中上健次(読み)ナカガミケンジ

デジタル大辞泉 「中上健次」の意味・読み・例文・類語

なかがみ‐けんじ【中上健次】

[1946~1992]小説家和歌山の生まれ。故郷の紀州熊野の風土背景に、複雑な血縁関係愛憎に生きる人間を描いた作品発表。「枯木灘」で芸術選奨新人賞を受賞。他に「」「地の果て至上の時」など。

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精選版 日本国語大辞典 「中上健次」の意味・読み・例文・類語

なかがみ‐けんじ【中上健次】

  1. 小説家。和歌山県新宮市出身。故郷の紀州熊野の風土を背景として複雑な血縁関係に生きる人間を中心に描き、民俗、物語、差別などの問題を追究した。著「岬」「枯木灘」「千年の愉楽」「地の果て至上の時」など。昭和二一~平成四年(一九四六‐九二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中上健次」の意味・わかりやすい解説

中上健次
なかがみけんじ
(1946―1992)

小説家。和歌山県生まれ。県立新宮(しんぐう)高校卒業。保高(やすたか)徳蔵主宰『文芸首都』に参加、羽田空港に働きつつ小説を書き続ける。創作集『十九歳の地図』(1974)、『鳩(はと)どもの家』(1975)により地歩を固める。初期作品には地方青年の都会生活の孤独が描かれ、大江健三郎の影響をうかがわせる。『岬(みさき)』(雑誌掲載1975)により芥川(あくたがわ)賞受賞。紀州の風土と人間を背景に、血縁の葛藤(かっとう)と「路地」の来歴を『枯木灘(なだ)』(1977)に描きあげ毎日出版文化賞、芸術選奨新人賞を受賞。主要作品に『水の女』(1979)、『鳳仙花(ほうせんか)』(1980)、『千年の愉楽』(1982)、『地の果て至上の時』(1983)、『熊野集』『日輪の翼』(ともに1984)のほか、『鳥のように獣のように』(1976)、『紀州木の国・根の国物語』(1978)、『夢の力』(1979)などのエッセイ集がある。『中上健次全集』全15巻が1996年(平成8)に完結。

[栗坪良樹]

『『中上健次全集』全15巻(1995~96・集英社)』『『中上健次発言集成』1~6(1995~99・第三文明社)』『『中上健次エッセイ撰集 青春・ボーダー篇』『中上健次エッセイ撰集 文学・芸能篇』(2001、02・恒文社)』『『中上健次選集1 枯木灘』『中上健次選集2 異族』『中上健次選集3 紀州木の国・根の国物語』『中上健次選集4 鳳仙花』『中上健次選集5 日輪の翼』『中上健次選集6 千年の愉楽』『中上健次選集7 奇蹟』『中上健次選集8 讃歌』『中上健次選集9 熊野集』『中上健次選集10 地の果て至上の時』『中上健次選集11 十九歳の地図』『中上健次選集12 岬』(小学館文庫)』『『化粧』『鳥のように獣のように』『夢の力』(講談社文芸文庫)』『集英社編・刊『中上健次の世界』(1996)』『浅田彰・四方田犬彦ほか著『群像日本の作家24 中上健次』(1996・小学館)』『栗坪良樹編・解説『シリーズ・人間図書館 中上健次』(1998・日本図書センター)』『高沢秀次著『評伝中上健次』(1998・集英社)』『柄谷行人・渡辺直己著『中上健次と熊野』(2000・太田出版)』『張文穎著『トポスの呪力――大江健三郎と中上健次』(2002・専修大学出版局)』『四方田犬彦著『貴種と転生・中上健次』(ちくま学芸文庫)』

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20世紀日本人名事典 「中上健次」の解説

中上 健次
ナカガミ ケンジ

昭和・平成期の作家 熊野大学出版局代表。



生年
昭和21(1946)年8月2日

没年
平成4(1992)年8月12日

出生地
和歌山県新宮市

学歴〔年〕
新宮高〔昭和40年〕卒

主な受賞名〔年〕
芥川賞(第74回)〔昭和50年〕「岬」,毎日出版文化賞(第31回)〔昭和52年〕「枯木灘」,芸術選奨文部大臣新人賞(第28回・文学評論部門)〔昭和52年〕「枯木灘」,和歌山県文化表彰〔平成4年〕

経歴
高卒上京、「文芸首都」に加わり、保高徳蔵の指導を受ける。羽田国際空港事業勤務のかたわら小説を書き続け、芥川賞候補になること三度。昭和49年第一作品集「十九歳の地図」で注目を集め、50年「岬」で第74回芥川賞を受賞。以後、故郷の紀州(紀伊半島)を主題にした作品を描き続け、「枯木灘」「化粧」「水の女」「鳳仙花」など旺盛な創作ぶりを示す。血縁と土地(路地)に密着した〈物語〉の作法は骨太く強靱。平成2年永山則夫死刑囚の入会問題をめぐり、日本文芸家協会を脱退。3年湾岸戦争への日本加担に反対する声明に参加。4年腎臓がんで摘出手術を受ける。2年以来、新宮市で在野の市民講座・熊野大学を主宰。他の代表作に「鳩どもの家」「千年の愉楽」「地の果て至上の時」「奇蹟」「日輪の翼」「讃歌」、ドキュメント「紀州 木の国・根の国物語」、エッセイ集「鳥のように獣のように」「破壊せよ、とアイラーは言った」、対談「小林秀雄をこえて」など。「中上健次全短編小説」(河出書房新社)、「中上健次全集」(全15巻 集英社)、「中上健次選集」(全12巻 小学館)、「中上健次エッセイ撰集」(恒文社21)がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中上健次」の意味・わかりやすい解説

中上健次
なかがみけんじ

[生]1946.8.2. 和歌山
[没]1992.8.12. 和歌山
小説家。和歌山県新宮高校卒業後,上京。働きながら同人誌『文芸首都』に参加。『岬』 (1975) で戦後生れ初の芥川賞受賞。続く『枯木灘』 (77) は郷里熊野の風土と,錯綜する血縁関係をもつ人々の愛憎を神話的スケールで描き,毎日出版文化賞,芸術選奨文部大臣新人賞を受賞する。その後も『鳳仙花』 (80) ,『地の果て 至上の時』 (83) など,風土や伝統に根ざす独自の作品世界を築いた。文壇の枠をこえた行動力を示し,郷里に公開講座「熊野大学」を開くなど,活躍が期待されたが,肝臓癌のため 46歳で他界。ほかに『十九歳の地図』 (74) ,『千年の愉楽』 (82) ,『日輪の翼』 (84) ,『奇蹟』 (89) など。朝日新聞連載の『軽蔑』が遺作となった。『中上健次全短編小説』 (84) がある。

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百科事典マイペディア 「中上健次」の意味・わかりやすい解説

中上健次【なかがみけんじ】

小説家。和歌山県生れ。新宮高校卒。高校時代より小説の習作を始め,卒業後上京,同人誌《文芸首都》に参加。《十九歳の地図》(1974年)で注目を浴びた。自身の複雑な家族関係を素材として,〈血〉の葛藤を〈路地〉という被差別地域の物語として描き出す《岬》(1975年)で芥川賞受賞。《枯木灘》《鳳仙花》《千年の愉楽》《地の果て至上の時》《日輪の翼》など,故郷熊野を舞台として同主題を展開した作品を次々と発表した。神話的・物語的な空間の中に,濃厚な感覚と複雑な関係性を描き出し,高い評価を得た。
→関連項目神代辰巳

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中上健次」の解説

中上健次 なかがみ-けんじ

1946-1992 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和21年8月2日生まれ。上京して「文芸首都」同人となる。ジャズや映画,演劇に熱中し,肉体労働のかたわら小説をかく。昭和51年「岬(みさき)」で戦後生まれ初の芥川賞。「枯木灘(なだ)」「鳳仙花(ほうせんか)」などに紀州熊野(くまの)の風土と複雑な血縁関係の葛藤(かっとう)をえがいた。平成4年8月12日死去。46歳。和歌山県出身。新宮(しんぐう)高卒。

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367日誕生日大事典 「中上健次」の解説

中上 健次 (なかがみ けんじ)

生年月日:1946年8月2日
昭和時代;平成時代の小説家。熊野大学出版局代表
1992年没

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