日本大百科全書(ニッポニカ) 「狩野川台風」の意味・わかりやすい解説
狩野川台風
かのがわたいふう
1958年(昭和33)の台風第22号のこと。台風の名称は決壊した狩野川からきている。9月21日にマリアナ近海で発生し、北上しながら急速に発達した。23日未明の3時から24日3時までの24時間で93ヘクトパスカルも中心気圧が深まり877ヘクトパスカルまで発達したこの台風も、26日夜伊豆半島をかすめて相模(さがみ)湾から神奈川県に上陸したころには、かなり衰弱していた。しかし、台風の接近により日本の南岸沿いの前線が活発化し、伊豆半島と関東南部では記録的な豪雨となった。台風はその後東京付近を通って三陸沖へ抜けている。
被害はおもに雨によるもので、東日本を中心に広範囲にわたった。気象庁技術報告(『気象庁技術報告第37号 狩野川台風調査報告』1963年)によると、死者・行方不明者は1157名、人的被害の大部分は、台風の通過した静岡県と関東地方で河川の増水・決壊によってもたらされた。なかでも、伊豆地方では狩野川の氾濫(はんらん)によって、死者・行方不明者が900名を超えるなど大きな被害が発生し、修善寺(しゅぜんじ)町(現、伊豆市)だけでも、死者・行方不明者は464名にのぼった。東京では26日の日降水量は393ミリメートルと気象庁開設以来の雨量となり、石神井(しゃくじい)川の堤防決壊など、随所に水害が発生し、交通網が寸断された。
[饒村 曜]