未成年者を監護・教育し,あるいは精神障害者に治療を受けさせ,彼らを監督し,彼らの財産上の利益を保護する法律上の義務をもつ者をいう。法律によっては現に監護している者を含めていう場合もある。明文の定義をおいている法律に,学校教育法(1947公布),児童福祉法(1947公布),少年法(1948公布),精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(略称=精神保健福祉法。1950年公布の精神衛生法を87年改正・改称,88年施行)がある(学校教育法22条1項〈子女に対して親権を行う者,親権を行う者のないときは,後見人〉,児童福祉法6条の〈親権を行う者,後見人その他の者で,児童を現に監護する者〉,少年法2条2項の〈少年に対して,法律上監護・教育の義務ある者および少年を現に監護する者〉,精神保健福祉法20条1項本文の〈精神障害者については,その後見人,配偶者,親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる〉ほかの条項)。このなかでは,学校教育法上の定義が保護者を民法上の親権者・後見人という法律上の義務者に限定している点で範囲はより狭い。同法の規定は,憲法26条2項および教育基本法(1947公布)4条1項の義務教育に関する規定に,〈その保護する子女に……〉とあるのを受けて定められたものである。なお親権者について民法は,〈父母の婚姻中は,父母が共同してこれを行う〉(民法818条3項本文)とし,〈共同親権〉を原則としているから,父母が婚姻関係にある子の保護者は父母両名である。また,父ないし母が単独で親権を行っているとき(同条3項但書)はその者が,子が養子であるとき(同条2項)は養親が,また,後見人が付されているときはその者が,それぞれ保護者である。さらに,児童福祉法には児童福祉施設の長の親権代行の規定があり(〈児童福祉施設の長は,入所中の児童で親権を行う者又は後見人のないものに対し,親権を行う者又は後見人があるに至るまでの間,親権を行う〉(47条)),その場合には,施設長が学校教育法にいう保護者にあたる。
ところで戦前の明治民法旧規定の下では,学校との関係で子を監護・教育する義務ある者について〈父兄〉の語が用いられてきた。それは,親権は父に優先性をおく〈単独親権〉であり(877条1項),また家督相続によって長兄が戸主となり戸主権をもってその家を統率することの反映であった。戦後の民法,教育法規の下では〈父兄〉の語は存在の根拠を失い,代わって〈保護者〉の語が用いられることとなっている。しかし,社会的には〈父兄〉の語は根強く生き続けている。
このほか,たとえば保佐人を準禁治産者の保護者であるというように,なんらかの意味で能力の不十分なものに対して,その行為を補助するものを広く〈保護者〉ということもある。
→親権
執筆者:星野 澄子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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