平等権は,国家の基本権の一つとしてあげられるが,その意味は次の三つに整理される。第1は〈法の前の平等〉であって,国の大小,強弱その他にかかわりなく,国際法が平等に適用されることを意味する。第2は〈法における平等〉であって,国家が国際法上同一の権利・義務をもつことを意味する。この意味での平等権は,啓蒙期自然法思想に淵源を持ち,人間が自然状態において平等に取り扱われるべきであるなら,国家も自然状態である国際社会において平等を認められなければならないというように主張される。第3は〈国際法定立についての平等〉であって,やはり啓蒙期自然法思想に淵源を持ち,国家が自国を拘束する国際法の定立に平等に参加すること,具体的には国際機構や国際会議の決議に平等に参加することを意味する。そして,国際機構の発展とともに,第3の意味での平等権に新しい問題が生じている。すなわち,従来,国際機構や国際会議で関係国全部が代表を送り,しかも,全会一致制がとられたのは,平等権が作用したためである。しかるに,たとえば国際連合安全保障理事会をみると,アメリカ,ロシア,イギリス,フランス,中国を常任理事国とする制度があるばかりでなく,これら常任理事国に拒否権が与えられている(国連憲章23条1項,27条3項)。これは代表または参加の平等を破るとともに,投票の平等をも破ると把握されるが,国際政治における大国の優越性が国際機構の構造に反映したわけである。
基本的人権の一種としての平等権については〈法の下の平等〉の項参照。
執筆者:松田 幹夫
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…法の前の平等ともいう。これを権利として表現したのが平等権である。平等思想はすでに古代ギリシアにみられ,アリストテレスは正義の理念と結びつけて平等の本質を説いている。…
※「平等権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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