神代辰巳(読み)クマシロタツミ

デジタル大辞泉 「神代辰巳」の意味・読み・例文・類語

くましろ‐たつみ【神代辰巳】

[1927~1995]映画監督佐賀の生まれ。成人映画において、性を描きながらも、男女間のやるせない情感をコミカルなタッチも交えつつ表現した。のちには一般映画も手がけた。代表作あかい髪の女」「青春の蹉跌さてつ」「恋文」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神代辰巳」の意味・わかりやすい解説

神代辰巳
くましろたつみ
(1927―1995)

映画監督。佐賀県生まれ。早稲田(わせだ)大学文学部卒業後、松竹を経て、1954年(昭和29)日活の再建とともに移籍。『かぶりつき人生』(1968)で監督としてデビュー。不遇であったが、日活が低予算のロマン・ポルノ路線に転じたおりに機会を得、ストリッパーを温かい目でみつめた『一条さゆり・濡(ぬ)れた欲情』(1972)、赤線を舞台にした『四畳半襖(ふすま)の裏張り』(1973)などで、性を通して豊かな表現力をみせた。『青春蹉跌(さてつ)』(1974)で一般映画も手がけてからは、大正ロマンと青春を二大素材に、『恋文』(1985)など人間の愛欲の哀(かな)しさを追求した作品を発表した。『棒の哀しみ』(1994)を遺作肺炎で他界した。

[出口丈人]

資料 監督作品一覧

かぶりつき人生(1968)
濡れた唇(1972)
一条さゆり 濡れた欲情(1972)
恋人たちは濡れた(1973)
女地獄 森は濡れた(1973)
やくざ観音 情女仁義(1973)
四畳半襖の裏張り(1973)
濡れた欲情 特出し21人(1974)
四畳半襖の裏張り しのび肌(1974)
鍵(1974)
青春の蹉跌(1974)
赤線玉の井 ぬけられます(1974)
宵待草(1974)
櫛(くし)の火(1975)
アフリカの光(1975)
黒薔薇(ばら)昇天(1975)
濡れた欲情 ひらけ!チューリップ(1975)
悶絶!!どんでん返し(1977)
壇の浦夜枕合戦記(1977)
赫(あか)い髪の女(1979)
地獄(1979)
遠い明日(1979)
少女娼婦 けものみち(1980)
快楽学園 禁じられた遊び(1980)
ミスター・ミセス・ミス・ロンリー(1980)
嗚呼(ああ)!おんなたち 猥歌(わいか)(1981)
赤い帽子の女(1982)
もどり川(1983)
美加マドカ 指を濡らす女(1984)
恋文(1985)
離婚しない女(1986)
ベッドタイムアイズ(1987)
噛(か)む女(1988)
棒の哀しみ(1994)

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20世紀日本人名事典 「神代辰巳」の解説

神代 辰巳
クマシロ タツミ

昭和・平成期の映画監督,シナリオライター



生年
昭和2(1927)年4月24日

没年
平成7(1995)年2月24日

出生地
佐賀県佐賀市水ケ江町

学歴〔年〕
早稲田大学文学部英文科〔昭和27年〕卒

主な受賞名〔年〕
日本シナリオ作家協会シナリオ賞「泥の木がじゃあめいているんだね」,キネマ旬報賞(脚本賞 第18回 昭47年度)「一条さゆり・濡れた欲情」「白い指の戯れ」,ブルーリボン賞(作品賞 監督賞)「赫い髪の女」,クリオ賞金賞「ワンカップ大関」,ヨコハマ映画祭特別大賞(第7回 昭60年度),報知映画賞(監督賞 第19回)〔平成6年〕「棒の哀しみ」,毎日映画コンクール(監督賞 第49回 平6年度)「棒の哀しみ」,日本映画批評家賞(監督賞)〔平成7年〕,高崎映画祭監督賞(第9回 平6年度)「棒の哀しみ」,日本アカデミー賞(会長特別賞 第19回)〔平成8年〕

経歴
微兵を避けて九大附属医専に進むが、のち小説家を志して文学部に入る。家業(薬種問屋)を継がず、昭和28年松竹京都撮影所助監督部に入社。30年日活に移り、斎藤武市組のチーフとして“渡り鳥”シリーズを手がける。40年「かぶりつき人生」で監督デビュー。46年からロマン・ポルノを手がけ、47年「濡れた唇」はじめ「一条さゆり・濡れた欲情」などの傑作を生む。55年フリーとなり、「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」や文芸作品の映画化にとりくむ。62年日活ロッポニカの「嚙む女」を撮る。63年舞台「浅草紅団」を初演出。脚本やCMも手がけ、著書に「神代辰巳オリジナルシナリオ集」「四畳半襖の裏張り」がある。他に「青春の蹉跌」(49)「赫い髪の女」(54)「戻り川心中」(58)「恋文」(60)「ベッドタイムアイズ」(62)「棒の哀しみ」(平6)など。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

百科事典マイペディア 「神代辰巳」の意味・わかりやすい解説

神代辰巳【くましろたつみ】

映画監督。佐賀県生れ。早大卒業後,1953年松竹京都撮影所に入社。1955年日活に移籍。田中小実昌原作の《かぶりつき人生》(1968年)で監督デビュー。日活がロマンポルノ路線に転換後《一条さゆり 濡れた欲情》(1972年),《恋人たちは濡れた》(1973年),永井荷風原作の《四畳半襖の裏張り》(1973年),《赤線玉の井・ぬけられます》(1974年),中上健次原作の《赫(あか)い髪の女》(1979年)などの秀作を発表。ポルノ以外の作品では石川達三原作の《青春の蹉跌》(1974年),《ミスター・ミセス・ミス・ロンリー》(1980年),山田詠美原作の《ベッドタイムアイズ》(1987年),《棒の哀しみ》(1994年)などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「神代辰巳」の解説

神代辰巳 くましろ-たつみ

1927-1995 昭和後期-平成時代の映画監督。
昭和2年4月24日生まれ。43年「かぶりつき人生」で監督デビュー。のち日活ロマンポルノ路線にそって「濡れた唇」「一条さゆり・濡れた欲情」「四畳半襖の裏張り」「赫い髪の女」などをつくる。55年からフリー,平成6年「棒の哀しみ」を発表した。平成7年2月24日死去。67歳。佐賀県出身。早大卒。

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367日誕生日大事典 「神代辰巳」の解説

神代 辰巳 (くましろ たつみ)

生年月日:1927年4月24日
昭和時代;平成時代の映画監督;シナリオライター
1995年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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