熱効率(読み)ネツコウリツ(英語表記)thermal efficiency

デジタル大辞泉 「熱効率」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐こうりつ〔‐カウリツ〕【熱効率】

熱機関に供給されたエネルギーうち仕事に変えられた熱量割合

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「熱効率」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐こうりつ‥カウリツ【熱効率】

  1. 〘 名詞 〙機関に与えられた熱エネルギーのうち有効な仕事をするエネルギーとして取り出される割合。熱機関の仕事量と供給エネルギーとの比で表わす。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱効率」の意味・わかりやすい解説

熱効率
ねつこうりつ
thermal efficiency

与えられた熱エネルギーのうち有効に利用された熱量の割合。一般に熱機関で供給された燃料の発熱量(燃料が燃焼してできた水蒸気が水にならない状態のまま冷却したときに得られる発熱量。低位発熱量という)に対して有効な仕事になった割合をいう。エンジンから取り出せる正味仕事とエンジン内で発生した図示仕事に対応して、正味熱効率、図示熱効率があり、正味熱効率には補機駆動出力を考慮する場合としない場合がある。

 燃料は完全に燃焼することはなく、実際に燃焼によって熱機関に供給される熱量は低位発熱量よりわずかに小さい。与えられた熱量の一部分は、燃焼ガスからシリンダー壁へ熱が伝わる冷却で失われ、さらに残りの熱量の一部分は排気で失われ、有効な仕事になるのは半分以下である。熱機関の熱効率は吸気、圧縮、燃焼、膨張、排気のサイクルの最高温度と最低温度の差が大きいほどよくなる。また往復動内燃機関では燃焼前の圧縮の高いほど、燃焼期間が短いほど、燃焼が上死点(ピストンの上昇限界)近くで起こるほど、燃料が空気に対して少ないほど熱効率がよくなる。またガソリンエンジンでは負荷が大きく、絞り弁の開いているほど熱効率がよくなる。内燃機関の正味熱効率は30%程度で、排気損失も30%程度であるから、排気のエネルギーを回生すれば熱効率を向上できる。その方法として排気のエネルギーの一部を排気ターボ過給機により回生して吸気圧力を高める方法と、排気タービン動力として回生して効率を高める方法(コンパウンド機関という)と、熱交換器蒸気を発生して蒸気タービンで動力として改正する方法(コンバインドシステム)などがあり、熱効率が60%程度に向上している機関もある。

[吉田正武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱効率」の意味・わかりやすい解説

熱効率
ねつこうりつ
thermal efficiency

熱機関が,それに接するいくつかの熱源から1サイクルの間に合計熱量 Q を吸収し,外に対して差引き合計 W の仕事をするとき,η=W/Q をその熱機関またはサイクルの熱効率という。カルノーの熱機関 (→カルノーサイクル ) のように,系が熱量を授受する熱源が高低2つだけの場合,温度 T1 の高温熱源から受ける熱量を Q1 ,温度 T2 の低温熱源に与える熱量を Q2 とすると,熱力学第一法則によって,熱効率は η=(Q1Q2)/Q1=(T1T2)/T1 である。可逆機関ならどんな作業物質のときでも,η はこの値をもつ。また不可逆機関の熱効率はすべてこれより小さい。これがカルノーの定理である。いずれにしても,熱効率は必ず1より小さいから,熱効率を大きくするには,熱を供給する熱源の温度をなるべく高くし,熱を放出する熱源の温度をなるべく低くしなければならない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「熱効率」の意味・わかりやすい解説

熱効率【ねつこうりつ】

消費熱エネルギーのうち有効に利用されたエネルギーの割合。熱機関では消費燃料の保有エネルギーのうち機械的仕事に変えられたエネルギーの割合をいい,高熱源と低熱源温度が与えられると決まる限界値がある。→可逆機関カルノーサイクル
→関連項目大気圧機関

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「熱効率」の解説

熱効率
ネツコウリツ
thermal efficiency

系が吸収した熱のうち,その系による仕事として使われる割合をいう.熱力学第二法則によれば,効率が100% の系あるいは熱機関は存在しない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「熱効率」の意味・わかりやすい解説

熱効率 (ねつこうりつ)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「熱効率」の解説

熱効率

 使った熱に対してそれがどれだけ仕事のエネルギーに変わったかを示す数値.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の熱効率の言及

【ガスタービン】より

…密閉サイクルの場合,タービン排気を再び圧縮機に送るには,前置冷却器によって温度を下げることが必要である。 タービンの排気ガスはまだ温度が高く熱エネルギーをもっているので,熱交換器を用いてこの熱の一部を回収し,圧縮機出口の空気の加熱に用いると,その分だけ燃料が節約され熱効率を向上させることができる。このような熱交換器付きのガスタービンは再生サイクルガスタービンと呼ばれ,一方,熱交換しないものを単純サイクルガスタービンという。…

【効率】より

…現実には,加えられたエネルギーをすべて有効な仕事として取り出すことはできないので,実際の機械の効率は1より小さい。熱エネルギーを力学的仕事に変換する熱機関については,それに加えた熱に対する得られた有効仕事の割合を熱効率thermal efficiencyと呼んでいる。熱から仕事への変換過程については,熱力学の第2法則によって制約を受け,高温の熱源(温度T1)から得た熱Q1を完全に仕事に変えることは不可能で,変換過程で必ず熱の一部Q2を低温の熱源(温度T2)に捨てなければならず,熱効率は(Q1Q2)/Q1=(T1T2)/T1となる。…

※「熱効率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android