クラスター(読み)くらすたー(その他表記)cluster

翻訳|cluster

デジタル大辞泉 「クラスター」の意味・読み・例文・類語

クラスター(cluster)

《花やブドウなどの房の意。「クラスタ」とも》
同種のものや人の集まり。群れ。集団。
都市計画などで、個々の建物・道路・空き地などを相互に関連させて一つの集合体としてとらえ、配置すること。
原子分子の集まりの中で、特定の一部の原子や分子が結びついて一つのかたまりとなり、物理的に安定し、かつその集まりの中で一定の役割をになっている状態。
コンピューター磁気ディスクなど、円盤状の補助記憶装置を管理する単位。同心円状に分割した区画をトラック、それを放射状(扇形)に等分割した区画をセクターといい、複数のセクターをまとめたものをクラスターとする。
あるテーマを中心にする大学・研究機関の集合体や、ある技術を中心とする企業の集合体のこと。
ある疾患が、特定の集団内において、予測よりも多くみられること。また、その集団。
感染症で、感染経路が判明している、数人から数十人程度の小規模な患者の集団。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「クラスター」の解説

クラスター

感染者の集団を意味する。新型コロナウイルスによる肺炎は、多くが他の人に感染させないが、一部の人が複数に感染させて拡大している恐れがある。クラスターが次のクラスターを生み出すという感染の連鎖が各地で起きると、感染者が爆発的に増えるため、政府はクラスターの発生防止が極めて重要と位置付けている。厚生労働省は2月下旬、クラスターが発生した自治体に専門家を派遣し、対策を検討する「クラスター対策班」を設置した。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラスター」の意味・わかりやすい解説

クラスター
くらすたー
cluster

ある感染症に罹患(りかん)した患者の集団。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の感染拡大以降は、とくに新型コロナウイルスの感染が確認された集団をこのようによぶことが定着した。本来は「群れ」「集団」の意であり、物理学では原子や分子の集合体をいい、都市計画の分野でも用いられる。

 新型コロナウイルス感染症のクラスターは、職場、会食、イベントなどで形成されることがある。クラスターを定義するうえで、人数についての規定はないが、日本においては便宜的に5人以上を一つの目安としていることが多い。クラスターが発生した際、対応が遅れると感染者数が増え、より大きなクラスターとなることがある。このため保健所は、感染者からの聞き取りなどを行って、クラスター発生の有無について周囲にいた人への検査をするなどして感染拡大防止に努めている。

 ただし、クラスターといっても、それを形成する感染者の社会的な属性などにより、さらに感染を拡大させるかどうかのリスクは異なる。たとえば、繁華街におけるある店舗でのクラスターで、客ないし事業を行う者が感染したことが判明した場合には、感染がその地域全体に広がる可能性を想定する必要がある。一方で、医療機関や高齢者施設でのクラスターは、そこから地域に広がるというよりは、地域での感染の広がりからこうした場面でのクラスター発生に至ったと考えることができる。後者の場面でのクラスターは、新型コロナウイルスにおいては、多くの高齢者に感染し、重症化したりすることで地域の医療が逼迫(ひっぱく)したり、多くの人が亡くなるといった事例がみられた。

[和田耕治 2021年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「クラスター」の解説

クラスター
クラスター
cluster

原子や分子が分子間力などによってブドウの房(cluster)のように集合した状態.オキソニウムイオン(H3O)に水素結合によって複数の水分子が結合したH3O (H2O)nのようなイオンクラスターの生成は,古くから質量分析計で観測されていたが,1980年代前半から,超音速ジェットによる希ガス原子クラスター,たとえば (Ar)n やレーザーアブレーションによる金属クラスターの発生が観測されるようになり,クラスターの多彩な性質が明らかになってきた.炭素の同素体であるフラーレンナノチューブも,炭素原子のつくるクラスター化合物とみることができる.また,核反応を議論する際に,複数の核子の特別な集合を考え,これをクラスターとよぶこともある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラスター」の意味・わかりやすい解説

クラスター
cluster

同種あるいは異種のイオン,原子,分子が,水素結合,ファン・デル・ワールス力,あるいは化学結合で,2個以上結合しているもの。陽イオンと陰イオンを中心に原子や分子が集合したものをクラスターイオン,原子や分子が集合したものをクラスター化合物,金属原子が集合したものを金属クラスターという。たとえば,水分子は (H2O)n (n>2) で表わされるクラスターを形成する。また金属錯体 (→配位化合物 ) には2個以上の金属原子が結合しているものがある。そのような錯体を金属クラスター錯体と呼ぶ。たとえばニオブモリブデンクラスター錯体はそれぞれ Nb6I8 ,Mo6Cl6 である。なおフラーレンは炭素のクラスター分子である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「クラスター」の解説

クラスター

クラスターとはブドウなどの果実や花の房のことで、ブドウの粒のような個が連携した集合体の呼称。化学におけるクラスターは、原子や分子が数個から数千個程度集まったものを指す。金属結合や共有結合などの強い化学結合で形成された安定なクラスターは、ナノテクノロジーの構成材料として注目されている。例えば炭素を放電などで蒸発させて再凝集させると、炭素原子60個で構成されたクラスターが特異的に多数生成する。これは炭素原子が五角形と六角形に結合して約1nm(n〈ナノ〉は10億分の1)の安定な球状になったもので、バックミンスター・フラーレンと呼ばれる。管状構造のカーボンナノチューブなど様々なナノサイズの炭素素材が研究されている。一方、ファンデルワールス力や水素結合といった弱い結合で構成されたクラスターは、溶液の局所構造やDNA対などのモデルとして重要。

(市村禎二郎 東京工業大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「クラスター」の意味・わかりやすい解説

クラスター
cluster

(1)原子核において,一部の核子が結びついて一つの粒子のようにふるまう部分をクラスターといい,原子核がクラスターからできているとする模型をクラスター模型という。
原子核模型
(2)金属イオンどうしが金属間結合によって一つの集団をつくっている部分をクラスターといい,クラスターを分子内にもつ化合物を金属クラスター化合物という。
金属クラスター化合物

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

IT用語がわかる辞典 「クラスター」の解説

クラスター【cluster】

ハードディスクやフロッピーディスクなどの円盤状のデータ記録媒体の記録単位で、複数のセクターをまとめたもの。◇1クラスターあたりのセクター数は、記録媒体の種類やオペレーティングシステムによって異なる。「cluster」は本来「群れ」「集団」「密集する/させる」などの意。「クラスタ」ともいう。⇒セクター

出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「クラスター」の解説

クラスター

ハードディスク上の記録領域の単位。ディスクの盤面は、同心円状に分割したトラックを、さらに放射状に分割したセクターで区分けされている。ファイルの記録は、いくつかのセクターをひとまとめにしたクラスター単位で行われる。ハードディスクのフォーマットもクラスター単位で行われる。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

DBM用語辞典 「クラスター」の解説

クラスター【cluster】

もともとはブドウの房の意味。群れ、集団、集落のこと。住んでいる地域、年齢、性別などの人口統計学的データ、趣味、ライフスタイルなどの心理的特徴をベースに、グループ分けしたものをクラスターと表現している。

出典 (株)ジェリコ・コンサルティングDBM用語辞典について 情報

音楽用語ダス 「クラスター」の解説

クラスター[cluster]

非常に密集した和音(例えば、1オクターブで内の音全てを同時にならす等、効果音的に使われることもある)のこと。ほとんどでたらめといった感じに使われることもある。

出典 (株)ヤマハミュージックメディア音楽用語ダスについて 情報

栄養・生化学辞典 「クラスター」の解説

クラスター

 かたまり,群,集団といった状態を表す語.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクラスターの言及

【氷】より

…氷が融解すると水分子間の水素結合はあちこちで切れ,水分子はより自由に運動できるようになる。しかしすべての水素結合が融点で一度に切れるのではなく,そのかなりの部分は融解の後も残っており,液体の水の中では多数の水分子が水素結合によって結びつき合って,多少とも氷に似た構造をつくっている集団(クラスターcluster)が至る所にできているらしい。これは氷の融解熱が昇華熱(氷の結晶が直接に気化して,ばらばらの水蒸気分子になるときに吸収する熱量)よりかなり小さいことからもわかる。…

【水】より

…また融点の値も低分子量の分子性化合物としては著しく高い。氷が融解して水になっても,その中にはまだ多くの水分子が水素結合によって互いに結びつき,多少とも氷に似た構造をつくっている〈クラスターcluster〉と呼ばれる部分が至る所に残っており,これが温度の上昇とともに順次崩れて,自由に運動する水分子の割合が増していくものらしい。水の粘性率がたとえばメチルアルコールのような液体より50%ほども高いことは水素結合のために分子の自由な流動が妨げられていることの表れであり,また水の比熱が大きいことも,温度の上昇とともにクラスター中の水素結合が切断されていくために大きな熱エネルギーが消費されることを示している。…

【金属クラスター化合物】より

…金属イオンどうしが,金属間結合によって集まって一つの原子団(クラスターという)をつくっている部分をもつ化合物の総称。単にクラスター化合物ということもある。…

【原子核模型】より

…模型といってもあくまで理論的なものである。原子核はほぼ陽子と中性子(総称して核子という)からできているが,原子核模型は,この核子間の相関の考え方から集団(運動)模型,独立粒子模型,クラスター模型に分類できる。 集団運動模型は核子間には強い相関があるとする立場に基づくもので,これには液滴模型,変形核模型などがある。…

【氷】より

…氷が融解すると水分子間の水素結合はあちこちで切れ,水分子はより自由に運動できるようになる。しかしすべての水素結合が融点で一度に切れるのではなく,そのかなりの部分は融解の後も残っており,液体の水の中では多数の水分子が水素結合によって結びつき合って,多少とも氷に似た構造をつくっている集団(クラスターcluster)が至る所にできているらしい。これは氷の融解熱が昇華熱(氷の結晶が直接に気化して,ばらばらの水蒸気分子になるときに吸収する熱量)よりかなり小さいことからもわかる。…

【水】より

…また融点の値も低分子量の分子性化合物としては著しく高い。氷が融解して水になっても,その中にはまだ多くの水分子が水素結合によって互いに結びつき,多少とも氷に似た構造をつくっている〈クラスターcluster〉と呼ばれる部分が至る所に残っており,これが温度の上昇とともに順次崩れて,自由に運動する水分子の割合が増していくものらしい。水の粘性率がたとえばメチルアルコールのような液体より50%ほども高いことは水素結合のために分子の自由な流動が妨げられていることの表れであり,また水の比熱が大きいことも,温度の上昇とともにクラスター中の水素結合が切断されていくために大きな熱エネルギーが消費されることを示している。…

※「クラスター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android