江戸時代,宝暦(1751-64)のころから行われ,ことに明治時代,婦人の間に流行した被り物(かぶりもの)の一種。方形の布に耳掛けのひも輪をつけたずきん。主として冬季,防寒のために着装した。御高祖頭巾の名称については《嬉遊笑覧》に〈其着たるさま日蓮上人の像に似たればお高祖頭巾ともいひしなり〉とあり,御高祖は日蓮を指していったものとされているが,〈おこそ〉は〈おくそ〉の転訛で,宝暦以前の苧屑(おくそ)頭巾の語に由来する。したがって《嬉遊笑覧》の説は御高祖の当て字から日蓮上人にこじつけたものである。上等品は浜ちりめんで作り,色合いを中年は鉄・藍鼠(あいねずみ)・淡鼠・浅黄鼠,若向けは藤・紅掛(べにかけ)・桜鼠で,裏地は共色とし,布の一端に雪,月,花の模様あるいは名前,家紋などを染めぬいた。
→被り物 →ずきん
執筆者:宮本 馨太郎
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女性用頭巾の一種。享保(きょうほう)年間(1716~36)に片袖(かたそで)形の頭巾が使われ、これを袖頭巾あるいは大明(だいみょう)頭巾といった。これは順光という僧侶(そうりょ)が高祖日蓮上人(にちれんしょうにん)像の頭巾から思い付いてつくり、かぶったのに始まるという。材料は黒や紫縮緬(ちりめん)を4尺(120センチメートル)角に裁ち、女物は裏に紅絹(もみ)をつけた。明治時代に防寒用具として大流行し、中年の女性は鉄色、藍鼠(あいねずみ)、浅葱(あさぎ)鼠の色を、若い女性は紫、藤、紅掛け鼠の色を用いた。かぶり方は、四角の一角を内へ折って額にあて、左右の角を交互に回し留め、顔の前面だけを残して包む。髪形を壊さないので、よく利用された。
[遠藤 武]
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…頭にかぶったり頭をおおったりするものの総称。防寒,防暑,防風などの保護機能はもとより,装飾機能や身分,階級,職業などを端的に示すシンボル機能も強い。さらに,神仏への畏敬の表現,吉凶時の喜悲や慎みの表現としても重要である。時代や民族の特性を如実に反映するものとして,古くから多種多様なものがみられる。被り物は身分や役割のはっきりしている社会,また文化の爛熟期に発達している。
【日本】
冠,帽子,頭巾,笠,手ぬぐいなどの種類があり,材料としては絹,麻,木綿,ラシャ,紗,紙,藺(い),菅(すげ)などが用いられている。…
…これは同形の頭巾の後ろに大きな襠(まち)を入れてかぶりやすくし,顔側の左右に取り付けたひもを結んで着用した。 ふろしき形は,四角または長方形の平面の布を用い,巧みに頭と顔部をすっぽり包む形であり,御高祖(おこそ)頭巾,ふろしきぼっちなどといい,もっぱら女性が用いた。秋田県ではフロシキボッチとよび,第2次世界大戦後もしばらく,冬季の防寒,防雪に,またおしゃれのために多くの女性が愛用した。…
※「御高祖頭巾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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