炊飯用の器具。炊の字は火と欠(吹(すい)の省略形)の2字をあわせてできたもので、「炊(かし)ぐ(室町時代まではかしく)」の意。つまり、息を吹いて火を燃やし、米や麦などを煮たり蒸したりして飯をつくることをいう。語源が昔の飯炊(た)きのさまを如実に示しているが、炊飯器としてはもっぱら鍋(なべ)が使用されていた。近世になって、つばのある羽釜(はがま)が用いられ、燃料が炭やガスになると文化鍋なども使われるようになった。電気での炊飯は1921年(大正10)ころから考案されていたが、当初のものはかまどに電熱器を取り付けた電気かまどであり、昭和初期につくられたものも二重釜の内部にヒーターをセットしたにすぎなかった。スイッチを入れるだけで自動的に炊き上がる電気炊飯器の開発は、1955年(昭和30)である。その手軽さ、便利さが受けてたちまち普及し、2、3年後にはガス炊飯器も登場した。その後は電子ジャー付き、タイマー付き、マイクロコンピュータ内蔵などさまざまな機能を付加したものが出回っている。
[正木英子]
電気釜ともいう。加熱方式によって2種類に大別される。
(1)直接加熱式(熱板式) アルミニウム鋳物にシーズヒーターを鋳込んで熱板とし、その上に内鍋の底部を密着させて伝導熱により直接炊き上げる方式。効率はよいが、上部の飯は固めで下部が柔らかめになる傾向がある。
(2)空気間接加熱式(かまど式) 円形状のシーズヒーターを内鍋と内枠の空間に取り付け、ヒーターの放射熱と高温に加熱された周りの空気とにより包み込むように炊き上げる方式。上下が均一にむらなく炊き上がる。かまど炊き風ともいわれるのは、かまどでは炎が釜の底から側面にまで回って釜全体が加熱されるため、飯がふっくらとむらなく炊き上がるという原理を応用したものだからである。いずれの方式も、内鍋の底と接触する部分に感熱体が組み込まれていて、内鍋の水分がなくなり鍋底の温度が上昇すると、感熱体が温度変化を感知してスイッチが切れる仕組みになっている。
[正木英子]
電気炊飯器に電子ジャーの機能を付加させたもの。1972年に発売されて以来年々需要が高まり、いまでは炊飯器の主流になっている。炊飯機能は電気炊飯器と同じであるが、胴と内蓋(うちぶた)に保温ヒーターを取り付け、本体の周囲には断熱材(グラスウール)を充填(じゅうてん)し、さらに、炊いた飯の温度を一定に保つための温度コントローラーを内蔵している。温度制御にはサーミスターなどの半導体、または、サーマルリードスイッチというマグネット式のサーモスタットが使われている。二度炊きとか追い炊きの工程があるものは、炊飯終了後に余分な水分をとばして十分蒸らすため、自動的に弱火で再加熱する専用タイマーがついている。炊飯時に圧力をあげて炊き上げる圧力タイプのものもある。タイマー付きは炊飯時間をセットしておけば、自動的にスイッチが入る。マイクロコンピュータを内蔵したものは、予約時間になると炊飯量に適した火力で、吸水から炊飯、二度炊き、保温までを自動的にコントロールして炊き上げる。
[正木英子]
こんろの部分と釜の部分からなり、大部分が取り外し可能である。飯が炊き上がると自動消火装置が内釜の底の温度変化を感知して、メインバーナーの火を止める。ガスによる炊飯はかまど式に近く、炊きむらが少ない。ガスで炊飯して電気で保温する電子ジャー付きや、タイマー付きもある。
JIS(ジス)(日本産業規格)の「電気がま及び電子ジャー」(JIS C9212)では、12時間保温後の飯の温度は67~78℃の範囲にあり、著しい焦げの進行、異臭および著しい褐変があってはならないとしている。おいしく食べるには長時間の保温を避け、少量の場合は飯が乾燥して固くなるので保温しないようにする。
[正木英子]
一般には,ガスまたは電気の熱源と容器を組み合わせて炊飯を行う器具。飯炊釜(めしたきがま)用には,1902年(明治35)に〈ガス竈〉,21年(大正10)に〈飯炊電熱器〉が発売され,また,24年には〈電化がま〉と称する組合せ型のものも現れた。しかし,炊飯器が一般化するのは,1955年の電気釜,58年のガス釜の登場による。いずれも,最初にスイッチを入れれば,あとは調節の手間もいらない自動式炊飯器で,主婦の労働の省力となるためいっきょに普及した。電気釜は1955年当時月産1万台だったが,58年には月産10万台でも不足といわれ,79年には月産50万台を突破した。ガス釜は経済的で火力も強くできるため味が良いといわれ,65年には電気釜を上回る売上げを示したが,その後は鈍化している。
執筆者:杉原 美由紀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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