尋常性疣贅(いぼ)(読み)じんじょうせいゆうぜいいぼ(英語表記)Common Wart

家庭医学館 「尋常性疣贅(いぼ)」の解説

じんじょうせいゆうぜいいぼ【尋常性疣贅(いぼ) Common Wart】

[どんな病気か]
 子どもや成人の手の指(とくに爪(つめ)のまわり)、手のひら、膝(ひざ)がしら、膝の裏などにできる丘疹(きゅうしん)(皮膚面から盛り上がった発疹(ほっしん))です。大きさは粟粒(あわつぶ)大からエンドウ豆大までで、皮膚面より半球状に隆起しています。表面は粗くて硬く、色は白色調です。
 おもにヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス2型の皮膚感染が原因でおこり、皮膚表面の小さな傷口から感染すると考えられています。
 単発でできることもありますが、多発していることが多く、しばしば群がっています。かゆみや痛みなどの自覚症状は通常、ありません。
 手足にできる疣贅のなかにはミルメシアと呼ばれるものがあります。皮膚面からドーム状に隆起した丘疹で、全体は赤色調ですが、中央がややへこんで白っぽい色で、硬く、形が蟻塚(ありづか)に似ています。これは、ヒト乳頭腫ウイルス1型が病原体の疣贅です。
 顔面頸部(けいぶ)にできる疣贅には、直径が2~3mmで先端のとがった数本の突起をもつ細長いものがあり、これを指状疣贅(しじょうゆうぜい)または糸状疣贅(しじょうゆうぜい)といいます。
[治療]
 先端を細くした綿棒(めんぼう)に液体窒素(えきたいちっそ)を含ませ、5~10秒間、疣贅に軽くあて、その後溶かします。皮膚を凍らせるため、痛みがあります。溶けたあとに水疱(すいほう)(水ぶくれ)ができますが、しばらくすると痂皮(かひ)(かさぶた)ができ、治ります。1回の治療で治ることもありますが、通常は1~2週間間隔で数回くり返します。
 抗がん剤のブレオマイシン剤を疣贅へ局所注射する方法もあります。注射の際、痛みがあります。通常、1~2週間間隔で数回くり返します。疣贅はやがて黒色となり、その後治ります。
 抗がん剤の5(ファイブ)‐FU軟膏(なんこう)やブレオマイシン軟膏を疣贅に塗り、その上をプラスチックフィルム(料理用ラップ)でおおう方法もあります。痛みを感じることはありませんが、効能がゆるやかなため、完治まで長期間かかります。
 さらに、かぶれをおこす化学物質を疣贅に塗る治療法もあります。かぶれがおこっている間はかゆみがともないます。この方法は疣贅が多発している場合や難治の場合に著しい効果をみることがあります。
 殺菌消毒薬のグルタールアルデヒドを毎日塗り、疣贅を腐食させる方法もあります。
 以上のほか、単発ならば、外科的切除や電気焼灼(しょうしゃく)による治療法もあります。

じんじょうせいゆうぜい【尋常性疣贅(いぼ) Common Wart】

[どんな病気か]
 ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルスが皮膚に感染してできるいぼです。
 子どもの手足の甲(こう)や指、膝(ひざ)がしらなどによくできますが、爪(つめ)の周囲にもできます。直径2~10mmのかたいいぼで、表面は粗く、色は灰色です。融合して2~3cm大になることもあります。
 足の裏にできると、皮膚から盛り上がらず、敷き石を敷きつめたようなモザイク状になり、しばしばうおの目やたことまちがわれます。顔面、頸部(けいぶ)、頭部に生じると細長い指状の突起になることがあります。
 他人にはなかなか感染しませんが、自分の皮膚には感染することがあり、数が増えてゆきます。
 免疫力(めんえきりょく)を高めることで自然になくなることがあり、昔からいろいろな民間療法が行なわれてきました。しかし、民間療法では確実な効果は期待できません。
[治療]
 現在一般的に行なわれているのは、液体窒素(えきたいちっそ)でいぼを凍らせる方法です。何回かくり返して行なう必要があります。
 抗がん剤のブレオマイシン製剤の局所注射も有効ですが、痛みが強いのが欠点です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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