紫斑病(読み)シハンビョウ(その他表記)purpura

翻訳|purpura

デジタル大辞泉 「紫斑病」の意味・読み・例文・類語

しはん‐びょう〔‐ビヤウ〕【紫斑病】

皮膚粘膜に斑状の内出血が起こり、赤紫色を呈する病気総称血小板減少機能異常、血管の病的変化などで起こる。

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精選版 日本国語大辞典 「紫斑病」の意味・読み・例文・類語

しはん‐びょう‥ビャウ【紫斑病】

  1. 〘 名詞 〙 皮膚および粘膜に出血を起こし、紫斑ができる疾患の総称。発熱や関節痛を伴い、全身に不快がある。侵された部位により血管性、血小板減少性、凝血因子欠乏性とに分かれる。〔育児読本(1931)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「紫斑病」の意味・わかりやすい解説

紫斑病 (しはんびょう)
purpura

皮内,皮下,粘膜下における出血を主徴とする疾患の総称で,いろいろな病気が含まれる。出血には皮内の小出血点(点状出血)から,皮下の大きな出血(斑状出血)まで種々の形があり,色調も新しい出血では鮮紅色を示すが,古くなると暗赤色,紫褐色,黄褐色,褪色というようにさまざまとなる。原因には,血液の異常(血小板の減少,血液凝固の異常,異常タンパク質など),血管支持組織・血管内圧の異常,血管炎など種々の因子が考えられる。病理組織学的には,初期の赤血球の血管外溢出(いつしゆつ)(すなわち出血)と,末期の血鉄素(ヘモジデリン)沈着が特徴的である。

 血小板減少による紫斑病は,血小板減少性紫斑病idiopathic thrombocytopenic purpura(ITPと略す)といわれ,血小板の減少によって,血液凝固作用が低下して,出血傾向となるために起こるものである。紫斑は,大小さまざまな形を呈し,下腿伸側に多く出現するが,部位は必ずしも一定しない。粘膜の出血もしばしばみられる。血液検査により,出血時間の延長,ランペル=リーデ試験(毛細管抵抗試験)陽性,血小板の減少と寿命短縮などが検出される。原因には,薬剤・化学物質,放射線によるもの,感染,骨髄疾患,血管腫血小板無力症,ウィスコット=アルドリッチ症候群などによる二次的なものと原因不明のものとがある。原因不明のものは特発性血小板減少性紫斑病とよばれるが,抗血小板による自己免疫とも考えられている。治療としては,安静,止血剤の使用のほか,輸血血小板輸血,副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤の服用,脾臓摘出などを行う。

 血液凝固異常による紫斑病には,血友病,プロトロンビン欠乏症,フィブリノーゲン欠乏症などが挙げられる。支持組織の脆弱(ぜいじやく)化に起因する紫斑病としては,老人性紫斑,ステロイド紫斑,壊血病,デビス紫斑などが挙げられる。血管炎によるものには,アナフィテクトイド紫斑,皮膚結節性動脈炎,皮膚アレルギー性血管炎がある。いずれの場合にも,原因を想起させるさまざまの症状を呈するが,血液検査,毛細管抵抗試験,皮疹部の病理組織学的所見により診断を確立し,原因療法あるいは対症療法を行う。

 紫斑病はきわめて多岐にわたる疾患群であるので,紫斑病即重症という考えは必ずしも当を得たものではない。
血液凝固 →出血
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家庭医学館 「紫斑病」の解説

しはんびょう【紫斑病 (Purpura)】

◎紫色の出血斑(しゅっけつはん)ができる
 出血傾向(しゅっけつけいこう)などがあって、血管から皮膚や粘膜(ねんまく)の下に赤血球(せっけっきゅう)が出てくる(内出血(ないしゅっけつ))と、そこが紫色にみえることが多く、これを紫斑(しはん)といいます。
 紫斑は、浅いところの出血では鮮やかな赤、深いところの出血では暗い紫色で、時間とともに褐色から黄色に変化します。この紫斑がおもな症状である病気を紫斑病(しはんびょう)といいます。
 したがって、紫斑病の原因は、出血傾向をひきおこす原因でもあって、大きく分けると、血管の病的な変化、血小板(けっしょうばん)の異常、血液凝固(けつえきぎょうこ)のしくみの異常となります。
 さらに、これらの異常が先天的な遺伝に関係しておこるものと、後天的におこるものに分けられます。また、その異常が1つの病気として独立しておこるもの(特発性(とくはつせい))と、なにか別の病気にともなっておこるもの(続発性(ぞくはつせい)、症候性(しょうこうせい))に分けることもできます。
◎紫斑病のいろいろ
 紫斑病の原因のうち、血管に異常があっておこるものを、血管性紫斑病(けっかんせいしはんびょう)といいます。
 血管性紫斑病の代表的なものは、アレルギーが原因でおこるアレルギー性紫斑病(せいしはんびょう)です。
 このほか、血管壁が破れやすい単純性紫斑病(たんじゅんせいしはんびょう)、老化にともなう老人性紫斑病(ろうじんせいしはんびょう)、血管に異常をおこすような原因があっておこる症候性血管性紫斑病(しょうこうせいけっかんせいしはんびょう)などがあります。
 血小板の異常でおこる紫斑病は、血小板の数の異常が原因のものと、質の異常が原因のものに分けられます。
 血小板の数の異常によっておこる代表的な病気は血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)で、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)の一種と考えられる特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)、血小板が血管内で固まっておこる血栓性血小板減少性紫斑病(けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)などがあります。
 質の異常によっておこるものの代表には、血小板機能異常症(けっしょうばんきのういじょうしょう)があります。

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百科事典マイペディア 「紫斑病」の意味・わかりやすい解説

紫斑病【しはんびょう】

皮膚,粘膜,内臓に大小の出血斑を生ずる病気の総称。血小板減少性と血小板機能異常性と血管性とがある。血小板減少性紫斑病は,白血病や再生不良性貧血,全身性エリテマトーデスなどの原因による続発性のものと,血小板を減少させる病気のないのに起こる特発性のものがある。後者は,小児に多い急性のものは,麻疹などのウイルス感染にひき続いて起こることもあるが,慢性の場合は免疫異常によると考えられ,難病に指定されている。血小板機能性紫斑病は,ベルナール・スーリエ症候群などごくまれで,血管性紫斑病は血管がもろくなったり,血管を支持する組織に病的な変化をきたして起こる。輸血,副腎皮質ホルモンにより治療し,脾(ひ)臓の摘出を行うこともある。血管性のものにはルチン,アドレノクロム等を使用することもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紫斑病」の意味・わかりやすい解説

紫斑病
しはんびょう
purpura

皮膚,粘膜に生じる紫色の皮疹をおもな病変とする疾患。これはヘモグロビン,ビリルビン,ヘモジデリンなどによる着色で,指で圧迫しても消退しない。紫斑はその大きさ,形状により直径1~5mmの点状出血,それより大きい斑状出血,大量の出血による血腫などに大別される。紫斑病の原因としては,血液成分の異常,血管支持組織の脆弱化,血管内圧亢進,血管炎など,さまざまのものがあげられる。 (→アナフィラキシー紫斑病 , 特発性血小板減少性紫斑病 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紫斑病」の意味・わかりやすい解説

紫斑病
しはんびょう

紫斑

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栄養・生化学辞典 「紫斑病」の解説

紫斑病

 皮下,粘膜下の出血を起こす疾患.

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世界大百科事典(旧版)内の紫斑病の言及

【発疹】より

…(1)斑macula 立体的変化のない色調の変化を主とした病変で,目を閉じて触れると分からない。紅斑erythemaは紅色調の,紫斑purpuraは紫紅色調のもの。ガラス板で圧迫すると,紅斑は紅色調が退色するのに対し,紫斑は紫紅色調が残る。…

【紫】より


[象徴としての紫]
 青と赤とを重ねた色である紫は,青と赤の割合に応じてさまざまに変化する。西洋ではその変化に応じて異なった名称を使い,両者等分のものをラテン語でウィオラviola(本来〈すみれ〉の意),赤みの強いものをプルプラpurpura(深紅色の染料がとれる貝Purpuraに由来),青みの強いものをヒュアキントゥスhyacinthus(青い花を咲かせる植物Hyacintusに由来)と分けている。そのうちプルプラ(英語のpurple,フランス語のpourpreなどの語源)は,その色の染料が高価なので,これで染めた絹布はとくに貴重視され,古代ローマ時代には皇室の専用品となった。…

【血液】より

…止血は血管,血小板,凝固因子の3者の協同作用で完全となり,このどれが異常でも出血傾向になる。血管や血小板の異常(数が少ないか,働きが悪いか)があると皮膚に針でついたくらいの点状出血を生じやすく,この状態の出血傾向を紫斑病という。これと対照的に凝固因子の欠乏があると関節や筋肉に出血しやすく,代表的疾患として第VIII因子が欠乏したためにおこる血友病Aが有名である。…

【血小板】より

…血小板数が減ったり,血小板の機能(粘着,凝集能)が悪いと,軽い外力ですぐ皮膚や粘膜に点状出血を生じ,止血するのにも長時間を要するようになる。これを紫斑病(血小板減少性紫斑病)という。血液血液凝固血球【松本 昇】。…

【出血】より

…血小板の質的・量的異常により一次止血機序異常が起こる場合,また血液凝固異常により二次止血機序異常が起こる場合,さらに,血管に異常があって血管損傷が起きやすくなると出血傾向が起こる。血小板や血管の異常の場合には,皮下出血(紫斑)と粘膜出血が特徴的にみられ,一般に紫斑病と呼ばれる。血小板減少性紫斑病,血管性紫斑病などがそれである。…

※「紫斑病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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