成年後見制度において、被保佐人、すなわち精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者に付される保護者をいう(民法12条・876条の2)。
保佐人は、被保佐人が、元本の領収、借財、不動産その他財産の売買、遺産分割など、重要な財産上の行為を行うについての「同意権」と、保佐人の同意を得ないで行われた行為の「取消権」を有する(民法12条)。そのほか、被保佐人の請求、または同意を要件として保佐人などの請求に基づいて、家庭裁判所が、たとえば不動産の売買の委任というように、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることができる(同法876条の4)。保佐人は、代理権のある範囲では本人を代表する地位にたつので、保佐人と被保佐人の利益が衝突する行為(利益相反行為)を行おうとするときは、保佐人は「臨時保佐人」の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(同法876条の2)。なお、保佐人に同意権・取消権、代理権が付与されたことに伴い、適正な職務が行われるよう、家庭裁判所は、必要に応じて保佐人を監督する保佐監督人を選任することができる(同法876条の3)。
[伊藤高義]
『額田洋一・秦悟志編『Q&A成年後見制度解説』第2版(2003・三省堂)』▽『新井誠・赤沼康弘・大貫正男編『成年後見制度――法の理論と実務』(2006・有斐閣)』
準禁治産者に付せられ,これを保佐する人。準禁治産宣告を受けた者が婚姻している場合には,その配偶者が当然に保佐人となり,そうでない場合には,親族その他の利害関係人の請求に基づき家庭裁判所によって選任される(民法847条1項,840,841条,家事審判法9条1項甲類14号)。一定の重要な財産上の諸行為(民法12条1,2項に規定)を準禁治産者自身が行う際に同意する権限をもつだけで,準禁治産者を代理する権限はない。保佐人の同意を要するにもかかわらず同意なしになされた行為を,保佐人が独自に取り消せるかにつき,かつては,保佐人は文字どおり保佐するだけの弱い権限をもつだけだからとの理由で否定する考えが支配的であった(民法120条参照)。しかし今日では,同意権を実際に効果あるものにするため,保佐人に取消権を認めようとする考えの方が有力である。なお,追認については,これを事後の同意とみて保佐人についても肯定した判例があり,学説も一般に判例に賛成している。
執筆者:須永 醇
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