末方(読み)すえつかた

精選版 日本国語大辞典 「末方」の意味・読み・例文・類語

すえ‐つ‐かた すゑ‥【末方】

〘名〙 (後世「すえづかた」とも。「つ」は「の」の意)
位置順序の終わりの方。末の部分
※宇津保(970‐999頃)楼上上「初めにはうたて心あはただしきやうならん、かならずかのすゑつかたに行きて聞かむ」
源氏(1001‐14頃)横笛「ただすゑつかたをいささか弾き給ふ」
② ある期間の終わりのころ。月や季節などの終わりのころ。末のころ。
※源氏(1001‐14頃)若紫「秋のすゑつかた」
生涯の終わりのころ。晩年
※源氏(1001‐14頃)若菜上「故院のすゑつかた」

すえ‐かた すゑ‥【末方】

〘名〙
神楽(かぐら)を演奏するときの楽人たちの受け持ちで、あとに唱えうたう側。⇔もとかた
神楽歌(9C後)庭燎阿知女作法「〈本方〉あちめおおおお 〈末方〉おけ」
② 末の方。終わりのころ。末つ方
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉五「其は明治十八年の春期の末方であった」

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デジタル大辞泉 「末方」の意味・読み・例文・類語

すえ‐かた〔すゑ‐〕【末方】

宮廷御神楽みかぐらのとき、二組に分かれた歌い手うち、あとに歌いはじめる側。神殿に向かって右側に位置する。⇔本方もとかた

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改訂新版 世界大百科事典 「末方」の意味・わかりやすい解説

末方 (すえかた)

宮中で行われる儀式音楽,御神楽(みかぐら)で,神楽歌(かぐらうた)をうたう歌方の名称の一つ。末方がうたう歌を末歌(すえうた)という。歌方は本方(もとかた)と末方の二手に分かれ,本方は神殿に向かって左側に,末方は向かって右側に向かい合って座る。本方と同様に,歌の音頭(おんど)をつとめる人が笏拍子(しやくびようし)を持ち拍子を打つ。本方が先にうたい出し,そのあと末方が同じ曲をうたって応答する形となる。また,末方には,伴奏楽器の一つである篳篥(ひちきり)が属する。垂纓(すいえい)の冠に赤または緑の袍を着用。
御神楽
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世界大百科事典(旧版)内の末方の言及

【御神楽】より

…その構成は,人長,和琴(わごん)1,神楽笛1,篳篥(ひちりき)1,笏拍子(しやくびようし)を打つ主唱者2人と唱和の歌方である。これを二方に分かち,神殿に向かって左を本方(もとかた),右を末方(すえかた)とし,神楽歌の本歌,末歌をそれぞれ受け持つ。儀式は人長の作法と,本・末の受け持つ神楽歌から成るが,人長の指図で座を鎮め,《庭火》の曲で各楽器の音を試みることから始まる(人長式)。…

※「末方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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