風疹(読み)フウシン(その他表記)rubella

翻訳|rubella

デジタル大辞泉 「風疹」の意味・読み・例文・類語

ふう‐しん【風×疹】

小児に多い発疹ほっしん性の感染症学校感染症の一。感染症予防法の5類感染症の一。風疹ウイルスに感染して、全身に細かい発疹が出るが2、3日で消える。発熱・リンパ節腫脹しゅちょうなどの症状も呈する。妊娠初期にかかると、胎児に奇形や障害の起こる率が高くなる。三日ばしか

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共同通信ニュース用語解説 「風疹」の解説

風疹

風疹ウイルスが引き起こす感染症。せきやくしゃみによって飛沫ひまつ感染する。強い感染力があり発熱、発疹などの症状が出るが、無症状の場合もある。妊娠20週目ごろまでに感染すると赤ちゃんが目や心臓などに障害のある先天性風疹症候群(CRS)になるリスクがある。予防にはワクチンが有効で、麻疹と混合のMRワクチンが主流。45歳以上の男性と、62歳以上の女性は子どものときに予防接種を受ける機会がなかった。このうち高齢世代は、幼少期に感染する機会が多かったことからクーポンの対象外となった。

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精選版 日本国語大辞典 「風疹」の意味・読み・例文・類語

ふう‐しん【風疹】

  1. 〘 名詞 〙 学童や幼児に起こる良性発疹性伝染病潜伏期二~三週間。身体各部のリンパ腺がはれ、微熱を伴い発疹する。発疹は淡紅色の点状で、後に暗褐色になり、最後は褪色する。妊娠初期に母体が感染すると出生児に障害のある子どもが生まれやすいことが知られている。三日ばしか。
    1. [初出の実例]「将軍家御身風疹出給云々」(出典:吾妻鏡‐安貞元年(1227)八月三〇日)
    2. [その他の文献]〔北史‐張彝伝〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風疹」の意味・わかりやすい解説

風疹
ふうしん
rubella

麻疹(はしか)に似た発疹(ほっしん)ができる急性伝染病で、ドイツの医師により初めて記載されたので「ドイツはしか」ともいい、また症状が軽くて2~3日で発疹が消えるところから「三日はしか」ともよばれる。病原体はウイルスの一種で、飛沫(ひまつ)感染するが伝染力は麻疹ほど強くない。罹患(りかん)すれば終生免疫が得られる。冬から春にかけ主として小児の間に流行するが、成人では重症化傾向がみられ、とくに妊娠初期の女性が罹患すると、先天性風疹症候群の子供を出産する危険性があるので、臨床上では小児よりもむしろ成人に問題点がある疾患といえる。

 風疹は3~10年の間隔で周期的に流行し、潜伏期間は2~3週である。軽度の発熱とともに、小さい斑(はん)状の発疹が顔をはじめ全身にかなり密に現れるが、麻疹よりは小さく、3日くらいで皮もむけずに消えて色素沈着も残さない。熱は38~39℃にもなるがすぐ下がり、2~3日微熱が続くことが多い。咳(せき)や目やになどのカタル症状もごく軽い。全身のリンパ節が腫脹(しゅちょう)するが、とくに後頭部および耳後部や頸(けい)部の腫脹が特徴的で、軽い圧痛がある。血液像としては白血球の減少、異型リンパ球ないし形質細胞の増加がみられる。成人の場合には合併症として脳炎や血小板減少性紫斑(しはん)病などがみられるが、一般に予後はよい。また、成人女子の場合は発赤腫脹を伴う関節炎をしばしばおこす。

 なお、風疹患者の病原体排出期間は発疹の発現前後それぞれ約1週間とみなされ、この間は感染の可能性があるので留意する。

 風疹は軽症で特別な治療をしなくても全治するため、通常は安静と対症療法しか行われないが、他の疾患の感染予防の目的で抗生物質が使われることもある。予防には風疹ウイルスの生(なま)ワクチン接種が行われる。日本では1977年(昭和52)以来、先天性異常の発生防止を主目的として、妊娠前に免疫をつけるため、女子が13~15歳に達したとき風疹ワクチンの接種を受けることに決められていた。その後、89年(平成1)4月からは、生後12~72か月までの間の麻疹ワクチン定期接種時に、麻疹、風疹、おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)の接種が選択できるようになったが、副反応として無菌性髄膜炎が多発したため、93年4月にはMMRワクチンは中止され、それぞれのワクチンの単独接種となった。95年4月からは、風疹の流行自体を防ぐために、生後12~90か月未満の男女に風疹ワクチンが接種されることとなっている。

[柳下徳雄]

先天性風疹症候群

風疹ウイルスの垂直感染によって母親から胎盤を通じて胎芽にウイルスが伝播(でんぱ)し、胎児の各器官が形成される胎芽期の細胞分裂が妨げられて、白内障をはじめ、動脈管開存症などの心疾患や難聴など多彩な先天異常が新生児に残るものをいい、CRS(congenital rubella syndrome)と略称される。1941年にオーストラリアの眼科医グレッグNorman M. Gregg(1892―1966)によって発見・記載された。先天異常の発生頻度は妊婦の風疹初感染の時期によって異なり、だいたい妊娠第4か月以降には低下し、初期ほど高くなっているが、着床以前の妊娠第1か月前半(最終月経後14日間)の頻度は少ない。妊娠第2か月間に罹患すると白内障や心疾患、妊娠第3か月以降では聴力障害や網膜症がみられ、白内障や心疾患には難聴などを高率に合併し、発育・発達障害も伴いやすい。障害の頻度としては、難聴がもっとも多くみられる。

 なお、生後1週間に低出生体重、血小板減少性紫斑、肝脾腫(ひしゅ)、肝炎、溶血性貧血、泉門膨隆など多彩な症状がみられ、先天異常の永久的障害に合併することが多い。これらの多彩な症状をまとめて新生児急性先天性風疹とよび、先天異常を主にまとめたCRSと区別することもある。多彩な症状は多くの場合、2週間から2か月で回復するが、血小板減少性紫斑病に先天異常が合併した場合の予後は悪い。

 CRSに対する治療としては特別なものはなく、手術の適応のある先天異常には手術を行うほか、難聴には補聴器を用い、難聴教育を必要とする。予後としては生後6か月以内に死亡するものが多く、大部分の死亡は生後1年以内であり、心不全、敗血症、全身衰弱などが死因となる。なお、妊婦の風疹罹患は流産、早産、死産をおこしやすいことでも知られる。

 日本では1965年(昭和40)から4~5年間、風疹の全国的な流行があり、とくに沖縄ではCRSが多発して注目されたが、その後しばらく流行がなく、75~77年にふたたび大流行があったものの、このときはCRSの発生がきわめて少なかった。

[山口規容子]

風疹ウイルス

トガウイルス科Togavirusルベラウイルス属Rubellavirusに属する1本鎖RNA(リボ核酸)ウイルスで、エンベロープ(外被)をもつ。球形で直径50~70ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、ヌクレオカプシドカプシドに直接取り込まれているウイルスの核酸)の直径は約30ナノメートル、エーテル感受性。ヒトが唯一の自然宿主(しゅくしゅ)(ウイルスの寄生対象となる生物)である。細胞培養で増殖が可能となった。宿主域はヒトの羊膜細胞、ウサギの腎(じん)細胞などで、この部位で発育する。他の細胞培養では細胞変性を示さないことが多い。

 風疹ウイルスの証明はウイルスの干渉作用を利用して行われる。すなわち、ミドリザルの腎細胞に風疹ウイルスを接種し、その後7~11日経過してからエコーウイルスⅡを接種すると、エコーウイルスⅡによる細胞変性が阻止される。

[曽根田正己]

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家庭医学館 「風疹」の解説

ふうしんみっかばしか【風疹(三日ばしか) Rubella】

[どんな病気か]
 風疹ウイルスが飛沫感染(ひまつかんせん)して、およそ3日間の発熱、特有な発疹(ほっしん)、目の充血、軽いせき、耳の後ろのリンパ節の腫(は)れなどがおこる病気です。
 病気そのものは悪性ではありませんが、妊娠初期の女性が風疹にかかると先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)(コラム「先天性風疹症候群」)の子どもが生まれることがあります。
●かかりやすい年齢
 母親からもらった免疫体(めんえきたい)があるので、生後6か月ごろまでは、風疹にはかかりにくいのです。したがって3~10歳の子どもに多いのですが、この時期の感染をまぬがれて青年期に罹患(りかん)する人もいます。
 風疹は、一度かかると免疫ができ、二度とかかることはありません。
●流行する季節
 春から初夏にかけて多いのですが、大流行の年はそうとはかぎりません。
[症状]
 潜伏期は、16~18日です。38℃前後の急な発熱とともに細かい発疹が多数、全身に現われます。また、耳の後ろやくびのリンパ節が数個、小指の頭ぐらいに腫れ、押すと軽く痛みます。目の結膜(けつまく)が充血して赤くなります。
 そのほか、軽いせきが出たり、のどが赤くなって痛んだり、成人では、頭痛や腰痛がおこることがあります。
 風疹の症状は、一般に、子どもは軽く、おとなは重いのですが、発病して3日目が峠で、4日目から熱が下がり、発疹、目の充血、リンパ節の腫れなども3~5日で消えて治ります。
●合併症
 肺炎(はいえん)、髄膜炎(ずいまくえん)、脳炎、血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)などがおこることがありますが、まれです。
[治療]
 風疹ウイルスに有効な薬はありません。ひきつけ(熱性(ねっせい)けいれん)を用心して解熱薬(げねつやく)などを使い、家庭で療養するのがふつうです。
●家庭看護のポイント
 高熱の間は就床させ、頭を冷やします。頭痛がひどく、発熱が長びくときは、髄膜炎の併発を疑って入院治療することがありますから、朝、昼、夕の3回は熱をはかり、気づいた症状とともにメモして医師に報告しましょう。
●病人や家族の注意
 病気の子どもから他の人に感染する期間は、発病の約7日前から、発疹が現われて少なくとも5日後までの間です。熱が下がっても、発疹がすっかり消えるまでは、学校や幼稚園に行かせてはいけません。
 なお、風疹は学校伝染病(がっこうでんせんびょう)に指定されているので、届け出れば出校停止扱いで、欠席にはなりません。
 また、風疹に未罹患の妊婦と接触しないように配慮してください。
 これらの注意は、成人が風疹にかかったときも同様に必要なことです。
[予防]
 予防接種法による定期接種として、生後12~90か月未満に1回、12~16歳未満に1回、皮下接種(ひかせっしゅ)を受けます(予防接種とはの「予防接種の種類」)。
 この予防接種は有効で、副作用はないといえるほど軽微です。
 また、先天性風疹症候群の子どもが生まれるのを避けるために、免疫のない成人女性は風疹ワクチンの予防接種を受けましょう。

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百科事典マイペディア 「風疹」の意味・わかりやすい解説

風疹【ふうしん】

三日ばしかとも。幼小児に多い風疹ウイルスによる伝染病。潜伏期約20日。はしかに似るが症状は軽く,発疹は1〜2日で消失。耳の後ろなどのリンパ節がはれる。1960年には,アメリカの内科医ウェラーがワクチンを開発した。母体が妊娠初期に感染すると,先天性心臓病白内障,その他の奇形児が生まれることがある。これを防ぐため日本では,1994年10月の法改正により1995年4月以降,生後12ヵ月から90ヵ月の間の風疹生ワクチン接種が定期接種として実施されている。なおこのワクチンは,妊婦には禁忌である。
→関連項目学校伝染病奇形予防接種

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改訂新版 世界大百科事典 「風疹」の意味・わかりやすい解説

風疹 (ふうしん)
rubella

俗に〈三日ばしか〉とも呼ばれる。風疹ウイルスの感染によって起こる軽い発疹性伝染病であるが,妊娠初期の婦人が罹患すると,白内障,先天性心疾患,小頭症など各種の奇形や病変(先天性風疹症候群)をもったいわゆる〈先天性風疹児〉が高率に生まれることが知られてから,重要な伝染病としてクローズアップされた。流行は3~10年の間隔でみられ,春に発生の山があり,患者は小学生が多い。伝播は飛沫感染で,伝染期間は,発疹出現4~5日前から,その後1週間ほどである。不顕性感染率は約30%とかなり高い。学校伝染病第2類に規定されている。潜伏期は2~3週で,軽い発熱,麻疹(はしか)に比べ小さい鮮紅色斑点状の発疹,後頭部,耳後部などの明らかなリンパ節のはれをおもな臨床症状とする。白血球数は減少する。ごくまれに合併症として脳炎を併発することがある。

 風疹生ワクチンが,日本では1977年から妊婦の風疹罹患による先天性風疹児出生の防止を主目的として,中学生女子を対象に定期接種されていたが,1995年以後,生後12ヵ月以降の接種と変更された。しかし妊婦には絶対使用してはならず,またワクチン接種後少なくとも2ヵ月間は避妊が必要である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風疹」の意味・わかりやすい解説

風疹
ふうしん
rubella; german measles

ウイルスによる発疹性の急性感染症。潜伏期は約 20日間で,発疹(→皮疹),リンパ節腫張,発熱が三大症状。かゆみを伴う赤い発疹が見られるが 1~2日で消失し数も少ない。麻疹(はしか)患者の 80~90%に見られるコプリック斑は普通現れない。妊娠初期に母体が風疹にかかると,子供が先天性心疾患や白内障をもって生まれたりする先天性風疹症候群になる可能性がある。治療薬(抗ウイルス薬)はなく対症療法のみとなるため,予防接種により,なるべく多くの人が免疫をもつ状態とし,感染が急激に拡大しないようにする社会防衛が最善の対策とされてきた。だが,予防接種にはわずかながら副作用があり,その害を問題視する意見がある。また個人の意思を尊重する観点から社会防衛の価値を強く否定する声もあり,特に日本では予防接種を受けない人が多い。日本でしばしば風疹が流行することに対し,欧米先進国からは「風疹輸出国」との批判的な見方もある。

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普及版 字通 「風疹」の読み・字形・画数・意味

【風疹】ふうしん

はしか。

字通「風」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「風疹」の解説

風疹

 ウイルス性疾患の一つ.発疹があるが,三日ばしかといわれるように,短期で消失し,あとを残さない.

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世界大百科事典(旧版)内の風疹の言及

【奇形】より

…このような奇形を誘発する因子を催奇形性因子,物質を催奇形性物質と呼んでいる。これらのおもなものには,サリドマイドによるアザラシ肢症(薬剤ないし化学物質)や,原子爆弾症による小頭症(放射線),風疹による先天性心臓奇形(感染症)などがあげられる。さらに,遺伝的要因と環境要因の両者の相互作用によって形成されると考えられる奇形もある。…

【先天性風疹症候群】より

…妊婦の風疹罹患のために出生児に現れる種々の障害を総称して先天性風疹症候群といい,母親が不顕性感染の場合でも起こりうる。風疹は風疹ウイルスによって起こり,一般には軽く経過する病気であるが,妊婦が妊娠初期にかかると胎盤を通して胎児に感染し,流産や種々の奇形発生の原因となる。…

※「風疹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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