モクセイ科ソケイ属の総称名。直立またはつる性の低木。世界に約200種あり,おもに旧世界の熱帯から暖帯に分布する。花に芳香をもつものが多く,香料原植物として栽培されるものも多い。日本には野生しないが,次のような種が観賞用に栽培される。
ソケイ(素馨)J.officinale L.(英名poets jasmine,common white jasmine)はインド,アフガニスタン,イラン方面に野生するつる性の常緑低木。古くヨーロッパに伝えられ,日本には中国より1819年に伝えられたという。葉は羽状複葉で5~9の小葉に分かれ,花は白色で径2~2.5cm,花冠は長い筒があり,先は4裂。花はリナロール,ベンジルアルコールなどを含み,よい香りがある。オオバナソケイvar.grandiflorum(L.)Baileyは花は大きく径3.5cmぐらい。
キソケイJ.humile L.var.revolutum(Sims)Stokesはヒマラヤ原産の常緑低木で,観賞用に庭に植えられる。葉は羽状複葉で毛がなく,3~7の小葉がある。花は黄色で,径2.5~2.7cm,5~7月ごろ枝先に集散状につき,あまり香りはない。日本ではかつてマデイラ原産のJ.odoratissimum L.と誤認されていた。ウンナンソケイvar.glabrum(DC.)Kobuskiはヒマラヤ,雲南の原産で,小葉は5~9枚,花もやや小型で径1.3cm内外。ヒマラヤソケイvar.humileは花がウンナンソケイに似て,小葉の数は3~5枚である。
オウバイ(黄梅)J.nudiflorum Lindl.(英名winter-jasmine,中国名は迎春花)は中国原産で庭に植えられる落葉小低木。茎は緑色で4稜があり,葉は小型で3小葉がある。花は黄色で3~4月に開き,径2~2.5cm。寛永年間(1624-44)に渡来したといわれている。
マツリカ(茉莉花)はアラビアの原産で,香料植物として古くから有名である。高さ1~3mになる常緑低木。葉は広楕円形で長さ3~8cm。花は白色でふつうは6裂し,径3cm内外。八重咲きの品種もある。花はジャスミン茶(〈中国茶〉の項目を参照)に入れたり,ジャスミン油をとって香水の原料とされる。日本では,寒さに弱いので鉢植えにし,冬は温室に入れてやる必要がある。
ボルネオソケイJ.gracillimum Hook.f.(一名ジャバソケイ,英名Borneo jasmine)は,ボルネオの原産でつる性の常緑低木。全体に軟毛がある。対生する葉は単葉で,葉の裏は蒼白色。花は白色大輪で,花冠は8~9に細裂して芳香があり,多数むらがって下垂する球状の円錐花序を作っている。花期は夏だが,温室では冬に開花する。
オウバイモドキJ.mesnyi Hance(一名雲南黄梅,英名primrose jasmine)は中国雲南の原産で,高さ3mくらいになる常緑の低木。枝は四角形で毛がなく,葉は3小葉。花は黄色で径5cmくらい。春に咲き,花冠は6裂するが,八重咲きのものもある。明治の初めごろ渡来し,耐寒性があるので露地で栽培できる。繁殖はおもに挿木による。学名はJ.primulinum Hemsl.が広く用いられているが,J.mesnyi Hanceが正しい。
執筆者:村田 源
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
モクセイ科(APG分類:モクセイ科)ソケイ属(ジャスミン属)植物の英名。常緑低木で、世界の熱帯から亜熱帯に約400種分布する。とくにアフリカ、東南アジア、太平洋諸国に多い。よく知られているマツリカ(茉莉花)J. sambac (L.) Aitonはアラビア、インドの原産で、半つる性、高さ1.5~3メートルとなり、葉は広卵形で対生もしくは3枚が輪生する。花は枝先に数個つき、白色で径2センチメートル、花弁は9枚前後、裂片は楕円(だえん)形か円形。ほかに八重咲きの品種もある。花は芳香が強く、中国では花を早朝に摘んで乾かし、お茶に混ぜて飲み、ジャスミンティーの名でよばれている。フィリピンではサンパギータの名で親しまれ、国花とされている。またタイ、ハワイなどではこの花でレイをつくる。日本では3~5号鉢に植え、観賞する。
ほかにハゴロモジャスミンJ. polyanthum Fr.は中国原産で、つるがよく伸び、ナンテンに似た葉を対生する。春、香気のある純白の花を30~40個房状に開く。鉢で行灯(あんどん)仕立てで観賞するのに適するほか、暖地では庭木として生け垣やポール仕立てにする。
ジャスミンの仲間はこのほかに、インドネシアの国花であるジャワソケイがある。また庭木などにするオウバイもこの仲間である。
[坂梨一郎 2021年7月16日]
マツリカは冬季は3~5℃以上、ハゴロモジャスミンは凍らない程度で管理する。戸外で育つものは暖かい所に植え、日によく当て、用土は排水のよいものを選ぶ。繁殖は挿木により、梅雨のころ葉を3枚以上つけて挿す。
[坂梨一郎 2021年7月16日]
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