手斧(読み)チョウナ

デジタル大辞泉 「手斧」の意味・読み・例文・類語

ちょうな〔てうな〕【×斧/×釿】

《「ておの」の音変化》大工道具の一。直角に曲がった大きな平鑿ひらのみ木製の柄をつけたくわ形のおの木材を荒削りしたのち平らにするのに用いる。
[類語]手斧ておの

て‐おの〔‐をの〕【手×斧】

ちょうな」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「手斧」の意味・読み・例文・類語

て‐おの‥をの【手斧・釿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大工道具の一つ。斧でざっとけずった木材を、さらに平らにするために用いる鍬(くわ)形の刃物。刃を内に向けて用いる。ちょうな。
    1. 手斧<b>①</b>〈春日権現験記絵〉
      手斧〈春日権現験記絵〉
    2. [初出の実例]「み幣(ぬさ)取り 神の祝(はふり)が いはふ杉原 薪伐り 殆(ほとほと)しくに 手斧(てをの)取らえぬ」(出典:万葉集(8C後)七・一四〇三)
    3. 「よの中にてをののおとする所は、東大寺とこの宮とこそはべるなれ」(出典:大鏡(12C前)二)
  3. 相撲決まり手の一つ。相手の手をひっぱりこみ関節をきめること。
    1. [初出の実例]「手斧掛入蹴爪〈略〉すまひの手は数を尽し」(出典:大石寺本曾我物語(南北朝頃)一)

ちょうなてうな【手斧・釿】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ておの」の変化した語 ) 大工道具の一つ。斧でざっとけずった材木を、さらに平らにするために用いる鍬(くわ)形の刃物。ちょうの。ちょんの。
    1. [初出の実例]「つなげる舟に有明の月〈芦文〉 秋の風橋杭つくる手斧屑〈荷兮〉」(出典:俳諧・つばさ(1706)下)
    2. 「手斧(テウナ)でなぐり掛け」(出典:歌舞伎・歳市廓討入(1863))

ちょうのてうの【手斧・釿】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ておの」の変化した語 ) =ちょうな(手斧)色葉字類抄(1177‐81)〕

ちょんの【手斧・釿】

  1. 〘 名詞 〙ちょうな(手斧)〔かた言(1650)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手斧」の意味・わかりやすい解説

手斧
ちょうな

木工具の一種で,釿とも書き,「ておの」ともいう。アッズ adzeがこれに属する。ヨーロッパでは新石器時代に,西アジアでも前 5000年頃から使われた。日本では中国,朝鮮から弥生時代にもたらされた扁平片刃石斧がこれに該当する。材質は石,貝,銅,鉄で,木の柄をつけて使用する。手斧は木の加工や丸木舟をくりぬくための道具として用いられ,その分布はヨーロッパ,アジア,オセアニアの諸地域に広く存在する。現在のものは,刃幅 9.6~11cmの片刃の刃具に,堅木を火であぶり曲げた独特の柄をつけた手工具で,使用法は,台鉋のように板目に沿って削らず,横目にすくうように削っていく。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「手斧」の解説

ちょうな【手斧/釿】

大工道具の一つ。柄の先が曲がっていて、先に平らな刃がついた、小型の鍬(くわ)のような形をした斧(おの)に似た刃物。木材の表面を平らに仕上げるための荒削りをするのに用いる。◇「手斧(ておの)」の転。

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世界大百科事典(旧版)内の手斧の言及

【釿】より

…釿は大工道具としてだけでなく,臼など刳り物にも使われてきた。〈手斧〉と書いて〈ちょうな〉とよまれることもあるが,〈ておの〉は片手斧として鉞,鉈(なた)のことをいい,両者が混同されたものであろう。【成田 寿一郎】。…

【斧】より

…考古学では,柄から離れた状態の斧身を材質によって石斧,青銅斧,鉄斧,貝斧などとよぶ。 斧には,〈まさかり〉のように斧身の刃と柄とがほぼ平行する狭義の斧(中国語の〈斧〉,英語のaxe)と,鍬のように刃と柄とがほぼ直交する手斧((ちような)。中国語の〈錛〉,英語のadze)の2種がある。…

【石斧】より

… 石斧の機能を考える上で最も重視すべきことは,刃先の線と柄の主軸がなす角度である。農具の鍬のように,刃線と柄の主軸とがほぼ直交するものは手斧((ちような))と呼ばれるが,ここでは横斧(よこおの)と呼ぶ。一方,まさかりのように,刃線と柄の主軸とがほぼ平行するもの,すなわち狭義の斧を,ここでは縦斧(たておの)と呼ぶ。…

【釿】より

…釿は大工道具としてだけでなく,臼など刳り物にも使われてきた。〈手斧〉と書いて〈ちょうな〉とよまれることもあるが,〈ておの〉は片手斧として鉞,鉈(なた)のことをいい,両者が混同されたものであろう。【成田 寿一郎】。…

※「手斧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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