心の花(読み)こころのはな

精選版 日本国語大辞典 「心の花」の意味・読み・例文・類語

こころ【心】 の 花(はな)

① 変わりやすい人の心を、花の移ろいやすいことにたとえていう。多く愛情についていう。あだごころ。
古今(905‐914)恋五・七九七「色見えでうつろふものは世中の人の心の花にぞありける〈小野小町〉」
② 美しい心を花にたとえていう。風情を解する心。
※為秀本長秋詠藻(1178)「悟りえて心のはなし開けなば尋ねぬさきに色ぞ染むべき〈西行〉」
③ よろこびの思い、念願がかなって晴れ晴れとした思いなどにたとえる。
浮世草子日本永代蔵(1688)二「姥が餠をむかしの鏡山に見なし、頓(やが)て心の花(ハナ)も咲出る桜山、色も香も有若ざかり」

こころのはな【心の花】

短歌雑誌。明治三一年(一八九八二月佐佐木信綱主宰の短歌結社竹柏会により創刊。各人個性を自由に伸ばそうとする指導精神の下に石榑千亦(いしくれちまた)木下利玄柳原白蓮九条武子らを世に送る。

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デジタル大辞泉 「心の花」の意味・読み・例文・類語

こころ‐の‐はな【心の花】

変わりやすい心を、花の散りやすいことにたとえた語。あだ心。
「うつろふ人の―になれにし年月を思へば」〈徒然・二六〉
美しい心を、花の美しさにたとえた語。
「われも卑しき埋もれ木なれども、―のまだあれば」〈謡・卒都婆小町
[補説]書名別項。→心の花

こころのはな【心の花】[書名]

短歌雑誌。佐佐木信綱が明治31年(1898)2月に創刊。明治37年(1904)からは短歌結社「竹柏会」の機関誌となり、今日に至る。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「心の花」の意味・わかりやすい解説

心の花
こころのはな

佐佐木信綱(のぶつな)が1898年(明治31)2月に創刊した歌壇最古の歌誌。初期数年は旧派や根岸派との交流が多かったが、1904年(明治37)からは純然たる信綱主宰の竹柏(ちくはく)会の機関誌となった。1963年(昭和38)信綱没後は佐佐木由幾(ゆき)(1914―2011)・幸綱(ゆきつな)らを中心に運営され、1982年2月には1000号に達した。明治期の分には全冊の復刻版がある。信綱唱道の「ひろく、深く、おのがじしに」の精神を基に、石榑千亦(いしくれちまた)、川田順、木下利玄(りげん)、新井洸(あきら)(1833―1925)、片山広子(筆名松村みね子)、柳原白蓮(やなぎはらびゃくれん)、九条武子(くじょうたけこ)、栗原潔子(きよこ)(1898―1965)、石川不二子(ふじこ)(1933―2020)、竹山広(1920―2010)、伊藤一彦(1943― )、谷岡亜紀(1959― )、俵万智(たわらまち)ら多彩な歌人を輩出したほか、昭和期に前川佐美雄(さみお)、斎藤瀏(りゅう)(1879―1953)、五島茂(ごとうしげる)、五島美代子、山下陸奥(むつ)らが分派して活躍した。

[新間進一]

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百科事典マイペディア 「心の花」の意味・わかりやすい解説

心の花【こころのはな】

短歌雑誌。1898年,佐佐木信綱創刊。竹柏(ちくはく)会の機関誌として歌壇最古の歴史をもつ。〈広く深くおのがじしに〉をモットーに,各人の個性発揮をはかる主宰者信綱の円満な人柄と指導精神を反映して,穏健な誌風である。石榑(いしくれ)千亦,川田順,木下利玄大塚楠緒子(くすおこ),柳原白蓮,九条武子など多くの歌人を育てた。
→関連項目短歌

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改訂新版 世界大百科事典 「心の花」の意味・わかりやすい解説

心の花 (こころのはな)

短歌結社雑誌。1898年(明治31)佐佐木信綱によって創刊された月刊誌で,現在ある短歌誌の中では最も長い伝統をもつ。初期には,《こころの華》などと表記されたこともある。〈広く,深く,おのがじしに〉の主張のもとに,個性尊重の方針をとって,多くの有力歌人を育てた。石榑千亦(いしくれちまた),新井洸,木下利玄,川田順,斎藤瀏(りゆう),前川佐美雄,大塚楠緒子(なおこ),橘糸重,片山広子,柳原白蓮,九条武子,五島美代子らである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「心の花」の意味・わかりやすい解説

心の花
こころのはな

短歌雑誌。『こころの華』とも書く。 1898年2月創刊。佐佐木信綱を中心とする短歌結社竹柏会の機関誌として誕生したが,初期には正岡子規,伊藤左千夫らの根岸短歌会や,落合直文,与謝野鉄幹らのあさ香社,さらに旧派の歌人たちの寄稿もあって短歌総合誌の感があった。しかし 1903年石榑千亦 (いしくれちまた) が独力で編集しはじめてからは純然たる竹柏会の機関誌となり,温雅な歌風ながら個性を生かす信綱の指導下に,五島茂,川田順,木下利玄,九条武子,柳原白蓮,五島美代子らのすぐれた歌人が生れた。いくつかの分派をもち,歌文集『心の華叢書』を数多く刊行しながら,現在にいたっている。

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