歌謡・閑吟集(1518)「人はなにともいは間の水候よ、わごりょの心だににごらずはすむ迄よ」
浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「どこでやら落してのけた。誰ぞ拾たか知らん迄」
⑥ 動作の相手を示す。「御不審の方は係までお越し下さい」
[語誌](1)語源は両手の意の体言であろうとされ、「万葉集」中「まで」が「二手・左右手・諸手」と表記されているのは語源意識の反映かという。その他「まだし・貧し・惑ふ」と同源で、不十分の意から到達・波及の意となったもの〔改撰標準日本文法=松下大三郎〕、「目処(まと)」即ち「的」と同義〔弖爾乎波の原理的研究=新井無二郎〕などの説がある。
(2)③の用法は、現代語では「田中義一は、後に陸軍大臣、政友会総裁、そして内閣総理大臣にまでなった男である」のように、二つまたは三つのものを極端でないものから並べ、最後に最も極端なものを挙げる場合が多い。また、「父はもちろん、母までが反対した」などのように、「…はもちろん」「さらには」「おまけに」などの語句とともに用いられることが多い。
(3)④の用法は、限界を指定することによって事態の及ぶ範囲の広がりを押えるものであり、その言外に暗示される効果は③の用法と裏腹である。この違いは表現形式にも反映し、④は③のような「…まで…述語用言」の形をとらず、「…は…まで(じゃ)」の形で述語となる。

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