全国瞬時警報システム(Jアラート) 弾道ミサイルや緊急地震速報など、対処に時間的余裕がない事態に関する情報を国民に伝えるシステム。注意が必要な地域の住民に市町村の防災行政無線で警報を流し、スマートフォンなどに緊急速報メールを配信する。政府はミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合、まず「発射情報」を出す。日本に落下する恐れがあれば、続報として屋内避難を呼びかける。日本の上空通過や、領海への落下の際も情報を発信する。
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避難の時間的余裕がない大災害や武力攻撃などの緊急事態情報を短時間で全国民に伝える警報システム。ジャパンJapanの頭文字Jと英語で警報を意味するアラートalertを結び付けた造語で、正式名称は全国瞬時警報システム。政府が地震、津波、噴火、竜巻、土砂崩れなどの大災害情報のほか、弾道ミサイル発射・通過、大規模テロ、航空攻撃、ゲリラ・特殊部隊攻撃など、国民の生命・財産に危害を及ぼしかねない危険情報を数十秒から数分以内に国民へ知らせ、早期の避難や予防措置などをうながすことによって被害の軽減を図るねらいがある。内閣官房が発表する国民保護に関する情報と、気象庁が発表する自然災害に関する情報の2種類がある。ミサイル情報などは内閣官房から、地震・津波情報などは気象庁から、それぞれ総務省消防庁へ送られ、消防庁が人工衛星を介して全国の自治体へ情報を送り、各自治体は防災行政無線による音声や警報音(サイレンなど)、ケーブルテレビ(CATV)、コミュニティFM放送などで住民に伝える。また、消防庁から携帯電話事業者を経由して緊急速報メールなどが配信される。
政府は2007年(平成19)2月に北海道や長野県など10都道県と岩手県釜石(かまいし)市など4市町で運用を開始し、2009年度補正予算で全国的な整備に着手。2014年4月に全市区町村に受信機を設置し、2016年5月には自治体職員が操作しなくても瞬時に情報を送る自動起動装置を全市区町村に整備した。2007年10月に緊急地震速報の送信を始め、北朝鮮のミサイルが通過した際には、「ミサイル発射情報」や「ミサイル通過情報」を発信した。北朝鮮が長距離弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返していることもあって、政府は繰り返しJアラートの訓練を実施しているが、メールを送信できない、誤作動による誤報の発令といったトラブルが起きている。また、漁船など情報が届きにくい場所にいる国民に、どのように危険情報を伝えるかが課題となっている。
なお、Jアラートとは別に、気象に関する特別警報などを携帯電話事業者を通じて知らせる気象庁の緊急速報メールがあるが、複雑な防災気象情報を整理する目的で、2022年(令和4)12月に噴火、大雨などに関する配信を終え、緊急地震速報、津波・大津波警報のみの配信を継続している。
[矢野 武 2023年2月16日]
(原田英美 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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