翻訳|gallic acid
芳香族ヒドロキシカルボン酸の一つ。「もっしょくしさん」ともいわれる。別名はピロガロール-5-カルボン酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸。分子式C7H6O5、分子量188.1。
植物の葉、茎、根、および没食子、五倍子(ごばいし)の虫こぶなどに遊離の状態またはタンニンの構成成分として分布している。没食子はブナ科植物の若芽のモッショクシバチによる虫こぶから、五倍子はウルシ科植物ヌルデの若芽や葉のアブラムシによる虫こぶから得られ、乾物として漢方薬などに使われている。タンニンを加水分解して得られる無色の柱状結晶で、1分子の結晶水を含むが120℃付近で結晶水を失う。融点(258~265℃)において分解し、ピロガロールと二酸化炭素になる( )。水によく溶け、鉄(Ⅲ)塩水溶液を加えると青黒色の沈殿を生ずる。強力な還元剤である。タンニンの原料、青インキの製造に使われるほか、写真現像剤、染料の原料、止血剤としての用途ももつ。
[廣田 穰 2016年2月17日]
3個のフェノール性水酸基を有する芳香族カルボン酸の一つ。〈もっしょくしさん〉とも,またガルス酸,3,4,5-トリオキシ安息香酸ともいう。没食子や五倍子(ふし),植物の葉,茎,根などに広く遊離の状態でも存在するが,普通は没食子酸系タンニンとして存在する。一般にタンニンの加水分解によって得られる。水から再結晶して得たものは,無色の柱状または針状結晶で,結晶水1分子を含む。臭気はなく,味は渋く,わずかに酸性を帯びる。100~120℃に加熱すれば結晶水を失い,約258~265℃で分解溶融し,炭酸ガスおよびピロガロール(焦性没食子酸)になる。
冷水には溶けにくいが,熱水,アセトン,エチルアルコールに易溶。没食子酸のアルカリ性水溶液は強い還元力を有し,空気中の酸素を速やかに吸収し褐色になる。タンニン酸鉄系の筆記用水性インキの製造などに用いられる。
執筆者:村井 真二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
3,4,5-trihydroxybenzoic acid.C7H6O5(170.12).ピロガロール-5-カルボン酸ともいう.茶などの植物の葉,茎,根のなかに遊離の形で広く存在し,またエステル結合物の形で,ある種の植物中に高濃度で含まれている.製法としては,一般にタンニンの加水分解によって得られ,水から再結晶すると一水和物の結晶となって得られる.無水物は融点235~240 ℃ で,融解と同時にピロガロールと二酸化炭素に分解する.熱水,エタノール,アセトンに易溶.アルカリ性水溶液は還元力が強く,空気中からすみやかに酸素を吸収する.写真現像薬,インキや染料の原料に用いられる.この誘導体は,収れん剤や喀(かっ)血の止血剤として用いられる.[CAS 149-91-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈もっしょくしさん〉とも,またガルス酸,3,4,5‐トリオキシ安息香酸ともいう。没食子や五倍子(ふし),植物の葉,茎,根などに広く遊離の状態でも存在するが,普通は没食子酸系タンニンとして存在する。一般にタンニンの加水分解によって得られる。…
※「没食子酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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