心神耗弱(こうじやく),浪費癖のため,一定の者からの請求によって,家庭裁判所から準禁治産の宣告を受けた者(民法11条,13条,家事審判法9条1項甲類2号など)。かつては,聾者,啞者および盲者も準禁治産者とされうることになっていたが,1979年の民法の一部改正で削除された。それは,単に聾者,啞者,盲者であるというだけで当然に準禁治産が宣告されるかのような誤解が世間一般に生じ,その結果これらの者が社会生活上で不利益を受けるおそれがあったこと,および,これらの者をことさらに法文中に掲げておかなくても,〈心神耗弱者〉概念の弾力的運用で十分に対応できると予測され得たこと,という二つの理由による。元来,この準禁治産の制度はフランス民法上の裁判上の保佐制度(conseil judiciaire,フランス民法旧499条,旧513~515条)を基本的には踏襲したもので,日本民法上の3種の無能力者のなかで行為能力の制限の最も弱い類型であり,日常身辺の普通の事柄を処理するのに必要な能力は,準禁治産者自身に完全に留保されている。そのうえで,これを超えて準禁治産者の財産関係に重大な影響を及ぼす可能性のある諸行為(たとえば,元本の領収・利用,不動産または重要な動産に関する取引,借財・保証,相続の承認・放棄,新築・増改築・大修繕など,民法12条1項に列挙されているもの,および,家庭裁判所がこれらと同視されるべきことをとくに宣告したもの(同2項))についても,これを行うに際して保佐人の同意を得ることが必要とされるだけである。単に心神耗弱または浪費癖があるというだけだから,未成年者・禁治産者とちがって,相手方からの意思表示を受領したり(民法98条),相手方の提起した訴えまたは上訴についてなら訴訟行為をする程度のことはできる(民事訴訟法32条1項)。公務員になれない点は禁治産者と同じだが(国家公務員法38条など),禁治産者とちがって公職の選挙権・被選挙権は認められている(公職選挙法11条1項)。
→禁治産者
執筆者:須永 醇
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成年後見制度における「被保佐人」にあたる立場をさす旧称。同制度導入前に設けられていた禁治産・準禁治産宣告制度における「準禁治産者」は、心神耗弱(こうじゃく)者(精神障害の程度が心神喪失まで至らず、不完全ながら判断能力を有する者)または浪費者(前後の見境なく財産を浪費してしまう癖のある者)とされた。
[編集部]
…訴訟無能力者は,訴訟において必ず法定代理人によって代理されなければならない。準禁治産者は制限的訴訟能力者である。すなわち準禁治産者はみずから訴訟行為をすることができるが,そのためには,保佐人の同意を必要とする(民事訴訟法28条,民法12条1項4号)。…
※「準禁治産者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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