HIV(読み)エッチアイブイ(その他表記)human immunodeficiency virus

デジタル大辞泉 「HIV」の意味・読み・例文・類語

エッチ‐アイ‐ブイ【HIV】[human immunodeficiency virus]

human immunodeficiency virusRNAリボ核酸)タイプの遺伝子を持つレトロウイルスの一種。人間のT細胞に感染すると、免疫不全をきたし、エイズを発症させる。1983年にフランスパスツール研究所で発見された。エイズウイルスヒト免疫不全ウイルス

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共同通信ニュース用語解説 「HIV」の解説

HIV

エイズウイルス(HIV) 医学的には「ヒト免疫不全ウイルス」といい、HIVはその英語表記の頭文字を取ったもの。感染すると、免疫が低下して、さまざまな病気になるエイズの原因となる。1983年に発見された当初は治療法がなかったが、抗ウイルス薬の開発が進み、発症を抑えて感染者が健常者と変わらない生活を長く送れるようになった。ただ完治は難しく、長期間、治療を続ける必要がある。国内のHIV感染者は近年減少傾向にあり、2022年に新たに報告された感染者とエイズ患者は合わせて884人だった。

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精選版 日本国語大辞典 「HIV」の意味・読み・例文・類語

エッチ‐アイ‐ブイ【HIV】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] human immunodeficiency virus の略 ) =エイズウイルス

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「HIV」の意味・わかりやすい解説

HIV
えいちあいぶい

ヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virusの略称。ヒトに感染し免疫不全を引き起こすレトロウイルス。

[田沼順子 2026年1月20日]

発見の由来

HIVは、レトロウイルス科レンチウイルス亜科に属する外径約100ナノメートルのRNAウイルスである。1983年、フランスのパスツール研究所に所属するモンタニエらによって発見され、1986年5月、国際ウイルス分類委員会によりHIVと命名された。同年4月には、同じくモンタニエらによってHIV-2型が発見された。

[田沼順子 2026年1月20日]

増殖機構

HIVは、「レトロウイルス」とよばれるウイルスの仲間に属し、遺伝情報をRNAで運ぶ。通常の細胞では、遺伝情報であるDNAからRNAがつくられ、RNAをもとにタンパク質がつくられるが、HIVは遺伝情報をRNAで有し、通常とは逆の順番でRNAからDNAに書き換える特殊な仕組みをもっている。これが、「逆行する」という意味の「レトロ」という言葉が使われているゆえんであり、この仕組みにかかわる酵素を「逆転写酵素」とよぶ。同様に、HIVの増殖を抑える薬は「抗レトロウイルス薬」とよばれている。

 HIVは、宿主細胞の受容体や転写装置を巧みに利用しながら増殖する。脂質二重膜からなるエンベロープ(外被)に包まれており、エンベロープ表面にある糖タンパク質gp120がCD4陽性細胞のCD4受容体に結合することで感染の第一段階が始まる。その後、HIVはCCR5やCXCR4といった補助受容体(コレセプター)と結合し、別の糖タンパク質gp41の働きによってウイルスと細胞の膜が融合し、ウイルスの内容物が細胞内に送り込まれる。細胞内に侵入すると、ウイルスのRNAは逆転写酵素の働きでDNAへと変換される。このウイルスDNAはインテグラーゼ(HIVがもつ独自の酵素)によって宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主の転写機構を利用してウイルス遺伝子が発現する。新たに合成されたウイルス成分は細胞内で組み立てられ、成熟したウイルス粒子となって細胞外へと放出される。この過程においてプロテアーゼ(HIVがもつ独自の酵素)が働き、ウイルスタンパク質が切断・加工されることで感染性をもつウイルス粒子が形成される。

 1日に産生されるHIVのウイルス粒子数は10億から100億といわれている。血漿(けっしょう)中のHIV-RNA量は、ウイルスの増殖活動や免疫細胞の破壊の程度を反映しており、疾患進行の指標、治療効果の評価、生命予後の予測にも用いられている。

[田沼順子 2026年1月20日]

HIVの遺伝学的特徴

HIVは、逆転写酵素によってRNAからDNAへと遺伝情報を複製する際に、エラー修正ができないため、複製のたびに多くの突然変異が蓄積される。その結果、同じ個体のなかでも異なるウイルスが混在する。この性質により、HIVは表面構造を次々と変化させて免疫系の攻撃から逃れるほか、抗ウイルス薬に対する耐性も獲得しやすい。そのため、治療では複数の薬剤を組み合わせた多剤併用療法および高い服薬率が求められている。

 HIVは大きく分けてHIV-1とHIV-2の二つの型が存在するが、世界的に流行しているのはHIV-1である。HIV-1はその遺伝的多様性に基づき、さらに複数のサブタイプ(亜型)に分類されている。地域ごとに異なるサブタイプが流行しているほか、異なるサブタイプが同時に感染することで生じる組換え型も多く確認されている。サブタイプBは北米、日本、ヨーロッパなどの先進国で多くみられるのに対し、サブタイプCは南部アフリカやインドでもっとも多く、世界全体での感染の半数以上を占めるとされる。サブタイプA/Eの組換え型は東南アジアで多く確認されている。

[田沼順子 2026年1月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「HIV」の意味・わかりやすい解説

HIV
エイチアイブイ
human immunodeficiency virus

ヒト免疫不全ウイルス human Immunodeficiency virusの略称。エイズ (後天性免疫不全症候群) を起こすウイルスで,リボ核酸 RNAを遺伝子とするレトロウイルス科レンチウイルス亜科に属する。 HIVはヒト体内でヘルパーT細胞 (→T細胞 ) と呼ばれるリンパ球に出会うと,ウイルス外殻のたんぱく質がヘルパーT細胞表面の抗原たんぱく質に吸着しウイルス内部の RNAが細胞内部に侵入し感染が成立する。細胞内の RNAは逆転写酵素によってデオキシリボ核酸 DNAに変換し,細胞の DNAに組み込まれることで増殖を続け,多数の子ウイルスを放出しながら細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫システムで司令塔の役割を果たしており,これが破壊されると免疫不全を引き起こす。リンパ球のもう一つのタイプに感染症と戦うキラーT細胞があるが,この活性もヘルパーT細胞に依存しているため,感染症にかかりやすくなる。ほかに,HIVは脳細胞やマクロファージ (大食細胞) などの免疫系細胞に感染することが知られている。同じレンチウイルス亜科にはサルやネコの免疫不全ウイルスやウマの伝染性貧血ウイルスも含まれる。 HIVには,これまでに二つの型が発見されている。一つは 1983年にフランスのパスツール研究所のモンタニエのグループによって分離されたもので,HIV-1と呼ばれ,アメリカ,ヨーロッパ,アフリカのほとんどの国で流行している。 HIV-1の患者には男性同性愛者,麻薬常用者,汚染した血液の輸血を受けた血友病患者,性交相手の男性がエイズ患者だった女性,こうした男女間に生まれた子供が多い。日本では汚染された輸入血液製剤の輸血による血友病患者らへの感染が大きな社会問題になっている。二つ目は西アフリカで流行し,ほかの地域ではまれな HIV-2である。 HIV-2は潜伏期間が長く,症状も軽いとされる。感染経路は HIV-1と同じであるが,多くは異性間の性交によると考えられ,女性を通して胎児にも感染するので次世代への影響が心配される。

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百科事典マイペディア 「HIV」の意味・わかりやすい解説

HIV【エッチアイブイ】

エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルスhuman immuno-deficiency virusのこと。1983年に発見された。HIVはヒトの免疫機構の中心である血液中のヘルパーTリンパ球を破壊し,全身の抵抗力を失わせる。このため普通は病気の原因にならないような弱い病原体が重い病気を起こしたり(カリニ原虫によるカリニ肺炎など),悪性腫瘍(カポジー肉腫など)を起こしたりする。
→関連項目アンチセンスRNAHIV訴訟エマージング・ウイルス血液製剤スワジランド精子銀行多剤併用療法ボツワナ

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化学辞典 第2版 「HIV」の解説

HIV
エッチアイブイ

human immunodeficiency virusの略称.ヒト免疫不全ウイルス.エイズの原因ウイルス.HIV-1とHIV-2の2種類が知られているが,いずれもRNAウイルスの一種.RNAウイルスは,感染後,自身にコードされている逆転写酵素を使ってDNAを合成し,増殖することからレトロウイルスともよばれる.RNAを包むタンパク質(coat protein)のプロセッシングに必要なプロテアーゼは,アスパラギン酸プロテアーゼに属し,それをうまく阻害できればウイルスの増殖を抑制できるので,阻害剤開発の観点から注目されている.HIV-1のほうが病原性が強く問題であるが,変異しやすいためワクチンや治療薬の開発が思うように進んでいない.HIV-1の標的は免疫担当細胞の一種であるTリンパ球であり,感染すると免疫不全におちいる.

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内科学 第10版 「HIV」の解説

HIV

human immunodefi ciency virus,ヒト免疫不全ウイルス

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