HIV(読み)エイチアイブイ(英語表記)human immunodeficiency virus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

HIV
エイチアイブイ
human immunodeficiency virus

ヒト免疫不全ウイルス human Immunodeficiency virusの略称。エイズ (後天性免疫不全症候群) を起こすウイルスで,リボ核酸 RNAを遺伝子とするレトロウイルス科レンチウイルス亜科に属する。 HIVはヒト体内でヘルパーT細胞 (→T細胞 ) と呼ばれるリンパ球に出会うと,ウイルス外殻のたんぱく質がヘルパーT細胞表面の抗原たんぱく質に吸着しウイルス内部の RNAが細胞内部に侵入し感染が成立する。細胞内の RNAは逆転写酵素によってデオキシリボ核酸 DNAに変換し,細胞の DNAに組み込まれることで増殖を続け,多数の子ウイルスを放出しながら細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫システムで司令塔の役割を果たしており,これが破壊されると免疫不全を引き起こす。リンパ球のもう一つのタイプに感染症と戦うキラーT細胞があるが,この活性もヘルパーT細胞に依存しているため,感染症にかかりやすくなる。ほかに,HIVは脳細胞やマクロファージ (大食細胞) などの免疫系細胞に感染することが知られている。同じレンチウイルス亜科にはサルやネコの免疫不全ウイルスやウマの伝染性貧血ウイルスも含まれる。 HIVには,これまでに二つの型が発見されている。一つは 1983年にフランスのパスツール研究所のモンタニエのグループによって分離されたもので,HIV-1と呼ばれ,アメリカ,ヨーロッパ,アフリカのほとんどの国で流行している。 HIV-1の患者には男性同性愛者,麻薬常用者,汚染した血液の輸血を受けた血友病患者,性交相手の男性がエイズ患者だった女性,こうした男女間に生まれた子供が多い。日本では汚染された輸入血液製剤の輸血による血友病患者らへの感染が大きな社会問題になっている。二つ目は西アフリカで流行し,ほかの地域ではまれな HIV-2である。 HIV-2は潜伏期間が長く,症状も軽いとされる。感染経路は HIV-1と同じであるが,多くは異性間の性交によると考えられ,女性を通して胎児にも感染するので次世代への影響が心配される。

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デジタル大辞泉の解説

エッチ‐アイ‐ブイ【HIV】[human immunodeficiency virus]

human immunodeficiency virus》RNA(リボ核酸)タイプの遺伝子を持つレトロウイルスの一種。人間のT細胞に感染すると、免疫不全をきたし、エイズを発症させる。1983年にフランスのパスツール研究所で発見された。エイズウイルスヒト免疫不全ウイルス

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百科事典マイペディアの解説

HIV【エッチアイブイ】

エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルスhuman immuno-deficiency virusのこと。1983年に発見された。HIVはヒトの免疫機構の中心である血液中のヘルパーTリンパ球を破壊し,全身の抵抗力を失わせる。このため普通は病気の原因にならないような弱い病原体が重い病気を起こしたり(カリニ原虫によるカリニ肺炎など),悪性腫瘍(カポジー肉腫など)を起こしたりする。
→関連項目アンチセンスRNAHIV訴訟エマージング・ウイルス血液製剤スワジランド精子銀行多剤併用療法ボツワナ

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大辞林 第三版の解説

HIV

〖human immunodeficiency virus〗
ヒト免疫不全ウイルス。エイズの原因となるレトロウイルスの一。次々と免疫細胞を侵食して免疫機能を低下させていく。エイズ-ウイルス。

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