九条武子(読み)クジョウタケコ

デジタル大辞泉 「九条武子」の意味・読み・例文・類語

くじょう‐たけこ〔クデウ‐〕【九条武子】

[1887~1928]歌人。京都の生まれ。西本願寺大谷光尊次女佐佐木信綱に学び、歌集に「金鈴」「白孔雀」などがある。

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精選版 日本国語大辞典 「九条武子」の意味・読み・例文・類語

くじょう‐たけこ【九条武子】

歌人。京都西本願寺法主、大谷光尊の娘。九条良致と結婚して、ともに渡欧したが、まもなく単独帰国して、佐佐木信綱の門にはいり、「心の花」の代表的歌人として知られる。主著は、歌集に「金鈴」「薫染(くんぜん)」、歌文集に「無憂華(むゆうげ)」など。明治二〇~昭和三年(一八八七‐一九二八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「九条武子」の意味・わかりやすい解説

九条武子
くじょうたけこ
(1887―1928)

歌人。大谷光尊(こうそん)次女として京都西本願寺に生まれ、男爵九条良致(よしむね)に嫁した。佐佐木信綱(のぶつな)に師事、10余年間、外遊の夫を待ち、清怨(せいえん)深窓の情操を吐露した歌集『金鈴(きんれい)』(1920)によって世に知られた。歌文集に『無憂華(むゆうげ)』(1927)、歌集に『薫染(くんぜん)』(1928)、『白孔雀(しろくじゃく)』(1930)がある。戯曲『洛北(らくほく)の秋』は帝劇で上演された。仏教婦人連合本部長として社会事業や女性運動に活躍、一代の麗人をもって鳴り、西本願寺信徒の尊崇と世の同情一身に集めた。

[伊藤嘉夫]

 もとゆひのしまらぬ朝は日ひと日わが髪さへもそむくかと思ふ

『『九条武子歌集』(1972・野ばら社)』『澤地久枝著「九条武子」(『図説人物日本の女性史10』所収・1980・小学館)』『籠谷真智子著『九条武子――その生涯のあしあと』(1988・同朋舎出版)』『佐々木信綱著『麗人九条武子』(1994・大空社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「九条武子」の意味・わかりやすい解説

九条武子 (くじょうたけこ)
生没年:1887-1928(明治20-昭和3)

歌人。京都市生れ。西本願寺法主大谷光尊(明如)の次女で光瑞の妹。1909年男爵九条良致と結婚。10年秋,夫とともに渡欧,1年のち単身帰国し以降10余年の独居を続けた。16年佐佐木信綱門に入り和歌を学び,《心の花》の有力歌人となった。歌集《金鈴》(1920)は異郷の夫を思う哀切な歌が多く抒情味が濃い。〈夜くればものの理(ことわり)みな忘れひたふる君を恋ふとつげまし〉。その名門出自と天成の美貌は武子を有名にし,歌文集《無憂華》(1927)は広く世に読まれた。長く仏教婦人会連合本部長として社会事業に尽くしたが,28年敗血症で没した。没後に歌集《薫染》(1928),《白孔雀》(1929)などが編まれた。
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朝日日本歴史人物事典 「九条武子」の解説

九条武子

没年:昭和3.2.7(1928)
生年:明治20.10.20(1887)
大正時代の歌人,社会事業家。西本願寺大谷光尊と藤子の次女。明治42(1909)年,九条良致と結婚し共に渡欧。ロンドンでは慈善病院,孤児院,養老院などを視察して,翌年単身帰国。和歌を佐佐木信綱に学ぶ。関東大震災(1923)に当たり,築地本願寺の臨時救済事務所出張所において救護事業の陣頭指揮に立つ。上野公園に託児所を,日比谷公園内に臨時の診療所を造った。のちに大正14(1925)年,本所深川に移し永続的な診療所とし,現在の「あそか病院」の基礎を築く。また境遇に恵まれない少女を収容するため,荻窪に平和村も創設。9年に東山女子専門学校(京都女子大学)を設立した。<著作>『無憂華』<参考文献>佐佐木信綱『麗人九条武子』

(岡村喜史)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「九条武子」の解説

九条武子 くじょう-たけこ

1887-1928 大正-昭和時代前期の歌人。
明治20年10月20日生まれ。大谷光尊の次女。九条良致(よしむね)と結婚。佐佐木信綱にまなび,才色兼備で知られる。仏教婦人会連合本部長をつとめ社会事業につくし,大正9年京都女子高専(現京都女子大)を創設した。昭和3年2月7日死去。42歳。京都出身。歌集に「金鈴」,歌文集に「無憂華(むゆうげ)」など。
【格言など】ゆふがすみ西の山の端(は)つつむ頃ひとりの吾は悲しかりけり(「金鈴」)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「九条武子」の意味・わかりやすい解説

九条武子
くじょうたけこ

[生]1887.10.20. 京都
[没]1928.2.7. 東京
歌人。京都西本願寺門跡に生れ,1909年男爵九条良致と結婚して渡欧,翌年単身帰国し,16年佐佐木信綱の門に入った。夫の帰国を待ちながら歌道にいそしむ名流夫人として,哀艶な調べをもつ歌集『金鈴』 (1920) ,『薫染』 (28) ,さらに随筆集『無憂華』 (27) によって名声を高めた。ほかに戯曲『洛北の秋』 (25) や遺歌集『白孔雀』 (29) などがある。また社会事業にも尽した。

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