丹那盆地(読み)たんなぼんち

改訂新版 世界大百科事典 「丹那盆地」の意味・わかりやすい解説

丹那盆地 (たんなぼんち)

伊豆半島の付け根にあたる静岡県田方郡函南(かんなみ)町にある盆地標高約230m,直径約1kmの小盆地で,直下を東海道本線の丹那トンネルが東西に通過している。多賀火山の西斜面の一部が断層運動によって落ち込み,形成されたもので,丘陵性の山に囲まれ,火山灰におおわれる。湖成層が分布していることから,かつて鏡ヶ池とよばれる円形の湖であったことが知られる。狩野(かの)川支流の柿沢川が盆地を貫いて西流し,現在では盆地内は水田化している。丹那盆地を有名にしたのは1930年の北伊豆地震で,その際盆地を南北に横切る丹那断層が活動し,東側が北方に,西側が南方に動く左横ずれの変位を生じた。盆地南端では2.6mの水平ずれを示す水路や石垣跡が残され,35年に国の天然記念物の指定をうけている。丹那断層は,第四紀以降,1000年に1度,変位量2mほどの割合で活動し,現在見られる変位の最大総和は水平方向で約1000m。北から田代軽井沢,丹那,浮橋と続く山間の小盆地群は,いずれもこの断層運動によって生じたものであり,過去の断層運動を調べるための発掘調査も行われている。

 丹那盆地は酪農地としても有名であり,1881年に伊豆産馬会社が設立された。現在は乳牛飼育が盛んで,丘陵部の牧草地サイロのある風景特色がある。盆地南部の山腹斜面は別荘地として開発が進み,熱海市函南町を結ぶ熱函(ねつかん)道路(1997年無料開放)の開通や駿豆(すんず)水道(75年供水開始)による生活用水の確保が,丹那盆地の生活を変貌させた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「丹那盆地」の意味・わかりやすい解説

丹那盆地
たんなぼんち

静岡県東部,伊豆半島の基部,多賀火山西斜面にある小盆地。標高 235m。ほぼ円形をなす。軽井沢,田代などの小盆地が連続している。盆地床はかつては湖であったといわれ,神代杉が埋もれている。田畑が開かれ,周囲の斜面では酪農が行われる。 1930年の北伊豆地震のとき,断層を境に東側が北に 2.6m水平移動し,盆地内に現れた断層は天然記念物に指定されている。 JR東海道本線,東海道新幹線は,この盆地の下をトンネルで通っている。

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