王子猷の故事は、平安初期には漢詩の題材として好まれたが、「枕草子」に引かれてから、和歌の世界でも詠まれた。単に故事を詠み込むのではなく、竹の縁語の「よよ」=「世々」と結びつけて、「このきみといふ名もしるくくれ竹の世々へんまでもたのみてをみん〈藤原公能〉」〔久安百首‐慶賀〕のように、相手をことほぐ意味で用いられることが多い。
(
之)嘗(かつ)て暫(しばら)く人の
宅に寄りて
み、
(すなは)ち竹を種(う)ゑしむ。或ひと問ふ、暫く
むに、何ぞ爾(しか)するを煩(わづら)はさんと。王、嘯詠すること良(やや)久しく、直(まさ)に竹を指さして曰く、何ぞ一日も此の君無(なか)るべけんやと。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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